17歳の肖像

An Education(邦題:17歳の肖像)という映画がテレビでかかっていたので見ました。以前、当映画の主人公のモデルとなった女性(イギリス人ジャーナリストのリン・バーバー)のインタヴューをラジオで聞いて、もともと興味はあった映画ではあります。

60年代初頭、ロンドン郊外に両親と住む16歳の少女ジェニー。私立の女子高に通い、ラテン語以外は成績も良く、チェロを弾き、フランスが好き、顔も可愛く、目指すは、オックスフォード大学。お家の感じや生活ぶりをみると、両親は、ロワー・ミドル・クラスでしょうか。ホワイト・カラーの仕事だけれども、取り立てた高給取りというわけではない家庭。ただ、子供の教育には、熱心。

ある日、ジェニーは、実業家(?)風男性、デイヴィッドと知り合い、そのうち2人は恋仲に。デイヴィッドは、どうやら金持ちらしく、彼女を、コンサートや高級ナイトクラブ、レストラン、オークションなどへ連れ出す。話し上手で社交巧みな彼は、やがて、ジェニーの両親も魅了し、彼女をオックスフォード旅行、更には17歳の誕生日に、パリ旅行にまで連れ出すのを許され。ジェニーは、次第に、デイヴィッドがどうやら、金儲けのため、いかさまめいた事も行っているのに気づくのだけれども、行動派の彼の魅力から離れられず、プロポーズを受けると、OKするのです。両親も、金持ちと結婚して、彼女の将来も安泰と大喜び。ジェニーは、プロポーズを機に、学校をやめ、オックスフォードへ行く目的も捨て・・・。ところが、デイヴィッドは、実は妻子があったのです。

当時は、まだ、女性の社会進出の機会が限られていた時代。デイヴィッドと付き合い始めてから、「大学に行って、どうなる?たいした面白い仕事につけるわけでもなく、何のための教育か。」という考えが、ジェニーを悩まし、女性学校長や、ハイミスの女性教師にも、「あなた達みたいになりたくない」の様な事まで言っていたのに。こうして、学校もやめてしまい、結婚もできず、となってみると、人生、どうしてくれよう・・・と嘆くジェニー。最終的に、彼女は、学校の女性教師の助けを受けて勉強を再開。翌年、オックスフォード大にトライし、受かるのです。無事、オックスフォード学生生活を始めたジェニーの姿で、映画は終わり。

良い大学、特にオックスブリッジを出ると、色々な事への可能性のドアが開く。出てしまってから、何になろうと、それは個人のかってであるけれど、できる事の範囲が広がり、有用な人脈が作れるのは、確か。それは現在でも同じ。子供にできる限りの教育を受けさせようとするのは、将来できる事への幅を与えるため・・・でしょうか。

デイヴィッドの友人の、ほわんとした、ほとんど教養の無いガールフレンドと、ジェニーの会話が、時折、とんちんかんな事になる様子が描かれていたのも面白かったです。「オックスフォード大で何をしたいの?」と教養のない彼女に聞かれ、「read English(英語学を専攻)したい」と、ジェニーが答える。これに彼女は、「read English books(英語の本が読みたい)という事?」・・・「read」に、「専攻する」という意味があるのを、この彼女は知らなかったわけで、ジェニーがそれを説明しようとすると、男性陣は「時間の無駄だ」とばかり。

ジェニーは、また、時折、会話の中に、いきなりフランス語を混ぜたりする、ちょっとした気取り屋ではありますが、こういうイギリス人、わりといるのです。

さて、ジェニーのモデルの、リン・バーバーは、オックスフォードに入ってから、それはとっかえひっかえ、多くの男性暦を踏んだと、ラジオインタヴューで喋っていたのを覚えています。おおっぴらな60年代が青春時代だったとは言え、かなりの人数だった気がします。

原題:An Education
監督:Lone Scherfig
言語:英語
2009年

映画の中で、フランスが大好きのジェニーが、レコードをかけて、一緒に歌うのは、ジュリエット・グレコが歌うシャンソン「Sous Le Ciel De Paris 」(パリの空の下)。Uチューブで、この歌を聞いてみましょう。

Sous le ciel de Paris
S'envole une chanson
Hum Hum
Elle est née d'aujourd'hui
Dans le cœur d'un garçon

Sous le ciel de Paris
Marchent des amoureux
Hum Hum
Leur bonheur se construit
Sur un air fait pour eux

パリの空の下
シャンソンは飛び立つ
今日、青年の心の中で
生まれたばかりのシャンソン

パリの空の下
恋人達は歩く
彼らの幸せは
彼らのために作られたメロディーの上に築かれて・・・

パリにて、テニス・トーナメントのフレンチ・オープンが開催されています。去年は調度この頃、パリへ行き、観戦したのでしたっけ。こんな曲を聴いていると、また、行きたくなるのです。

コメント

  1. こんばんは
    台風の影響で大雨注意報が出ています。
    この映画、面白そうですね。ちょっとノスタルジックでロマンティックで、、。新人女優の評判もいいようですね。女の幸せ って古くてかつ新しい問題かも知れません。私たちの世代は女性の自立に学歴や仕事が重要視されましたが、息切れしてる感じもあります。それに、専業主婦で生活できる時代は日本では終わったような気もします。十代の恋 こそノスタルジーです。

    返信削除
  2. 時代のトレンドは行ったりきたりで、自立が良いとされたのが、息切れの後、やはり専業主婦が家庭安泰には何よりと、振り子はあちらへゆれ、こちらへ戻り。ただ、芸は身を助けるではないですが、今は生きていけていても、将来、何かあった時、何とか食べつないでいける術を教育は、与えてくれるのでしょう。
    ファッションや道を行く車もレトロで、その点でもノスタルジーを楽しめる映画でした。

    返信削除

コメントを投稿