森の中に広がるアン女王のレース

カウ・パセリ(英語俗名Cow Parsley、ラテン学名 Anthriscus sylvestris)が、小さな森の木陰一面に咲いていました。

日本語ではシャクと呼ばれるカウ・パセリは、5月の後半、田舎の道端、森の中、原っぱの端っこに、大挙して生える雑草ですが、緑を背景にばーっと広がる様子や、こうして木漏れ日の中で地面を覆う様子をみると、なかなかどうして、美しいものです。「アン女王のレース」(Queen Anne's Lace)などと呼ばれるのも、うなずけます。

カウ・パセリの学名につくsylvestrisという言葉は、手持ちの植物ラテン語辞典によると、sylvesterなどと同じく、「森の」という意味。響きも、意味も、さわやかな感じ。俳優のシルベスター・スタローンのシルベスターも、もとはこの語源からでしょうね。

この森林は、隣接のお屋敷の所有で、屋敷の主の書いた情報パンフレットによると、森林内の植物は、ウサギや灰色リスにがぼがぼと食され、その被害なかなか大変だということ。

特に、ウサギ達は、レンガ塀に囲まれた、屋敷のウォールド・ガーデン内(上の写真)にも入り込み、色々と食べまくるので、ついに、館の主は、銃を買った、とありました。私、町の肉屋で、ウサギを以前買って料理した事があるのですが、「近くで取れたウサギ」と札がついていましたっけ。この館で取ったものだったりして・・・。

ウサギや灰色リスは、法で守られている動物とは違い、できるだけ痛みを与えないよう、銃などで一発でしとめるようにすれば、殺しても良い動物となっています。まあ、殺してしまったからには、無駄にせず、食べた方がいいのです。それにしても、マクレガーさんの庭に潜入して追い掛け回されるピーター・ラビットの様なドラマが、今でも、その辺で繰り広げられているものです。

ウサギも灰色リスも、もとは、過去に海外から導入された、よそ者動物ですが、その繁殖力と、生命力ですっかり、現地の動物のようになってしまっています。やっかいな暴れ者。それでいながら、森林内のベンチの土台には、上の写真の様な、リスのモチーフが使われていて・・・。このベンチを見ながら、「可愛いんだけど、困るんだよね・・・」という、こうした動物たちと人間の微妙な関係を感じました。

それにしても、ウサギやリス攻撃に合いながら、これだけ群生して咲くシャクは、レースの繊細さは見かけだけで、かなり丈夫な植物なのでしょう。

コメント

  1. こんにちは
    五月晴れのいい天気でした。近くの公園は元気に遊ぶ子供たちがいっぱいでした。
    きれいな写真ですね。うさぎやりすまで住んでいるなんて本当に豊かな森なんですね。

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  2. 逆に、うさぎやりすがあまりに多く住んでいると豊かな森でなくなる、というのが主旨ですが・・・。りすもうさぎも、街中でも見かけ、ペストと見る人もいます。繁殖力が強い外から来た動物が、原生の動植物を押しやってしまい、残るのは、生命力の強い種だけ、という問題は、イギリスだけに限らないと思います。見た目が、可愛いのがジレンマで。
    イギリスの自然にご興味があれば、以前の記事、「灰色りすと、赤りすと」をご参照下さい。

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