メンディップ・ヒルズとチェダー・ゴージ

Cheddar Gorge
前回の記事で書いたサマセット州のウェルズ市の北側を、東西に走る丘陵は、メンディップ・ヒルズ(Mendip Hills)。このメンディップ・ヒルズ内で、最も有名な観光地が、むき出しになった石灰岩が、道の両側に切りたつ、チェダー・ゴージ(Cheddar Gorge、チェダー峡谷)。

ウェルズを去った後、道路を北上し、まずは、メンディップ・ヒルズのふもとのウーキー・ホール(Wookey Hall)を通過しました。ウーキー・ホール周辺には、メンディップの石灰岩が侵食されて構成された洞窟が25もあるそうですが、そのうち、12の洞窟に入れるようになっています。ひとつの洞窟内には、魔女の形をした影を落とす岩石群があり、よって、魔女伝説が流れる場所です。数年前に、日本の母親と電話で喋っている時、「イギリスの南西の方の、何だかと言う変な名前の観光地で、魔女の役をする人を探していて、そのオーディション風景を日本のテレビでやっていた。」という話をしていた記憶があるのですが、おそらく、このウーキー・ホール周辺の事だと思います。母親によると、魔女として雇われたい人たちが、このオーディションで、魔女の様に笑って下さいと、指示されて、「きーきききき!」などと奇怪な声を出して笑っていたと言います。私たちは、先を急いでいたのもあり、今回は、ウーキー・ホールは素通りし、洞窟には入りませんでした。駐車場や、洞窟付近が、安物遊園地ののりがあったのにも、少々興抜けして。入ったら入ったで面白かったとは思うのですが。

View from Mendip Hills
うねうねと道路は徐々に丘を登っていき、やがてメンディップ丘陵の頂上近くの見晴らしの良い場所にたどり着いたので、一時駐車し、景色を見ながらバナナで一服。ここから少し行くと、メンディップ・ヒルズで一番標高の高い村、プリディー(Priddy)にたどり着きます。

The sheep hurdle stack in Priddy
プリディーの村広場(ヴィレッジ・グリーン)で、こんなものを見かけました。シープ・ハードルと言って、羊を一時的に一箇所に集めるための囲いを積み上げたものが、藁葺き屋根の下に収まっているのです。プリディーの村広場では、14世紀半ばからずっと、夏に羊フェアが行われ、羊のオークションが行われているそうで、この建物はその名残。現在のフェアでは、ここに積み上げられている囲いは使用されていないのだそうですが、これを除去すると、プリディーでの羊フェアが行われないようになってしまう、という迷信のために、今も同じ場所に保存され続け。現在のフェアでは、羊の毛刈り大会なども模様されているようです。大会・・・と言えば、この建物の、道路を挟んだ向かいには、

こんなものがありました。2メートルくらいの生垣と、その前に設置された看板。看板の内容を読むと、「第37回イギリス全国生垣作り大会」の案内でした。参加者は常時100人以上で、9種の地方独特の生垣スタイル・・・などと書いてあり、微笑んでしまいました。いいな~、のどかで。

さて、プリディーを通り過ぎた後、再び、メンディップ・ヒルズの南斜面をチェダー(Cheddar)へ向かって降りていきますが、この途中でチェダー・ゴージを通り抜ける事となります。

狭い道路がこの断崖絶壁の中をカーブしてぬって行くのですが、カーブする度に、違った風情の崖が現れる。

道路の所々には駐車場があるので、時々、駐車して外へ出、崖の途中まで登ったり、ながめたり。

ロック・クライミングをしている人たちも見かけました。

メンディップ・ヒルズを降りたふもとに、チェダー村がありますが、ここも、ウーキー・ホールと同じく、石灰岩が侵食された多くの洞窟が存在します。チェダーの洞窟郡は、ヴィクトリア朝の企業家たちによって再発見され、観光地として開発された場所で、大きな洞窟のふたつは、その発見者ジョージ・コックス(George Cox)と、彼の甥であった、リチャード・コックス・ゴフ(Richard Cox Gough)の名を取り、それぞれ、コックス洞窟(Cox's Cave)、ゴフ洞窟(Gough's Cave)と呼ばれています。「ホビットの冒険」や「指輪物語」でお馴染みのJ.R.R.トールキンは、ハネムーンで、こうしたチェダーの洞窟を訪れて、後の物語のインスピレーションを得たのだとか。洞窟の中でゴラム(日本語名ゴグリ)に遭遇するかも。

これらの洞窟には、4万年近く前から人間のご先祖様が住んでいたとかで、1903年に、ゴフ洞窟内で、昔々のご先祖様の骸骨が丸々発見され、チェダー・マンと名づけられ、近郊の博物館で見学できるのだそうです。当時の人間は、人肉を食べていた、という話もあります。マンモスなども徘徊した土地であったようで、たしかに、そういった雰囲気はあるのです。

そして、また、チェダーというと、チーズの代名詞のようなもので、チェダー・チーズは、世界で最も有名なチーズのひとつですが、現在、実際にチェダー内でチーズを作っている会社は1つだけなのだとか。チェダー・チーズというのは、場所よりも、その製造法を指すため、チェダー内で作る必要も無く、それこそ世界のどこでもチェダー・チーズ製造はできるわけなのです。例えば、シャンパンという名称が、フランスのシャンパーニュ地方で製造された泡入りワインに限定されて、イギリス産の泡入りワインは、シャンパンとは呼べずに、イングリッシュ・スパークリング・ワインと呼ばなければならない、というのとまるで違います。まあ、来たからには、お土産に、正真正銘のチェダー産チェダー・チーズ購入もいいかもしれません。

チェダーの目抜き通りは、非常に観光地、観光地しており、かなりの人ごみであったため、私たちは、ここも素通りしました。いつの日か、ゆっくりと、洞窟内観光と、チェダー・ゴージの上を散策、チェダー・マンも見てみたいとは思っています。

さて、ここから再び、南へ走り、アーサー王の伝説がまつわるグラストンベリーへ。

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