ガーデナーのためのラテン語

What's in a name? That which we call a rose,
By any other name would smell as sweet;

名前が何だというの?私達が薔薇と呼ぶ花は、
たとえ他の名で呼ばれても、同じように甘い香りを放つでしょうに。
(シェイクスピア「ロミオとジュリエット」第2幕、第2場)

シェイクスピアのような詩人にとっては、薔薇は薔薇と呼ばれなくても、目に美しく心振るわせるものでしょうが、植物学者にとっては、ジュリエット(またはシェイクスピア)が見た薔薇は、実際にどの種の何という薔薇だったか、探求しなければ気がすまない。

花や植物の名は、同じものでも、国によって地方によって、その俗名(common name)が違う事が多々あります。混乱を無くすため、それぞれの植物を、分類し、全世界共通の名を用いるのに使われているのが、ラテン語で記述される学名です。

この世界共通の呼び名の体制を整えたのが、スウェーデン人の自然学者で、分類学の父、カール・フォン・リンネ(またはカール・リンナエウス Carl Linnaeus、1707-1778)。上の絵は、ラップランドの衣装に身を包んだリンナエウス。この絵は、私の持っている植物辞典にも載っています。

彼は、其々の植物を、ラテン語の単語を2つ使う事による、二名法(binominal name)で分類。最初の単語は、植物の属(genera、 単数形はgenus)を示し、2番目の単語はその種(species)を表す。属名は、大文字で始まる名詞、種の名は、小文字で始まる形容詞を用いるのがルールです。

それまでは、植物は、その性質を描写するフレーズ等を使って呼ばれており、妙に長かったりしたのと、また、地域により違いが多く、ややこしかったのが、リンナエウス氏のおかげで、すっきり整理。

少しずつでも、この植物のラテン語学名を覚えたいものだ、と思って、去年買ったのが、この本、「ガーデナーのためのラテン語」(Gardener's Latin)。綺麗な表紙に心引かれたという単純な理由もあります。

この本は、植物の種の名前に良く使用されるラテン語の形容詞が、男性単数の形で、アルファベット順に載っており、知らない種の名前に行き当たった時、これをひくと、英語の意味がわかるしくみ。

前書きに、往々にして、ガーデンセンターなどで売られている植物の名としては、属名しかのせていないものが多いが、これは、遺憾な事である・・・とありました。何故なら、種を表す形容詞には、それがどんなタイプの植物であるかの情報が入っている事が多いからだと。

たとえば、私の好きなローズマリーは、Rosmarinus officinalisで、officinalisは、この本で調べたところ「薬用の」の意味。また、触ると指にちくっとくるスティンギング・ネトル(セイヨウイラクサ)の正式名は、Urtica dioica で、dioica は、「雄と雌が別の植物の」の意でした。野生植物辞典を見てみると、たしかに「雄の花と、雌の花がちがう」と図解してありました。そして、この時期待ち遠しい、春一番の花、スノードロップは、Galanthus nivalis。nivalisは、「雪の、白い、雪の中に咲く」。完璧網羅の本ではないので、時々、調べても載ってなかったりする事もあるのですが、大体において参考になります。

人口的に開発された品種の名は、""マークでくくって表現するため、たとえば、以前記事にした黒いチューリップの「クイーンオブナイト」の名を正式に書くときは、Tulipa "Queen of Night"となり。

その他にもまた、色々と規則があり、植物名を一気に完全マスターしよう、などと意気込むと、きっとすぐ嫌になると思うので、とりあえずは、植物の事を調べる際は、ラテン正式名にも気を配るようにして、時折、この本をぺらぺらめくり、慣れるようにしています。

コメント

  1. こんばんは
    今日はすごく寒いです。日本海側は大雪のようです。そして、今日からセンター試験という国公立大学の入試です。受験生は大変だったでしょう。英語はリスニングが数年前からあるので、使い捨てのイヤホーンが使われます。私の時代には考えられません。
    ラテン語はヨーロッパの共通語として長く学問世界では使われていたのでしょうから、世界中の動植物を分類し共通理解を得るには最も適しているわけでしょうね。ラテン語の意味に由来する名というのは絵を見るように具体的だと思います。受験生にもただ暗記するだけのゲームのような勉強でない、勉強をしてほしいのですが、これも時代おくれかも知れませんね。

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  2. 英語の植物名を、時に、日本語でわからない事があり、オンライン辞典で日本語訳を調べたりします。それでも、写真などをみて、ちょっと違うんじゃないか、などと思うときもあり。そういう際にも、一緒にラテン語名が明記されていると、それと、はっきりわかって便利です。
    私も受験生の時は、丸暗記でした。多少でも、今も頭に残っているものはありますが。何かを、興味を持って勉強を始めたのは、社会人になってからの気がします。

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