シューティング・パーティー

シューティング・パーティー(The Shooting Party)という1985年の映画が、先月、テレビでかかっていたので見ました。題名は聞いた事があったのですが、さほど知られていないもので、日本での知名度もおそらく0に近いかもしれません。したがって邦題もわかりません。直訳は、「狩猟の一行」。

第一次世界大戦前、1913年のイギリス、ハートフォードシャー州の秋。ジェームズ・メイソン扮するその土地の貴族、ランドルフ・ネトルビーが、自分の館にゲストを招いて恒例の雉狩りを行う。映画は、館での生活ぶりと、この狩猟の一行を追うだけで、取り立ててはっきりしたストーリーラインは無く、忍び寄る貴族社会とその生活ぶりの崩壊、ひいては、やがてくる大戦が暗示されている感じです。

薄い雲に覆われ、太陽がはっきり見えない空と、絶えず薄霧がかかっているような、もやっと白っぽい風景に、イギリスの秋冬の雰囲気が良く出ています。

ゲストの一人は、何羽打ち落とせるかで、他のゲストにライバル意識を燃やし、ムキになった挙句の果て、映画の最後で、空に向けて銃を撃つルールを破り、前方へ銃先を向け、土地の労働者を過って殺してしまう。すでに、変わりつつある貴族社会の没落を予感し、憂いていたネトルビー氏は、彼にむかい一言、「君の撃ち方は、紳士的ではなかった。」

また、ジョン・ギールグッドが、動物愛護運動家として、自費でビラを作り道で出くわす人間に配り、「狩猟反対、動物の権利を守れ」の様なプラカードを掲げ、狩猟の一行の前に登場する姿が愉快でした。この頃のビラは、今のブログの様なものでしょうか。自分の言いたい事を書き上げて、印刷屋へ持って行き、刷って、配る。この動物愛護運動家を相手に、ネトルビー氏は、「この雉達はもともと、我々人間がいなければ、ここに存在しないわけだが、人間は、命を与えながら、それを取る、という神の様な振る舞いをしているわけだな・・・。」と思慮深く答える。

ゲストで招かれた者たちは、遊びである狩猟の場から離れ、やがて戦地へ赴き、ソム、パッションデール、ガリポリ等の、第一次大戦の激戦地で命を落とす事となり。そして、戦後は、徐々に始まっていた社会体制の変化に拍車がかかり。

原題:The Shooting Party
監督:Alan Bridges
言語:英語
1985年

ネトルビー氏の言葉通り、雉は、イギリス原生でなく、ノルマン人達が、狩猟の目的で、うさぎと共にこの国に持ち込んだ生き物です。狩猟は、王族貴族の大切な娯楽だったわけで。

雉狩りは、現在でも行われています。ただし、狩猟をする一行は、今は、貴族というよりは、一般の富裕層でしょうか。多角経営の一環として、雉を育て、秋冬に、雉狩を行い、参加者から金を取る事で副収入を得る農家や邸宅などは、イギリス中わりとあります。小さな村を歩いていて、また、田舎道を車で走っていて、雉に遭遇するのも、よくある話。以前は、一度、おそらく町外れの農場から飛んできたのか、うちの庭で雉が走り回っているのを見て、びっくりした事もありました。

農場の畑のわきに、雉たちが隠れられる場所を作るように、とうもろこし等の背の高い穀物を育て、そのそばに、上の写真のように、餌場が設置してあるのも、よく見かけます。

狩猟の一行は、雉が潜んでいる辺りに陣取り、ビーターと呼ばれる者達が、茂みを叩いて、雉を脅かし空に飛び立たせるのを待ち構えて、撃つ・・・。映画で、最後に撃たれて死んでしまう人物も、確か、ビーターをしていた一人でした。こうして狩猟で打ち落とされた雉が、時折、町の肉屋で売られていたりします。食べると、肉に小さな弾丸が入っていたりするのが嫌で、私は、あまり手を出しませんが、殺したからには、もったいないので、しっかり食用にするのは正解です。

「神のように、命を与えて、それを取る」のが残酷か、そうでないかは色々議論もあるでしょうが、これも、イギリスの田舎の風景のひとこまです。

コメント

  1. こんばんは
    キツネ狩りは有名ですが、キジ狩りは知りませんでした。イギリスにも日本と同じキジがいるのですね。バードウォッチングにでかけると畑で見かけます。すごくきれいで立派です。狩猟は貴族の娯楽なんですね。動物愛護運動との対立はよく聞きます。毛皮反対運動ともリンクしますね。動物愛護とペットブーム? 狩猟民族の血というのも在るかもしれないし、自然と一体となるノスタルジーもあるのかな?
    支離滅裂で、すみません。

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  2. キジ狩りは、農家やお屋敷の大切な副収入となっている感じです。他に、商売としてではなく、数が増えすぎると困るきつね、うさぎ類は狩猟の対象になるのでしょう。ただ、法律上、絶対殺してはいけない獣や鳥類もいます。
    昔は、王侯貴族の狩猟用の森の中で、一般庶民や地元民が獣を取ったり、まきを拾ったりしているところを捕まったりすると、かなりひどいお仕置きを受けたりしたようです。

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