私はピアノ

ロンドン内のあちらこちらに、ボディーにお洒落なペイントがしてあるピアノが、しばらくの間、何台か置かれていました。其々のピアノの正面には、「Play Me, I'm yours.」(ひいてね、私はあなたのものよ。)と書かれてあり、通りがかった人たちが、ポロポロとひいて遊べる趣向です。「私はピアノ」という昔の歌謡曲の題名が、ふと頭を過ぎりました。「ため息がでちゃうよな恋」が破れた後の、失恋の歌でしたっけ。

何でも、この「プレー・ミー・アイム・ユアーズ」ストリートピアノのインストレーションは、ルーク・ジェラムなるアーティストの考案によるものだそうで、過去、ロンドン以外にもバーミンガム、ニュー・ヨークやシドニー、バルセロナ、その他もろもろの都市に設置された事があるのだそうです。今回は、6月から7月にかけての3週間、ロンドンのあちらこちらに50台置かれてあったものです。日本の大都市にも、いつの日かお目見えするでしょうか。

雨が降った時のために、一応、ビニールのカバーが付いていたのですが、まるで梅雨のようだった今年のイギリスの6,7月の天気の中、ピアノちゃんも、かなり傷んでしまったかもしれません。

それにしても、こういう時に、ピアノひけるとよかったな、と思うのです。何気ない顔して、さっと腰掛けて、びっくりするような難しい曲をかっこよく奏で、道行く人を振り向かせる事ができる!コインも投げてもらえるかもしれない!

ピアノは、小学校2年生くらいから数年習ったのに、いやはや、全くモノになりませんでした。未だに、母親が内緒で注文したピアノが、我家に配達された日の事も、よく覚えているというのに。調度、学校から戻ってきたら、団地の我家の棟に、ピアノが運ばれていくところだったのです。どこの家のかな・・・とのんびり後をつけて階段を登っていくと、なんと我家に入っていったのでした。その後、近くのピアノの先生の家に送り込まれ、バイエルの練習曲などは、人並みにやったものの、楽しいと思えず、練習もあまりせず、今や、「猫踏んじゃった」でさえ、そらでひけない始末。一緒に、習っていた兄も、やはり音楽の才はあまりなかったものの、彼は、「エリーゼのために」だけは、何故か今でもひけるのです。

楽譜も、ほとんど、まともに読めなかったので、半分くらいは、先生の指の動きを見ながら曲を覚えたものです・・・以前、それを友人に話したところ、「え、指の動きだけで、曲を覚えた?あんた、それは、ある意味でピアノの天才だったん違う?」と言われ、「そうか、そうだったのか。それは、気合を入れて練習せずに、惜しい事をした。」と思ったのでありました。うーん、時間が戻せるなら・・・。

この男性も、夢中で、何曲かひき続けていました。近くでお昼を食べている人たちには、調度いい、無料ランチ・コンサートとなったでしょう。この人には、「繰り返すのは、ただ、ロンリープレー」ではなく、繰り返すのは、心楽しい街角音楽・・・ですね。

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