フロスト・フェア
The Thames during the Great Frost of 1739 - 1740 |
そんなこんなで、ちょっと涼しい気分になろうかと、本日は、テムズ川のフロスト・フェアの事を書いてみることにしました。
上に家が立ち並び、橋脚の数が多かった、昔のロンドン・ブリッジが撤去され、新しいものに作り変えられる1831年以前は、冬季は、ロンドン橋上流のテムズ川に氷がはることがよくあり、人が大勢歩けるほど厚い氷がはった際は、その氷の上での、フロスト・フェア(Frost Fair)なるものが開かれたのだそうです。
こうしたフロスト・フェアでは、氷上に、色々なものを売る屋台が立ち並び、ちょとした余興も繰り広げられ。この、「余興」には、くまを、犬などの他の動物と戦わせたり、猫を振り回したりするものも含まれており、現在、一応、動物愛護の国としてみられているイギリスからは考えられないような事も人気であったのです。印刷機も設置され、「氷の上で印刷しました Printed on the Ice」という文字と、客の名前入りおみやげなどの販売も行われ、画家のウィリアム・ホガースは、自分の愛犬トランプの名前をこのフロスト・フェアで印刷してもらったようです。
スカボロ・フェアや、バーソロミュー・フェアなど、フェア(市)なるものを正式に開くには、王室からの特許状(Royal Charter)を必要とするので、特に王室特許状も得ず、厚い氷がはったら、ここぞとばかりに、ぽんぽん屋台が立ったスロスト・フェアは、厳密には、「フェア」とは呼べない、などという話もありますが。まあ、かたいことは言わず。
上の絵は、1739年ー40年の冬に行われたテムズ川のフロスト・フェアの様子を描いたもの(The Thames during the Great Frost of 1739-1740 by Jan Griffier the Younger)。場所的には、現在の国会議事堂があるウェストミンスターからの風景で、絵の左手下には、建築途中のウェストミンスター僑が。左手奥には、セント・ポール寺院のドームが見えます。蔵王の霧氷ではないですが、ぼこぼこした氷の塊が盛り上がっている様子、いくつもの屋台が立てられているのもわかります。
記録に残る限り、最初に行われたテムズ川のフロスト・フェアは、1608年で、最後のものは、1814年。この最後のフロスト・フェアでは、象が氷の上を渡ったなどという話もあります。実際、氷の薄いところを無謀に歩いて、溺れたりする人もいたようです。
この頃、テムズ川に氷がはった理由のひとつは、前述の旧ロンドン橋は、橋脚の数が多く、そのため、ロンドン橋上流の川の流れが緩く、氷がはりやすい状態であったこと。
また、1300年から1850年は、小氷期またはミニ氷河期(The Little Ice Age、略してLIA)と呼ばれた、現在より気温が低かった時代とされます。もっとも、この「アイス・エイジ、氷河期」という名前は少々、誤解を招くようなネーミングで、実際この頃の気温は、20世紀初めより、平均0・5度低いくらいに留まり、まあ、ちょっと涼しめ、くらいの感じであったようです。特に、この期間中の1645年から1715年にかけては、マウンダー極小期(Mounder Minimum, Sunspot Minimum)と呼ばれ、太陽の活動が弱く、黒点があまり観測されなかった時期とされ、決定的ではないものの、これが理由で、気温が下がったのではないかという理論もでています。更に、期間中、各地で起こった火山活動のために、火山灰が地球全般を多い、太陽光線を遮断したのも、理由として挙げられることがあります。
ミニ氷河期の気温が、20世紀より、0・5度低かったという事と比較し、現在から、過去120年間の気温は、1度以上の上昇、過去40年間で、0.7度上昇しているとのことです。原因は、人類の活動?おそろしや・・・。
いずれにせよ、テムズ川のフロスト・フェアはおそらく、もう2度と見ることはないでしょうね。
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