SOSタイタニック

クルーズ船、「コスタ・コンコルディア」のイタリア沖座礁事件で、タイタニックの事などを思い浮かべていました。タイタニックと言っても、この映画は、1997年のレオナルド・ディカプリオと、ケイト・ウィンスレットものではなく、1958年のイギリスの白黒クラッシック映画です。

史実には、かなり忠実に描写されているという評判で、実際に、沈没していく船上でどういう事が起こったかの実写的感覚が強いです。特に主人公がいるとすれば、観客をすみやかに、パニくらずに避難させる任務を執り行ったケネス・モア扮するライトラー2等航海士。

タイタニック沈没は1912年。第一次大戦前で、イギリス社会の階級制度はまだ崩壊しておらず、船内は、外の社会を反映した小世界。船の上層から、ファースト・クラス、セカンド・クラス、そしてsteerage passengerと呼ばれる、ほぼプライバシーの無い様なコンディションで寝泊りするサード・クラス。この最下層の乗客には、アメリカでの新生活を求めて移民する貧しいアイルランド人が多く含まれています。それぞれの社会層は、お互いに関わりを持たず。タイタニックが、最初に氷山にぶつかった際、まだ、事の重大さがわかっていないので、3等の乗客達が、甲板上に落ちてきた氷のかけらを蹴ってサッカーまがいの遊びをしたりするシーンがあるのですが、これを見ていた上流層のカップル、男性が面白そうだから、降りていこうか、と言うのに対し、女性が冷たく一言、「でも、(彼らは)スティアレッジ・パッセンジャー達よ。」

避難用ライフボートが、乗客の数の半分を乗せるほどしかなかったため、ライトラー航海士は、まずファースト・クラス、セカンド・クラスの女性と子供を優先させて乗せる事を徹底。

避難を、一番最後に回されたサード・クラスの乗客たちが、大挙して走りあがりパニックが起こすのを防ぐため、優先客をすべてボートに乗せるまで、甲板に上がるための通路はふさがれ、彼らは、船の低層に閉じ込められたまま待つ状態に。万が一、乗客たちが、始末に終えないほど暴れだした時のため、船員達は其々銃を携帯。

1997年のタイタニックのような、特定の恋人達の一大ロマンスも無く、セリーヌ・ディオンの歌声も流れませんが、船内で繰り広げられる、色々な人間ドラマがスケッチ風に映し出されます。女子供だけを先にボートに乗せるに当たり、多くの家族や夫婦、カップルの別れ。夫を後に残しボートに乗りたがらない女性もいれば、止められてもボートに乗り込もうとする男性もいる。「どんな結果になっても、妻には、見苦しくない振る舞いをした、と伝えて欲しいものだ。」などと言いながら、執事を従え、堂々と船内を歩き回る老紳士。乗客が落ち着いて行動できるようにと、最後まで甲板の上で演奏を続ける楽隊。周りが、避難する中、ギャンブルを続ける一行、また一人黙々と、「我関せず」のように、本を読み続ける男性。

コスタ・コンコルディアの船長とはうって変わって、タイタニックのスミス船長は船と共に沈みます。船の設計担当にあたったトーマス・アンドリューも、タイタニックの受けた被害から、沈むまでの時間を約1時間半と計算した後、乗客のライフボートへの避難誘導を助け、自分は、そのまま船内に残り、沈むのです。

1500人近い死者を出したのは、まず、ライフボートの数の少なさ、そして、タイタニックの場所から水平線上に見え10マイルほどしか離れていない場所にあった船が、無線通信担当者が睡眠中であったため、タイタニックからのSOS信号に気づかず、また、何度もうちあがるのろしに対しても何の対処もしなかったのが一要因。のろしに一切答えない船を遠くに眺めながら、スミス船長がいわく、「ゴッド・ヘルプ・ユー」(神のめぐみがあらんことを)。近海にいながら、タイタニック沈没に気づかず、任務を怠ったかどでの、後の非難と、乗り組員の良心の呵責を見込んでのセリフでしょうか。

一方、SOS信号を受け、それに答えて、大急ぎでかけつけたカルパチア号は、タイタニックからは56マイルも離れており、全速力でも到着までかかること4時間以上。冷たい海中で、それまで持ちこたえられず多くが死亡。

1997年の「タイタニック」は、私は映画館で見たので、なかなかの迫力でしたが、この映画も、CGがはばをきかせる以前に作られたものなのに、視覚面でも、負けず劣らず、良くできています。

ライトラー航海士は、海に投げ出された後、転倒したライフボートの腹に、ボートにしがみついていた何人ものサバイバーを乗せ、上手にバランスを取りながら浮上し続け、やがて、他のライフボートに助けられ、最終的にカルパチア号に救助されます。ライトラー航海士は、カルパチア号が救助した最後の一人だったという話です。私は比較的パニくりやすい方ではないかと思えるので、こういう状況下、動物のサバイバル本能をむき出しにせず、冷静に状況判断、対処できる人には尊敬のまなこなのです。

原題:A Night to Remember
監督:Roy Ward Baker
言語:英語
1958年

*追記*
1912年に起こったタイタニックの沈没から100年目を迎える今年、テレビ、ラジオで、色々なタイタニックがらみの番組が組まれて、式典なども行われる模様です。

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