ギルバート・グレイプ

化粧や変装の役が多い感があるジョニー・ディップ。若き日の素顔の彼が、悩める青年、ギルバートとして登場するこの映画は、とてもすがすがしい感じがしました。

ギルバートいわく、「何も起こらない町」エンドーラに住むグレイプ一家。太りすぎで家からまるで一歩も出ない母親、知恵遅れの弟、2人の女姉妹を、自殺してしまった父親に代わり、一家の大黒柱として支えるギルバート。唯一の楽しみは、人妻とのちょっとした逢い引きくらい。この映画のお母さんのように、食べすぎと運動不足で家のドアを通れぬほど、風船のように太ってしまった人など、最近のアメリカ、とても多いのだそうですね。

そんな、窒息しそうな状況の中、一人の少女ベッキー(ジュリエット・ルイス)が、ギルバートの生活に、そよ風のように現れ、彼に転機を与える。可憐なショート・ヘアで自転車にまたがるベッキーの姿には、遠い夏休みの思い出のような、なつかしいさわやかさがあります。

弟、アーニー役で登場する19歳のレオナルド・ディカプリオの、知恵遅れ少年ぶりが、やけに上手いのです。時にお荷物のように感じながらも、やはり可愛い弟のアーニーに対するギルバートの感情も、微妙に、やさしく描かれています。

家族は自分を縛るものでありながらも、やはり捨てられない。そんな家族の拘束を受けながらも、自分の人生もしっかり生きるには、どうすればいいのか。

ジョニー・ディップの出演作品群を見ていて、あまりに美男子であるという事は、映画俳優としては、幸運でありながらも、演技派であろうとする役者にとっては、苦痛にもなるのかも、などと思ったりします。だから、「俺は顔だけじゃないんだ」と自分の顔を隠す厚化粧ものが多いのかな、なんて。素顔、変装に関わらず、私は、今まで見た、彼が出ている映画の中では、これが一番好きです。

原題:What’s eating Gilbert Grape?(何がギルバート・グレイプを困らせる?)
監督: Lasse Hallström
言語:英語
1993年

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