ルイス島のチェス駒

大英博物館の有名展示物でありながら、日本ではさほど知られていないものに、ルイス島のチェス駒(Lewis Chessmen)があります。謎に包まれた背景と、それぞれの駒のひょうきんな顔のため、私もお気に入りにの展示物のひとつです。上の写真は、王と女王。歯痛か、悩みを抱えるようなポーズの女王様です。

スコットランドの北西沖に位地するルイス島(Isle of Lewis)。チェス駒達は、この島の西海岸線の砂丘に隠されていたのを、1831年に発見されます。いくつかの駒が欠けているものの、全4セット、いくつかは、発見時には赤く染められていたと言います。白組と赤組対抗チェスだったわけですね。93個ある駒のうち、11個は、エジンバラのスコットランド国立博物館、残る82の駒は、大英博物館蔵。セイウチの牙とクジラの歯を使用して掘られており、時代は1150年から1200年の間。チェスは、この頃には、すでに、ヨーロッパの貴族達の間で人気のゲームだったと言います。

どこで作られたかは定かではないものの、いくつかの駒が、北欧神話に登場する戦士達の姿に似ているため、北欧、特にルイス島は、当時、ノルウェーの下にあった事から、ノルウェーで作られた可能性が一番高いようです。駒は、ほとんど使用された形跡が無く、ノルウェーからアイルランドへ渡る途中の商人が、何かの理由で、ルイス島に隠していった、という説が一般的であるようです。いずれにしても、何故、所有者が、そんな何も無い地へ、これらを隠して去ったのか、その人物に何が起こったのかは、今では、知る術もないでしょう。想像力のある人は、これを題材にミステリー小説でも書けそうです。

チェスは、元々紀元前500年頃のインドが起源で、その後、中東を経て、10世紀末までにはヨーロッパに伝わっていたという事です。駒の姿形は、もちろん、所変われば、で、元のインドのものから、中東の影響を受け、さらに、ヨーロッパ風に変えられています。例えば、インドでは、戦いに使われた像を模した駒が、ヨーロッパではビショップ(聖職者)に姿を変え。

各競技者につき駒は16個。王と女王が各1駒、ルーク(城の形をした駒である事が多い、オリジナルの意味はチャリオット・戦車)が2駒、ビショップ(聖職者)2駒、ナイト(騎士)が2駒、残り8駒はポーン(歩兵)。上の写真は、左から、戦士を模ったルーク、ビショップ、そして馬にまたがったナイト。ルイス島の駒達は、同じルークなり、ビショップなりが、其々、駒により、多少違ったポーズ、違った顔つき、違った服装をしているのが面白いです。ルークの中には、手に持つ盾に、歯をむき出して噛み付いているものもあるのです。

私は、チェスはやりませんが、冬に、ごうごうと火がたかれる暖炉のある大きな居間があったら、小テーブルの上に、こういうチェスを並べて飾ってみたい、などという憧れが無きにしもあらずです。

コメント

  1. こんばんは
    秋が深まり、食欲の秋です。今日の昼食は回転寿司でさんまを食べました。美味しかったですよ。
    このチェスの駒は日本で大英博物館展が開かれたとき展示され、お土産用のフィギュアが販売されて、人気になりました。いいですよね。古いものなんですね。とぼけたいい味です。チェスの愛好者にとっては駒も大切なんでしょうから、いろいろなデザインがあるんでしょうね。飾りものとしても価値があると思います。ハリーポッターの映画にもチェスの駒を使った戦闘シーンが面白かったです。

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  2. 日本へも出向いていたのですか、この方達。大英博物館の展示物中、英国内で発掘発見された物の占める割合は、とても少ないので、この駒達は、そういう意味でも、貴重な品です。
    ハリポタに出てきた話は、聞いた事はあるのですが、実は、一作目も途中で見るのをやめてしまったほど、好みが合わなかったのです。そのシーンだけ、いつか探して見てみます。
    「鏡の国のアリス」にも、赤と白のチェス駒たちが登場するので、アリスの登場人物を模ったチェスセットが売られているのも見かけた事があります。

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