きらきら星と窓税

きらきら光る、お空の星よ・・・と、世界中で、バイオリンなどの楽器を習い始めたばかりの子供達が、きこきこと弾くこの曲の英語の題名は、「Twinkle, twinkle, little star」。メロディーはフランスのものだそうですが、歌の詩は、イギリスの詩人、ジェーン・テイラーによるもの。1806年に出版された彼女と、姉のアン・テイラーによる詩集「Rhymes for the Nursery」に、「The Star」の題名で挿入されています。

Twinkle, twinkle, little star,
How I wonder what you are.
Up above the world so high,
Like a diamond in the sky.

When the blazing sun is gone,
When he nothing shines upon,
Then you show your little light,
Twinkle, twinkle, all the night.

Then the traveller in the dark,
Thanks you for your tiny spark,
He could not see which way to go,
If you did not twinkle so.

In the dark blue sky you keep,
And often through my curtains peep,
For you never shut your eye,
Till the sun is in the sky.

As your bright and tiny spark,
Lights the traveller in the dark.
Though I know not what you are,
Twinkle, twinkle, little star.

Twinkle, twinkle, little star.
How I wonder what you are.
Up above the world so high,
Like a diamond in the sky.

Twinkle, twinkle, little star.
How I wonder what you are.
How I wonder what you are.

歌われるのは、大体、一番最初の部分のみで、ざっと訳すと、

きらり、きらきら、小さな星
あなたは一体何でしょう
世界のずっと上にいて
まるでお空のダイヤのよう

きらり、きらきら、小さな星
あなたは一体何でしょう

という事で、英語の歌詞で、この歌を聞いてみましょう。こちらまで。

さて、このジェーンとアンの詩人姉妹と家族は、エセックス州にあるイングランド最古の町と称されるコルチェスターに住んでいました。16世紀にフランダースからの織物職工が多く移民してきたダッチ・クウォーター(オランダ地区)と呼ばれる地域に、今でも立つ、上の写真のものが、彼女達が住んでいた家です。この窓から、夜空の星を見上げていたのでしょうか。

この写真を撮った際、この家がたまたま売りに出ていたのを覚えています。今は、誰が購入して住んでいるのでしょう。

さて、話を夜空のお星様から、非常に現実的な事へ転じます。もう一度、テイラー家が住んでいた家の写真を見てみて下さい。2階には、窓が2つあるのですが、その両脇に、さらに2つ、昔は窓だったものを、レンガでふさいでしまった形跡があるのが、おわかりと思います。要するに、建てた時は、4つあった窓を、後から2つ塞いでしまったようなのです。これは、おそらく、ウィンドウ・タックス(窓税)を避けるための税金逃れ対策でしょう。

ウィンドウ・タックス(Window Tax)は1696年、ウィリアム3世の時代に始まり、1851年まで続きます。その名の通り、家の窓に課された税金です。税の金額は、幾度かの改正が入っているようですが、1825年までは、窓が6つ以上ある家は課税対象とされ、1825年以降は、窓が8つ以上が対象。対象となってしまった家は、窓の数が何枚から何枚までは、これだけ取る、というようにカテゴリーにわけて線引きがされ、当然、窓の数が多ければ多いほど、取られるシステムであったようです。

この結果、窓税導入後、この税金を払わず済むよう、または、税額を減らすため、窓をいくつか、こうして塞いでしまう家が増えます。また、新しく建てる際も、これを考慮して、通常より窓の数が少ない家を建てる傾向もあったようです。今でも、古い町並みを歩いていると、税金逃れに塞がれた窓を持つ家が、そのまま立っているのが、時折、目に入ります。また、びっくりしてしまうのは、ごく最近作られた家やアパートでも、昔のスタイルをまねて作ってあるものの中には、ご丁寧に、こうして塞がれた窓までまねて作ってあるものがあるのです。最近の建物は、10年も経つとぼろが出る、質の悪いものかなりありますが、こんな事のまねっこをする暇があるのなら、昔ながらのしっかりとした家を建てて欲しいものです。

テイラー一家の住んでいた家に関しては、実際に彼らが窓を塞いだのか、すでに塞いであったものに移り住んだのかは、私にはわかりません。いずれにせよ、「光と空気にかかる税」、ひいては「健康にかかる税」と批判の声が高くなり、ついに1851年に、窓税は廃止となります。びくびくせずに、沢山の窓から、きらきら星を存分に眺められる事とあいなったわけです。

写真1枚目:コルチェスター城前の花壇の「きらきら星」を記念したディスプレー
写真3枚目:コルチェスターのダッチ・クウォーター

コメント

  1. こんにちは
    きらきら星はモーツアルトの作曲でしょか?ピアノ変奏曲があありますよね?
    税金の話は庶民にとっては深刻です。今、日本は復興税が話題です。増税やむなしが、主流かもしれません。そして、昔から間口に税がかかるので、日本の商家はうなぎの寝床のように奥に細長い敷地になります。ですから、光を取り入れる工夫が必要でした。イギリスでも同じでしょうね。そして、今、町の商店街は櫛のはを欠いたように細長い空き地が目立ちます。

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  2. モーツアルトのものは、フランスの歌、Ah! vous dirai-je, Mamanからの変奏曲という事です。
    増税か、公費節約による公共サービスの悪化か、どちらを取るかですね。「アメリカ並みの税率で、ヨーロッパ並みの公共サービス」と日本は言われる事がありますが、それを維持し続けるのは無理なのでしょう。どの国でも、何に税をかけるのが社会に一番害がないかを、決めるのが一大問題ですね。

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