教会でコーヒータイム

昔は、日曜日ともなると、お説教を聞きに大勢の住民が訪れた教会も、いまや、クリスマスやイースターなどの特別な催しのある日以外は、参列者の数もがたおち。大体、現在は住む場所というより働く場所と化した、シティーなどのロンドン中心部は、住民の数自体が過去に比べて、激減しているので、教会が人口に比べて多すぎる、という事実もあります。また、時折ニュース沙汰となる、聖職者による、わいせつ事件、暴行事件なども、人々が教会という組織に背を向ける理由となっている感もあります。身の回りでは、本当に、この人はいい人だ、と思う人は、無宗教の人が多いですし。頻繁に教会に通っている知り合いから、以前、同教会を通して仲良くなった知り合いから、金をだまし取られたなどという話も聞いて、びっくりしたことがあります。当然、教会関係者でも、いい人は沢山いますよ。貧しい人に、無料で食べ物を提供している教会などもある。でも、「キリスト教信者=モラルのある良い人間」という方程式はあてはまらないです。大体、昔のキリスト教の歴史を振り返っても、宗派による殺し合いや、自分と違う意見を持つものへの糾弾の話が多いですし。

と、前置きが長くなりましたが、そうした参列者がいなくなった古い教会の中には、取り壊されてしまったものもあり、民家や高級マンションとして生まれ変わるものもあれば、市民の集いの場と化すものもあり。さらに、カフェやティールームとして機能している教会も増えています。

ロンドンのシティー内で、私が気に入っているカフェのひとつが、セント・ポール寺院などにも近い、セント・ニコラス・コール・アベイ教会(St Nicolas Cole Abbey)にある、レン・カフェ( Wren Cafe)です。当教会、ロンドン大火後に、クリストファー・レンにより再建されているので、彼の名を取った「レン」と、小鳥のレン(みそさざい)をかけた名の様です。

広々とした歴史あるスペースの中、片側に注文を取るカウンターがあり、ゆっくりとコーヒーをすすりながら、時を過ごせます。

こちらは、セント・メアリー・オールダー・メアリー教会(St Mary Alder Mary)のコーヒーコーナー。この教会もクリストファー・レンによるもので、

綺麗な天井をながめながらのコーヒータイム。ついでながら、この教会が、なぜに、単にセント・メアリー教会としてではなく、セント・メアリー・オールダー・メアリーと、まどろっこしい名で呼ばれるかというと、ロンドンのシティー内には、かつては、セント・メアリーと呼ばれる教会が、いくつもあり、どのセント・メアリー教会かを区別するために、後ろに何かをくっつけた次第。この場合は、他のセント・メアリー教会より、古いものであったため、オールダー・メアリー。以前紹介したセント・メアリー・レ・ボウ教会は、地下にノルマン時代のアーチ(ボウ)があるため、レ・ボウ。メアリーだけにとどまらず、シティー内、他の聖人の名がついた教会も、同じ名のものが、教会最盛期にはいくつも存在したため、みな似たように、後ろに、区別のための説明がくっついています。

さて、英国国教会の、現在の市民のモラルへ与える影響はさておいて、その古く歴史ある建造物の文化的価値は計り知れないものがあり、観光で訪れた人たちにも、こうしたロンドン市内の教会も、田舎の風景の中、ぽつんと立つ教会にも、足を踏み入れ教会探検して欲しいものです。ですから、たとえカフェとしてでも、生存し続けてくれるに越したことはありません。

クリスマス期は、カフェインで人を呼び込まずとも、キャロル・サービスを行う教会は、この時とばかりに、ぎちぎちになったりもしますし、単にクリスマス・ツリーや装飾を見るために、教会に足を踏み入れる人も、通常より多い感じです。

上の写真は、以前の記事でも紹介した、セント・スティーブン・ウォルブルック教会内ですが、ツリーの他にも、クリスマスにむけ、ヘンリー・ムーア作の円形祭壇の上に、常緑樹のリースに4本のろうそくをたてた、アドベント・リースが飾られていました。やはり、何と言っても教会ですから、デパートなどの派手なデコレーションより、しっとり落ち着いているのも魅力です。

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