9つの聖書日課とクリスマスキャロル

クリスマスイブの午後3時からは、毎年、BBCのラジオで、ケンブリッジ大学のキングス・カレッジ・チャペルから、9 Lessons and Carols(9レッスンズ・アンド・キャロルズ、9つの聖書日課とクリスマスキャロル)が生放送されます。そして、少々遅れた時間に前もって録音されていたヴァージョンがテレビで放送。(上記写真は、キングス・カレッジの公式サイトより。)

これは、9つの聖書からの抜粋の朗読と、聖歌隊によるクリスマスキャロル演奏が交互に行われるという式典。キングス・カレッジ・チャペルでのサービスは、いつも、聖歌隊メンバーのソロによる"Once in Royal David's City"でおごそかに始まります。9つの聖書の抜粋の朗読は、まず聖歌隊のメンバーから始まり、徐々に、教会内での階級が高い人物が順番に読む形となります。イギリスのみならず、他国でも放送される、超人気のキャロル・サービスとあって、中に入って見ようなどと思うと、もう数日前から、寒い中、寝袋抱えて並ぶ覚悟で、クリスマスイブの朝に配布されるチケットをゲットする必要があるそうです。

クリスマスイブに、この「9つの聖書日課とクリスマスキャロルの礼拝」を行うのは、キングス・カレッジ・チャペルが行うようになってから、クリスマスイブの定番となり、イギリス内、更には、世界各国に広がったのですが、一番最初に行われたのは、1880年、イングランド南西部のコーンウォール州の州都トゥルーロ(Truro)での事。トゥルーロの大聖堂は、同年に建設が始まり、トゥルーロ大聖堂の初代司教となり、後にはカンタベリー大司教にもなる、E.W.ベンソン氏が、参列者に親しみやすい礼拝として考案。大聖堂建設中の仮の木造建築物内で、9つの聖書からの朗読が、9つのクリスマスキャロルに挟まれた形の礼拝が、最初に執り行われたのだそうです。

キングス・カレッジでのサービスが最初に行われたのは、第一次世界大戦終戦の年である1918年。ですから、今年は、100周年記念の年です。第一次世界大戦中、西部戦線そしてイタリアへ送られていた、エリック・ミルナー・ホワイト(Eric Milner White)氏は、帰国後、ケンブリッジへ戻り、キングス・カレッジで首席司祭(Dean)に任命されます。悲惨な第一次世界大戦という経験の直後、クリスマスイブには、何か、参列者の心を高揚させるようなサービスを行いたいと、9つの聖書日課とクリスマスキャロルのサービスを行う事に決め、以来、恒例行事となります。BBCでのラジオ放送が始まるのが、1928年だそうで、1930年の例外を除いて、第2次世界大戦中も放送は行われ続けたということ。

さて、上述の通り、キングス・カレッジでのサービスの皮切りとなるキャロル、"Once in Royal David's City"(日本語の題名は、「ダビデの村に」)は、以前サマセット州ダンスターについて書いたときに言及し、イギリス人には大変親しみのある讃美歌、"All things bright and beautiful"の作詞家でもある、アレクサンダー夫人(Cecil Frances Alexander)により書かれています。ソロで歌われる最初の部分の歌詞は、

Once in royal David's City
Stood a lowly cattle shed.
Where a mother laid her baby
In a manger for His bed.
Mary was that mother mild,
Jesus Christ that little child.

昔々、ダビデ王の町に
みすぼらし厩がありました。
厩では、母親が幼子を
飼い葉桶に横たえて。
そのやさしい母親はマリア様
幼子は、イエス・キリスト。

タワーブリッジを背景にロンドン塔前のクリスマスツリー
心にしーんと響く綺麗なメロディーですので、聞いたことが無い方は、ユーチューブなどで、簡単に検索できますので、一度聞いてみてください。私は、よく、この最初の一曲だけ聞いて、ラジオでもテレビでも、消してしまう事が多いのですが、今年は、全部聞いてみる・・・つもりではいます。それでは、さっさと、クリスマス前の最後の買い物に、町の中心まで、出かけないと。

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