深夜の告白
原題の「Double Indemnity」とは、倍額保険のこと。脚本をビリー・ワイルダーとレイモンド・チャンドラーが書いたこの映画は、そう、保険金殺人の話です。
ロスにある保険会社のセールスマン、ウォルター・ネフは、車の保険の更新を促すため、顧客のひとり、ディートリクソン氏の家を訪れるが、氏は留守で、ネフが出会うのが、氏の2度目の美しい妻、フィリス。典型的ファム・ファタール(Femme fatale)のフィリスの魅力にやられてしまったネフは、夫がもう我慢できないと言う彼女と共謀して、氏に気づかれないように、彼を保険にかけ、その保険金を目当てに、殺害するのです。
「Double Indemnity」は、あまりありえない状況で事故死した場合に、通常の倍額の金額が遺族に与えられるというもの。この場合は、鉄道事故で死亡した場合、倍額もらえる、という内容。2人は綿密に計画を練り、鉄道路線上に、すでに殺害した氏の遺体を横たえ、氏が、乗っていた列車から、誤って線路に転がり落ち、後から来た列車に轢かれたように見せかける。
この事件の後、活躍するのが、ネフとは仲の良い同僚のキーズ。彼は、長年に渡る、保険金の請求審査官としての経験から、いつわりの請求を嗅ぎ当てるのに優れた能力を示すのです。警察は、事故死としたものの、キーズは、ディートリクソンが、死亡の際、足に怪我をして松葉杖をついていたのに関わらず、この足の怪我に対しては、保険の請求をしていない事実に気づき、この事件、何かがおかしい、と感じ始める。こうして、キーズが、調査を開始し、徐々に真相に近づいていく様子は、シャーロック・ホームズも顔負け。そんなキーズを見ながら、冷や汗もののネフは、やがて、ディートリクソン氏の最初の妻の娘、ローラから、最初の妻の死にも、当時彼女の看護婦であったフィリスが関わっている疑いがある事を知らされる。
可愛さ余って憎さ100倍となるネフ。したたかな悪女によって、とんでもない事に巻き込まれた、と、殺意を持ってフィリスの家を訪れるのです。彼女は彼女で、拳銃をソファーの下に隠し、ネフを待ち構えていた。ネフに向け、銃を発射し、傷を負わせながらも、とどめをさせなかったフィリスを、ネフは殺害。彼は、その足で、真夜中、会社へ行き、キーズのオフィスに入り、録音機にむかって、事件の真相の告白をする・・・そこで、日本の題名「深夜の告白」となるわけです。物語全体は、こうして、録音機にむかって告白を始めたネフの語りによって、フラッシュバックで綴られています。
実際の犯罪シーンもはらはらさせられるものがありますが、主役の2人の他に、エドワード・G・ロビンソン扮する、キーズというキャラクターの味が最高で、後半の彼のセリフや謎が追求される様子が、この映画を、より面白いサスペンスにしています。
キーズが、膠着した表情のネフにむかって、とうとうと語る下のセリフが、特に印象的で、最後の部分は、思わず、「ははー!」と声を上げて笑いが出ました。
Murder is never perfect. It always comes apart sooner or later. When two people are involved, it's usually sooner. Now we know the Dietrichson dame is in it and the somebody else. Pretty soon, we'll know who that somebody else is. He'll show. He's got to show. Sometime, somewhere, they've got to meet. Their emotions are all kicked up. Whether it's love or hate, it doesn't matter. They can't keep away from each other.They may think it's twice as safe because there's two of them, but it isn't twice as safe. It's ten times as dangerous. They've committed a murder! And it's not like taking a trolley ride together where they can get off at different stops. They're stuck with each other and they got to ride all the way to the end of the line and it's a one-way trip and the last stop is the cemetery.
完璧な殺人なんてものは無い。遅かれ早かれ、どこかでぼろが出るものだ。特に、殺人に2人からまっている場合は、ぼろがでるのは早い。ディートリクソンの妻がからんでいるのは、わかっている、それから誰かもう一人がからんでいる事も。それが何者かが見えてくるのは、時間の問題だね。すぐに正体を現すさ。それは、まず間違いない。いつか、どこかで、やつらは待ち合わせをする。共謀者達の感情は高まっているから。それが愛であれ、憎しみであれ、そんな事は関係ない。やつらは、お互いから離れている事はできないはずだ。殺人に2人が関わってるから、2倍安全だなどと思っているかもしれないが、それどころか、10倍くらい危険だよ。犯したのは「殺人」だ!2人で一緒に路面電車に乗るのとわけが違い、好きな場所で、別々に下車することはできない。運命共同体で、最後まで行き付く事になる。片道旅行で終点は墓場さ。
松葉杖をついた男の影が、徐々に近づいてくるタイトルバックも、シンプルですが、心理的に迫ってくるものがあり、なかなかいけます。
それにしても、男を破滅へ導くファム・ファタール。こういう女性に目を付けられた男性は、頭では、これは終点墓場の片道旅行になるかも、と何となくはわかっていながら、悲しいかな、どうにもとまらなくなってしまうものでしょうか。
原題:Double Indemnity
監督:Billy Wilder
言語:英語
1944年
ロスにある保険会社のセールスマン、ウォルター・ネフは、車の保険の更新を促すため、顧客のひとり、ディートリクソン氏の家を訪れるが、氏は留守で、ネフが出会うのが、氏の2度目の美しい妻、フィリス。典型的ファム・ファタール(Femme fatale)のフィリスの魅力にやられてしまったネフは、夫がもう我慢できないと言う彼女と共謀して、氏に気づかれないように、彼を保険にかけ、その保険金を目当てに、殺害するのです。
「Double Indemnity」は、あまりありえない状況で事故死した場合に、通常の倍額の金額が遺族に与えられるというもの。この場合は、鉄道事故で死亡した場合、倍額もらえる、という内容。2人は綿密に計画を練り、鉄道路線上に、すでに殺害した氏の遺体を横たえ、氏が、乗っていた列車から、誤って線路に転がり落ち、後から来た列車に轢かれたように見せかける。
この事件の後、活躍するのが、ネフとは仲の良い同僚のキーズ。彼は、長年に渡る、保険金の請求審査官としての経験から、いつわりの請求を嗅ぎ当てるのに優れた能力を示すのです。警察は、事故死としたものの、キーズは、ディートリクソンが、死亡の際、足に怪我をして松葉杖をついていたのに関わらず、この足の怪我に対しては、保険の請求をしていない事実に気づき、この事件、何かがおかしい、と感じ始める。こうして、キーズが、調査を開始し、徐々に真相に近づいていく様子は、シャーロック・ホームズも顔負け。そんなキーズを見ながら、冷や汗もののネフは、やがて、ディートリクソン氏の最初の妻の娘、ローラから、最初の妻の死にも、当時彼女の看護婦であったフィリスが関わっている疑いがある事を知らされる。
可愛さ余って憎さ100倍となるネフ。したたかな悪女によって、とんでもない事に巻き込まれた、と、殺意を持ってフィリスの家を訪れるのです。彼女は彼女で、拳銃をソファーの下に隠し、ネフを待ち構えていた。ネフに向け、銃を発射し、傷を負わせながらも、とどめをさせなかったフィリスを、ネフは殺害。彼は、その足で、真夜中、会社へ行き、キーズのオフィスに入り、録音機にむかって、事件の真相の告白をする・・・そこで、日本の題名「深夜の告白」となるわけです。物語全体は、こうして、録音機にむかって告白を始めたネフの語りによって、フラッシュバックで綴られています。
実際の犯罪シーンもはらはらさせられるものがありますが、主役の2人の他に、エドワード・G・ロビンソン扮する、キーズというキャラクターの味が最高で、後半の彼のセリフや謎が追求される様子が、この映画を、より面白いサスペンスにしています。
キーズが、膠着した表情のネフにむかって、とうとうと語る下のセリフが、特に印象的で、最後の部分は、思わず、「ははー!」と声を上げて笑いが出ました。
Murder is never perfect. It always comes apart sooner or later. When two people are involved, it's usually sooner. Now we know the Dietrichson dame is in it and the somebody else. Pretty soon, we'll know who that somebody else is. He'll show. He's got to show. Sometime, somewhere, they've got to meet. Their emotions are all kicked up. Whether it's love or hate, it doesn't matter. They can't keep away from each other.They may think it's twice as safe because there's two of them, but it isn't twice as safe. It's ten times as dangerous. They've committed a murder! And it's not like taking a trolley ride together where they can get off at different stops. They're stuck with each other and they got to ride all the way to the end of the line and it's a one-way trip and the last stop is the cemetery.
完璧な殺人なんてものは無い。遅かれ早かれ、どこかでぼろが出るものだ。特に、殺人に2人からまっている場合は、ぼろがでるのは早い。ディートリクソンの妻がからんでいるのは、わかっている、それから誰かもう一人がからんでいる事も。それが何者かが見えてくるのは、時間の問題だね。すぐに正体を現すさ。それは、まず間違いない。いつか、どこかで、やつらは待ち合わせをする。共謀者達の感情は高まっているから。それが愛であれ、憎しみであれ、そんな事は関係ない。やつらは、お互いから離れている事はできないはずだ。殺人に2人が関わってるから、2倍安全だなどと思っているかもしれないが、それどころか、10倍くらい危険だよ。犯したのは「殺人」だ!2人で一緒に路面電車に乗るのとわけが違い、好きな場所で、別々に下車することはできない。運命共同体で、最後まで行き付く事になる。片道旅行で終点は墓場さ。
松葉杖をついた男の影が、徐々に近づいてくるタイトルバックも、シンプルですが、心理的に迫ってくるものがあり、なかなかいけます。
それにしても、男を破滅へ導くファム・ファタール。こういう女性に目を付けられた男性は、頭では、これは終点墓場の片道旅行になるかも、と何となくはわかっていながら、悲しいかな、どうにもとまらなくなってしまうものでしょうか。
原題:Double Indemnity
監督:Billy Wilder
言語:英語
1944年
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