燃える馬糞パワー
煙があがる馬糞の山 |
先日、山と積まれた馬糞から煙があがっている脇を通りました。誰が火をつけたわけでもなく、自然にくすぶり始めたのでしょうが、馬糞が腐敗の過程で放出する熱にはかなりのパワーがあるのでしょう。そのため、馬糞は、肥料としての他にも、かつては、この腐敗の間に放出する熱を利用して、冬季の寒い間に、植物を育てるのにも重宝されてきたのです。昔読んだ、ガーデニングの歴史の本によると、古くは、ローマ時代、ローマ皇帝ティベリアスは、きゅうりが大好きであったそうで、年がら年中きゅうりを食べられるように、冬季には、リヤカーのごとく、下に車輪がついて移動ができるプランターに、馬糞を詰め、その上にコンポストを入れてきゅうりを育てたという話です。プランターに車輪がついていた、というのは、お日様の当たっているところに移動できるように。
まだ、農家や街中でも馬が沢山活躍していたイギリスのヴィクトリア朝でも、馬糞は冬の間の植物の育成のためのホットベッド(温床)に、ヒーター代わりに盛んに使われたようです。肥料の時とは逆に、ホットベッド用の馬糞は、出来立てのほやほやのものを、藁などとまんべんなく混ぜたものが良く、ホットベッドの底に、均等に馬糞と藁のミックスを敷き詰め、その上にコンポストを入れ、コンポスト内に植物の種や苗を植えたり、種、苗を植えたトレーをその上に乗せたりしていたそうです。植物が直接、腐っていく馬糞に接触するとアチアチと焼けてしまうので、その点は注意のようですが。また、上にガラスの蓋などをすると、さらに効果は抜群。ただ、オーバーヒートしないように、温度の確認は必要。12月あたりに、できたてほやほやの馬糞を敷き詰めたホットベッドは、3月くらいまで熱を発してくれるようです。
当然、現在では、馬の数も少ないですし、電力も普及、また植物も冬の寒さに耐えながらぐんぐん育つものも開発され、馬糞熱パワーを庭で使う人はほとんどいなくなっていますが。多く存在したものを、有用に再活用するという昔ながらの人間の知恵は、燃料危機などが懸念される将来、また必要になってくるかもしれません。
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