白血病再発と人生洗濯

子供の頃、両親の東京の家が戦争で焼けた経験を持つうちの母親は、必要でない物、余計な物は、後生大切にしまい込んで取っておかずに、ぱっぱと整理する主義。実用的でない飾り物や置物の類を、贈り物やお土産でもらうのも嫌いで、その手の物をもらってしまうと、「どうせくれるなら、石鹸とかタオルとか、実際に使えるものか、蕎麦とか缶詰とか保存が利く食べ物をくれればいいのに。こんな物もらっても何の役にもたたないわ。」と勝手な事を言っています。また、住まいが持ち家でなく借家の団地なのも、尚更その傾向に拍車をかける様子。

私が、イギリスに来たとき、ずっと取っておきたいと思っていた子供時代好きだった本も、気がつくと母の家から消えてなくなっていて、「埃がたまるだけだから、人にあげたわよ。」だそうです。さすがに、私の子供時代のアルバムなどは取ってあったので、万が一、彼女の気が変わって、捨てられてしまう前に、とイギリスへ持ってきました。

相反してうちのだんな。物がとにかく捨てられないタイプ、そして、物に対して非常におセンチになるタイプです。

彼の両親が亡くなった後、それは沢山の写真、手紙、本、置物、記念品、ひいては自分の子供時代のおもちゃや本、云々を、すべて実家からダンボール何10箱にもつめて持ち帰り、今は、そのまま、うちのロフトに眠るのみ。受け継いだ家具の数々は、有り難く、我家で使っていますが。また、この他にも、購読していて読みきれていない新聞や、以前の仕事関係の書類の山を「いつか読む日のため」とってあり、これもロフトで幅を利かせています。「そのうち、目を通し整理整頓する」と私に約束しながら、1年、2年と月日は流れ、数年経った今、私は、この「そのうち」はやってこないと思っていました。かてて加えて、車庫にも、一体、何に使うのか良くわからないガラクタが積み上がっており。

だんなが、白血病にかかったのは去年の夏の終わり。3回の化学療法(キモセラピー)を終え、完全寛解(レミッション)を達成し、最終的に退院したのは、去年の12月の事でした。

悪い経験に対する人間の記憶力などは非常に弱いもので、もう早、そんな事があったのも忘れかけていました。「喉もと過ぎれば熱さ忘れる」とは、言ったものです。月に一回の定期的血液検査も、重病のための検査と言うより、歯医者の定期健診の感覚。しばらくの間は、再び、健康優良児のように、それは何でも良く食べ、バイクにのり、ヒザが痛いと嘆きながらテニスもし。比較的治り安い種のものだったということで、確か、治療後、再発せずに完治の確立は75%と言われた気がします。

それが、今月頭、数日間、風邪を引いたようなだるさがあり、リンパが腫れだし、首の後ろに、いくつかできたおできのようなものが治る気配を見せず、赤く腫れあがっていた・・・前回、白血病と分かる前と少し似た症状。専門医に連絡を取り、検診に行ったところ、再発とわかり、入院とあいなりました。75%は再発しないといわれても、残り25%に所属してしまう人はいるわけで、残念ながら、その少数派グループに所属してしまったわけです。完全寛解とは、肉眼で、白血病細胞が見えない状態の事ですが、キモセラピーを生き延びた悪玉たちが数ヶ月密かに隠れ住んでいたわけで、そいつらが、再び、暴れ始めた次第です。

去年、白血病と分かった時も、「もしかしたら死ぬかもしれない」というのは、だんなの頭をよぎったようですが、今回も、また、「これは本当にやばいかもしれない。」と半分思った様子。特に、再発後の治療は、2回のキモセラピーのあとに、かなりのリスクを伴う造血幹細胞移植を必要とするという事です。

入院する前に、2,3日余裕が合ったので、だんなは、「万が一、死んだときのため」と、ロフト、庭のシェッド(小屋)、車庫から、過去の書類、新聞の山、をひきずりだし、ついに・・・ついに、整理をしていました。燃やす必要のあるもの、リサイクルするもの、取っておきたいものに、其々わけて、最終的にとっておきたい物は、全体の1%にも満たないような量。その夜は、庭で、木切れを燃やし焚き火をし、処分必要な書類を火にくべました。暮れていく空を背景に、ぱちぱち燃え上がる炎。そして、翌日は、リサイクル用の書類と新聞と共に、車庫内のガラクタのうち、再生可能な、金属、木製の物は、車にぎっちり詰め込み、リサイクル場へ運び込みました。

先進国に限った話ではあるでしょうが、人間ひとり生きていく過程で、これだけの量の物を堆積して所有するというのも、改めて驚きです。こんな事になってから、やっとの事での人生洗濯。キモセラピーの合間に退院した際に、また残りの物を少しずつ整理する気でいるようです。

まだ未亡人になりたくないし、彼とお喋りするのが大好きですから、生き延びてもらわないと困りますが、私も、所持品は本当に大切な物を選び選んで、これからは、できるだけ身軽でいたいものです。どんなに物を溜め込んでも、あの世には持っていけませんから。そして、手放したいながら、思い入れのある品々は、自分でコントロールの利くうちに、大切にしてくれそうな、次の所持者を探す、というのも良い事でしょう。

本に限っては、最近は古典なら、ほとんど無料でアマゾンのキンドルにダウンロードできるので、ディケンズの作品等のペーパーバックは、先日まとめて、チャリティーショップに寄付してきました。また、写真のデジタル化も、有り難いもので、デジカメ購入以降のものは、全てPC、ネット、CDに収まり。いいな、綺麗だな、面白いな、と思った場所や物の写真は、こうしてブログに載せるなどして、ふと私のブログを訪れた人たちにも、見てもらう事もでき、ロフト内で、長い間開く事もないアルバムに収まっているよりもずっと良いと思っています。

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話は全くそれますが、昨日のドイツでの、女子サッカー・ワールド・カップの決勝戦は、予想に反して、米を破っての日本の優勝!やってくれました。これは、だんなも、インターネットで病院のベッドの上で観戦したとこの事で、「ヴェリー・エキサイティングだった」と喜んでいました。当試合のハイライトはこちらまで。

コメント

  1. こんばんは
    私もそろそろ身ぎれいにして整理整頓、後片付けが必要です。まず、定年が近いですから職場の私物は最小限にしなくては迷惑になります。そして、娘も家を出ましたから、彼女の物も整理した方がいいですよね。亡くなった両親の家も処分しなければならないでしょう。あれこれ考えると忙しいことになります。でも、難しいですよね。決断力はエネルギーを要します。ご主人様もむりなさいませんように、。

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  2. 追伸
    ナデシコジャパンの優勝
    びっくりです。すごくうれしいです。イングランドには負けてしまいましたが、それが結果的には良かったみたいです。大和撫子という言葉は英語で説明するのむずかしそうですね。

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  3. 私の夫の場合、思い切り良くたくさんの物を手放してしまったのですが、時々未練がましく思い出しています。なでしこジャパンの試合、私は半分寝ていましたが彼は3時半に起きて最初からずっと見ていました。サッカーはあまり好きではないと言いながら日本の国際試合だけはしっかり見ています。

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  4. せつこさん
    イングランドは、世界ランクが上の日本を負かしたと、うかれて、これはいい線いくかも、と騒いだ後にフランスに負けてしまいました。この国のサッカー、男子も女子も踏ん張りにかけるようです。
    どうしても手放したくないものはありますが、うちのは、その量が尋常でないので、第1回目のキモの後の一時退院で、また、整理しなきゃ、と本日も言っていました。

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  5. アネモネさん
    越境する人は、身を軽くしないと大変でしょうが、未練がましく思い出すという気持ちはわかります。
    サッカーファイナルは、イングランドがでていなかったから、地上チャネルでなく、デジタルのBBC3で格下げ放送されていました。私も、実は、アプレンティスの最終回を見ていたので、後半はリモコンで番組間を行ったりきたりして、翌日ハイライトを見ました。だんなは、一生懸命最後までネットで見たようです。

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