ある公爵夫人の生涯
映画The Duchess(邦題:ある公爵夫人の生涯)は、故ダイアナ妃のご先祖様でもある、デヴォンシャー公爵夫人、ジョージアナ・キャヴェンディッシュ(婚前の名は、ジョージアナ・スペンサー)の生涯を描いたもの。
さて、結婚生活では、公爵は、ジョージアナの親友であったエリザベスに手を出し、愛人とし、3人は同じ屋根の下で生活するという妙な状況に。無口なのに、こういうところだけは、手が早いのが可笑しいですが。ジョージアナは、それでも、やがて、めでたく男児を出産し、妻としての義務は無事完了します。
2008年
ちなみに、このアダム・ワースは、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズに登場する、「犯罪のナポレオン」モリアティ教授のモデルとなった人物と言われています。
「Georgiana, Duchess of Devonshire(ジョージアナ、デヴォンシャー公爵夫人、Amanda Foreman著)」という題名の彼女の伝記を基に作られています。
ジョージ3世が王位に付く直前の1757年に生まれた彼女は、その美貌と、ファッション・センス、カリスマ性、庶民にも共感が持てる気さくな魅力で、イギリス初のセレブ的存在に。まさに、後のダイアナ妃を髣髴とさせる一生だったようです。カメラマンのかわりに、スケッチブックを抱えた風刺画家たちに追いかけられている様子は、映画の中でも描写されています。
16歳にして、10歳年上のウィリアム・キャヴェンディッシュ、第5代デヴォンシャー公爵と結婚。無口で感情表現皆無の公爵が妻に望む事は唯一つ、世継ぎの男児を出産せよ。犬に喋りかける回数の方が多いような無関心公爵との、夢もロマンスも無い結婚に、若いジョージアナはがっくり。しかも、最初の2人の子供が女児で、その後も流産、男児を死産と、結婚生活は難航。
それとは、裏腹に、社交界では花形となり、キャヴェンディッシュ家が代々支持してきた政党ウィッグ党(Whig)のメンバー達にとっても、彼女は、貴重なイメージ、キャンペーン・ガールとなります。彼女の友人達の中には、ウィッグ党リーダー、チャールズ・ジェームズ・フォックスや、劇作家シェリダン、また、頭角をあらわし始めたウィッグ党政治家チャールズ・グレイ。後、グレイとジョージアナは恋仲となります。(ちなみに、ウィッグ党は、フランス風の絶対王政に反対する立憲王制主義で、宗教的傾向はプロテスタント。)
あるフランスの外交官いわく、「彼女が現れると、全人の目は彼女の方を向き、彼女がいない時は、常に会話にのぼる。」ジョージアナが着たドレスや帽子は、他の女性たちに競って真似され。
映画の中でも、こんなセリフがありました。「彼女を愛していないのは、彼女の夫だけのようだ。」
子供好きの良いママだったようで、夫を捨て、チャールズ・グレイと一緒になる夢を諦めるのも、夫からの、「グレイと一緒になったら、2度と子供達に会わせない。」の一言から。グレイは後、1830年から1834年の間、英国首相となります。1833年に、英国及び大英帝国領土内での奴隷制の完全廃止の法が通ったのも、彼が首相の時のこと。また、紅茶のアールグレイは、この人の名から来ています。
公爵も、全くの悪人として描くより、生まれた環境の型にのっとり、習慣を習慣とて疑問を持たずに生きていく人間として描かれているのが、良かったです。型破りで、進歩的なジョージアナと合わないのは必然で、それでも彼なりに時代に見合った妥協を探していく。
彼女の生涯、確かにダイアナ妃と似たような部分はありながら、王家に嫁いでしまったダイアナ妃よりは、多少は自由が利き、政界や社交の場での表現のはけ口もあり、満ち足りた部分もあった様な気がします。それに、この時代、貧乏人で食うに困る人間も沢山いたでしょうから、裕福な家庭に生まれただけでも幸せというやつかもしれません。
この手の歴史ものは、衣装と、ロケ先のお屋敷やそのインテリアを楽しむのも醍醐味のひとつ。それは、公爵家の事ですから、ロンドンを含めあちこちにお屋敷があったようですが、キャヴェンディッシュ家のメインの館は、デヴォンシャーというタイトルとは関係なく、ダービシャー州にあるチャッツワース・ハウス(Chatsworth House)。ここは、この映画の他にも、何回かテレビ番組で紹介されているのも見た事があり、それは豪勢な庭園と館。一度訪れたい場所のひとつです。
原題:The Duchess
監督:Saul Dibb
言語:英語2008年
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さて、ジョージアナの伝記の表紙にも使われている、トマス・ゲインズバラ筆の彼女の肖像も、いわくある代物。
この絵は、1876年に、アダム・ワース(Adam Worth)という悪名高い盗賊により盗まれ、この盗人は、絵を自分で保持していたそうです。好みの女性だったんでしょうか。絵が再び見つかった際には、一目、この絵を見ようと、押すな押すなの人だかりだったとか。死後も、話題に持ち上がるお騒がせ女性だったようです。
ちなみに、このアダム・ワースは、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズに登場する、「犯罪のナポレオン」モリアティ教授のモデルとなった人物と言われています。
この映画、日本ではダイアナ妃がらみで宣伝されていたのが
返信削除ちょっと気に入りませんでした。
キーラ・ナイトレイ、好きな女優です。
BBC製作のドラマ、Coming Homeで
主人公の子供時代を演じていたということですが、
見ませんでしたか?
こちらの宣伝でもダイアナ妃使われてた気がしますが、先に元になった伝記が話題になっていたので、さほどミーハー的イメージはありませんでした。ジョージ3世の時代の歴史物としても楽しめました。
返信削除Coming Homeは見たことが無いです。アマゾンUKで検索したら、Rosamunde Pilcherの作品なんですね。やはりキーラ・ナイトリーが出ている第2次世界大戦を背景にした、Atonement(つぐない)はわりと好きです。