ピカデリー・サーカスのエロス像


ピカデリー・サーカス、夜9時過ぎ。ネオンサインが、暗くなってきた空に映え始め。

サーカスは、円形広場の意で、ピカデリー・サーカスは、南北を走るリージェント・ストリート、西にむかうピカデリー、東へのシャフツベリー・アヴェニューが出会う交差点。

ピカデリー・サーカスと言えば、やはり、弓矢を放つエロス(Eros)の像が有名。

エロス(キューピッド)として一般には呼ばれながらも、これは、実際は、エロスの弟であり、相互愛の象徴のアンテロス(Anteros)なのだそうで。エロスが象徴する男女間の軽い恋愛沙汰よりも、やさしい成熟した愛情を表すと言います。

ヴィクトリア朝の政治家、慈善家で、貧民、貧しい子供の生活向上のため貢献した7代目シャフツベリー伯(Earl of Shaftesbury, Anthony Ashley-Cooper)を記念するため、アルフレッド・ギルバート(Alfred Gilbert)によって1893年に製作されたアルミニウムの像です。

刻々変わるネオンを背景に写真を撮ったら、像はほとんどシルエットだけとなってしまいました。

労働時間制限、安全規律や、工場従業員への考慮などが、ほとんど無かった時代、シャフツベリー伯は、工場の労働環境改善に尽力。数ある反論の中、1847年の工場法(Factory Act)で、工場での最長労働時間を10時間までと制限する法を通したのも、彼の功績。10時間でも、子供などには長い労働時間ではありますが、進歩は進歩。

また、映画の「メリー・ポピンズ(Mary Poppins)」などにも出てくるような煙突掃除の少年達に対しても、安全対策など全く取られていなかった。孤児、または、貧しい家庭から売られた子供が、煙突掃除の親方の下、煙突内を這い上がり、掃除するのは、「Chim Chimney, Chim Chimney, Chim Chim Cher-ee チムチムニー、チムチムニー、チムチムチェリー」などと、にこにこしながら、陽気に歌うメルヘンの世界とは全く異なった過酷な世界。狭いところを登る事で、間接が変形してしまう、埃やすすを吸い込んでの窒息死、掃除中の転落死、やけど、すすに含まれたケミカルによる癌・・・。

以前あった煙突掃除に関わる法律も、ほとんど、あって無きにしも、の状態。場合によっては、7歳くらいの少年が、煙突掃除で、親方にこき使われる事などもあったようで。これも、シャフツベリー伯の運動で、1864年に、煙突掃除規律法(The Chimney Sweepers Regulation Act)が通り、徐々に改善を迎えます。

シャフツベリー伯のその他の貢献には、貧しい子供の為の、時に衣服や食べ物の配給もする無料の学校(Ragged School)の設立運動もあります。


「貧民の伯爵」を記念した像の周りは、この日も、観光客が沢山座っていました。

コメント

  1. The Water Babiesの主人公Tomは煙突掃除の少年でした。
    親方にこきつかわれていた様子も物語の中にありました。
    本が出版されたのは1862年、その法律ができる少し前だったのですね。

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  2. The Water Babiesは、次回、アマゾンに本を注文する時、一緒にオーダーしてみます。本当に、児童小説にしては、辛口な感じします。

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