バイオダイバーシティー(生物多様性)の低い国イギリス

 イギリスは、バイオダイバーシティー(Biodiversity、生物多様性)が非常に低い国である、というニュースを聞きました。G7の国の中では最下位、また全世界中でも、下からの10%に入るというお粗末な結果。ちなみに、G7で一番の生物多様性を保っている国は、カナダで、それから、ドイツ、フランス、イタリア、日本、アメリカ、そしてイギリスとなっています。

 日本は国土の70%近くが森林だというのに、もっと上でもいいのではないか、という気がしますが、日本の森林は、杉やヒノキなどの人工林が占める割合が非常に高いのがマイナス。要するに森林面積は広くても、種が限られ、モノカルチャーであるため、多種多様の昆虫や生物を支えることができない、おまけに、花粉症という弊害もある。このため、日本がこのバイオダイバーシティーリストの上にあがっていき、生物種の絶滅を防ぎ、バランスを守るためには、広葉樹林の拡大が望ましいようです。

カナダのように、人口のわりに、国土面積が広いアメリカなどが、 日本より悪いというのは、単一穀物を育てる、地平まで続く超大型農地が多いためでしょうか。これはあくまで、憶測です。

さて、イギリスは、ヨーロッパの他国に比べて森林面積が狭いという話は、前々から聞いて知っていました。その理由のひとつには、とにかく、国がたいらであるという事があったようです。ストーンヘンジなどを作った、大昔のご先祖様たちの時代から、とにかく、木を切って土地を開拓するのが比較的楽であったので、どんどん、木がなくなっていった。そして、産業革命を最初に成し遂げ、ますます、手つかずの土地が減っていき。昔のままの姿の森林というのは、たしかに、イギリス国内でぽつん、ぽつんです。ドイツ、フランスなどは、グリム童話の背景に、今でも使えそうな森林がたくさん残っている感じはします。

庭に来るブラックバードロビンなどの鳥たち、ハリネズミ、町の中心に行く途中のやぶから飛び出すうさぎ、など、その辺でわりと小動物と遭遇する機会が多いので、なんかイギリスは、自然たくさん、というイリュージョンはあります。 ロンドンなどにしても、キツネが庭に出没したり、ハイドパークやら、ハムステッドヒースやらと広大な緑地が多いのも、緑大き国のイメージにつながっていますが、緑=バイオダイバーシティーという方程式はなりたたない。

 よく散歩に出る、町はずれから、隣村へと向かう道(上の写真)も、ほとんど住宅は目に入らず、畑がつづき、広々と、すがすがしい気持ちはする。でも、確かに、畑というのは、人工で、自然ではない。そうした一見、緑がたくさんの自然風景の中で、どれだけの虫や小動物がストレスを感じずに生息できるかと、バイオダイバーシティーという物差しで測ると、世界でもかなりお粗末な国という結果が出てしまった。世界のあちこちで、大量の原生森林の伐採が問題になっていますが、イギリスは、そんなことが問題になる、とうの昔に、それをやってしまっていて、禿げ頭になり、現在に到達しているわけです。

最近になって、木を植えようとか、各地の田舎でリワイルディング(rewilding)などと言って、土地をほぼ放置して自然のなすままに任せるなんてことをやっており、大昔にイギリスでは絶滅したビーバーなどの導入も始めています。まだまだ、規模的には足りていない努力。それに、国での自給自足などが大切と考えられている今、リワイルディングで、農耕ができる場所も減る可能性があり、食料確保とのバランスも考えなければならない。

また人口増加で、家ももっと必要となり、一体、どこに建てるんだ、という問題もあります。最近建てられている新しい家などは、庭なども猫の額の様で、無機質な高い塀に囲まれ、しかも、夫婦共働きで、手間のかかるガーデニングは避けたいと、人口芝生やら、一面コンクリートなんてことも。

イギリスの家の個々の庭は、全国的に総合すれば、バイオダイバーシティーを増やすのに、馬鹿にできない規模があるといいます。新築の家の庭と庭との境は、塀でなく、昔ながらの垣根にすればいいと思うんですが、手間も費用もかかるので、ぱっと建てて、ぱっと売りたい建築会社は、そんなことしたくないのでしょうね。こんな垣根が増えるだけでも、昆虫やひいてはそれを植物にする小動物の数も保てると思うんですがね。特に、絶滅が騒がれているハリネズミなども、庭から庭へと渡り歩くのが楽になり、食べ物を探しやすいし、垣根は寝床にもなる。あとは、庭に必ず最低1本、どんなに小さくても木か藪を植えると義務ずけるとか。私がイギリスの環境大臣だったら、まず、そんな事を法にするななどと、散歩しながら考えていました。

 こんな事を書いていて、ジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」という 映画を思い出しました。舞台は、多摩丘陵。そこで暮らしていた狸たちが、多摩ニュータウンの開発に住処を脅かされるのを恐れ、なんとかそれを阻止しようとするという話でした。最後には、当然、狸たちは負けてしまうので、化けるのがうまい狸たちは、人間に化けて、東京でストレスいっぱいの通勤生活を始め、そのまま狸として生きるのを決めた者たちは、狭まった環境の中で何とか、それでも楽しみながら生きていくというエンディング。

今、日本に狸ってどれだけいるのでしょうね。居酒屋の前の置物以外に。昔は、私の実家のできたばかりの駅の周辺にもよく出没したという話ですが。ひっそり、どこかで、月夜に腹づつみでも打ちながら、生きているのかな。

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