ロビンと秘密の花園

赤い胸当てをしたような小鳥、ロビン。日本では、ヨーロッパコマドリと呼ばれるこの鳥は、クリスマス・カードのデザインにも頻繁に使われる事でもおなじみです。細い足と小さなくちばし、大きな黒い目は、まるでおもちゃ。

ヨーロッパコマドリは、庭仕事をしていると、掘り起こした土の中の虫やみみずを目当てに、近くに飛んできたりすることから、ガーデナーズ・フレンド(庭師の友達)などとも呼ばれています。

地面に突き立ててある庭を耕すためのシャベルやガーデン・フォークの取っ手に、ちょこんととまっているコマドリの絵は、良く目にするものです。ピーター・ラビットの絵本で、畑でにんじんをかじるピーターの脇にも描かれていました。

上の写真、植木鉢のふちにとまっているの分かるでしょうか。こっち見てます。

可愛い・・・のですが、縄張り意識はわりと強い鳥の様で、結構凶暴な面もあります。以前住んでいた家の庭の奥に、いつもいたコマドリ、他のコマドリが飛んで来ると、大変な剣幕で追いかけ、追い払ってました。人も鳥も、見かけによらないのです。

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さて、フランシス・ホッジソン・バーネット(Frances Hodgson Burnett)の「秘密の花園」(The Secret Garden)を読みました。


まだ大英帝国の下にあったインドで育った少女メアリー・レノックス。両親にほとんど無視され、インドの召使達に、育てられ、わがままで、ひねくれた彼女。コレラで両親が死亡した際、イギリスのヨークシャーに住む、せむしの叔父の豪邸に引き取られる。

叔父は、妻が、館の庭園内にある壁に囲まれた花園の木から落ちて死んでから、すっかり落ち込み、始終、館を留守にするようになっていた。妻が生存中は、2人でこよなく愛したこの花園は、10年間、鍵をかけられたまま、誰も入ったものがいない。


メアリーはこの花園の話を聞いてから興味がわき、その花園への鍵とツタに覆われたドアの場所を知りたがるのですが、メアリーを、その秘密の場所へ導くのが、館の庭に住み着いていたロビン(ヨーロッパコマドリ)。メアリーが、徐々に元気な普通の少女へと変身する、最初のきっかけも、このロビンと仲良しになった事から。

やがて、ムーアのコテージに住む自然を愛する少年ディッコンと共に秘密の花園を生き返らせて行きます。病弱で、いつも館内で寝たきりになっていた、いとこ(叔父の息子)のコリンも、メアリーとディッコンの力で、花園に出入りするようになり元気を取り戻していくわけです。

自然との触れ合いが、子供の内面や健康に与える好影響を盛り込んだストーリーラインと、おセンチになりすぎない、さっぱりした書き方が大好感。児童文学の古典の地位を保つだけの事はあります。

この話の中で、両親を亡くしたばかりのメアリーは一時インドに住むイギリス人宣教師の家に世話になりますが、その家の5人の子供達は、何かに付け物事に反対し、わがままで、すぐに怒り出すメアリーをからかって、有名なナーサリー・ライムを歌います。

Mistress Mary, quite contrary
How does your garden grow?
With silver bells, and cockle shells,
And marigolds all in a row.

女主人メアリー、正反対
庭の育ち具合はいかが?
銀のベルと、貝殻と、
一列に並んだマリーゴールド

そして、この歌にちなんで、彼女の事を、Mistress Mary quite contraryとあだ名します。

私が知っていているバージョンは上とは多少違って、

Mary, Mary, quite contrary
How does your garden grow?
With silver bells, and cockle shells,
And pretty maids all in a row.

メアリー、メアリー、正反対
庭の育ち具合はいかが?
銀のベルと、貝殻と、
一列に並んだ綺麗な女中

このナーサリー・ライムは、政治的、宗教的な意味が隠されていている可能性があるとかで、ここで言うメアリーは、熱狂的なカソリックで、幾人ものプロテスタントを処刑した、イギリスのメアリー1世(ブラディー・メアリー)の事だとか、やはりカソリックで、打ち首の憂き目にあったスコットランドのメアリー・スチュワートの事だとか、説は上がっているようですが、はっきりはわかっていません。

Mary, Mary, Quite Contraryを聞いてみよう。
フランシス・ホッジソン・バーネット女史、ヨークシャーのムーアの風景などを、上手く描写しているので、ブロンテ姉妹同様、ヨークシャー出身と思いきや、なんと、工業都市マンチェスター出身。しかも、かなり貧しい家庭で、この物語のお屋敷の生活とは、まるでかけ離れた世界。

ヴィクトリア朝のマンチェスターの貧民の生活はひどいものだったらしく、その惨状はエリザベス・ギャスケルの小説「ノース・アンド・サウス」などにも書かれています。

彼女の母親は、子供を連れアメリカに移住。ですから、人生の大半、アメリカで生活。そして、大きな館で、優雅に執筆に従事、というより、母親が無くなった際、一家の大黒柱として金を稼ぐ必要性から、書き始めた人です。

コメント

  1. ロビン、かわいらしい小鳥ですね。
    大きさはシジュウカラぐらいでしょうか。
    今日本版「小公女」がドラマになっています。
    セーラもメアリーと同じくインドにいたのか、
    ドラマではそうなったいるみたいです。

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  2. シジュウカラがどのくらいの大きさか、覚えていないのですが、ロビンは、14,5センチほど。いつも足の細さにはびっくりさせられます。軽量なのでしょうが。

    小公女は、子供時代、短くしたものを読んだきりです、確か。日本では、まだ人気なのですね。お父さんがインドに派遣されていた、とかそんな筋のようですが。当時のイギリスの話、インドが出てくるもの多いですね。

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  3. こんにちは
    秘密の花園 は映画を見ました。とてもよかったです。コッポラの監督だったかしら? あと、原作にも挑戦しました。英語の原書を読むのは学生時代以来のことでしたが、なるべく辞書に頼らずに頑張ってみました。ただ、なまりの部分はどうなんでしょう、階層によって英語もずいぶん違うのですか?それを理解するのがたいへんでした。 作者がイギリスで暮らしてはいなかった、というのは意外でした。ミセスせつこ

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  4. せつこさん、
    秘密の花園の映画、上のアネモネさんにUチューブで全部見れると教えてもらい、私も見てみました。コッポラでした。綺麗に出来てましたね。舞台がヨークシャーなので、階層というより、地元民がヨークシャー訛りを使い、日本で言うと、東北訛りの様な感覚かなと思います。
    作者は、米に渡ったのが16歳くらいの時で、その後も、一時的に、再びイギリスにも住んだようです。

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  5. 初めまして。秘密の花園の原作も美しい映像で、うっとりするDVD版も、忘れられない素晴らしい作品ですね。
    庭や登場人物達の描写も素晴らしいのですが、1番わくわくしたのが、コマドリさんが秘密の花園へと案内をした場面でした。
    こちらの記事を拝見すると、知らなかったことも沢山あって、非常に勉強になりました(*^_^*)どうもありがとうございます✨野鳥が好きになって、3年くらいですが、コマドリさんは憧れの鳥さんです。

    もしご迷惑でなければ、FBにてこの記事を紹介させて頂けたらと思いますが、いかがでしょうか?

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  6. お返事遅れました。訪問とコメントをありがとうございます。

    ロビンは、記事に書いた様、縄張りのためには、凶暴ぶりを見せ、赤い丸のついた布を、縄張り内に下げたものを、ライバルと思い込み、闘牛のように襲い掛かる姿をテレビで見た事もあります。人間にとっては、かなり近くまで寄ってくる可愛い鳥なのですが。野鳥を含めた、自然観測は、精神的にものんびりできる良い趣味ですよね。

    FB、または他のブログで、当ブログからの記事に触れたい場合は、リンク等で、出先がわかるようにしていただければ、構いませんので。

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  7. Mini様
    ジョウビタキのメス並みに、反撃するのですね。愛らしい外見からは、想像できないです。
    はい。今まで、興味がなかったことを悔やむくらい、鳥を見るのも楽しいです(*^_^*)自然はやはり安らぎます。

    リンクの件、ありがとうございます✨
    はい。承知いたしました。そのように、させていただきますね����
    感謝を込めて 桜花音

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    1. ジョウビタキという鳥は知らないです。日本の方が、野鳥も多くの種類が見れそうですね。イギリスの郊外の庭で見れる、一番馴染みの野鳥は、ブラックバード、ロビン、アオガラあたりです。

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    2. Mini様 早速、リンクを張らせていただきました♪感謝です。ありがとうございます(*^_^*)
      https://www.facebook.com/kanon.sakura.5/posts/1936522339750554?notif_id=1547536687239754&notif_t=feedback_reaction_generic

      ジョウビタキは、ヒタキ類の一種で、オスはシルバーグレーの渋い紳士、メスは淑女と言った美女ですが、メスのほうが気が強く、オスも他のメスもすべて追い払ってしまいます。ルリビタキも縄張りが被ることが多いので、ジョビ子さんに追い払われてしまいます。
      恐縮ですが、サントリーの野鳥ガイドのジョウビタキのリンクを張らせていただきますね。ご迷惑でしたら、削除をお願いいたします。
      https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1457.html

      ブラックバード、ツグミン(ツグミ)の仲間なんですね。愛らしいですね。アオガラさん、ググってみたところ、シジュウカラさんの仲間なのですね。綺麗な子ですね。
      うちのベランダでは、冬の間だけ餌台と水を提供していますが、来るのはヒヨドリだけです(^^;可愛い子たちにも来てほしいのですが、なかなかそうはいきませんね(^^;家の近くには、ハクセキレイ、オナガ、シジュウカラ、ヒヨドリがいつも飛んでいます。
      ラムサール条約に登録された葛西臨海公園が近いので、鳥が沢山いる環境です。ありがたいことです。日本で一番小さいキクイタダキも冬だけ見ることができます。

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    3. 私は自分ではFBはやっていないのですが、ページは拝見することができました。記事を気に入っていただけで何よりです。本当に野鳥がお好きなのですね。サントリーサイトは挿絵が綺麗です。

      葛西臨海公園は、私がこちらに住むようになった直後に作られたものだと思います。実家が千葉県で、行きやすい場所なので、次回帰国の際にでも訪れてみます。ブラックバードは、私には、一番思い入れの強い鳥です。他の野鳥たちより体が大きく、餌をやると、家の近くまで寄ってくる上、今来るブラックバードの一羽は、私の手から干しブドウを食べ、野放しペットの気分です。ベランダに沢山の鳥たちが来るといいですね。ハッピー・バード・ウォッチング!

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    4. Miniさま ご確認ありがとうございます(*^_^*)はい。普段はfbは友人まで公開ですが、今回はMini様にご覧いただけるように全公開にしております。はい。大好きです野鳥さん。特にかわいい小鳥さんが好きです。
      はい。サントリーの野鳥サイトと、日本野鳥の会の図鑑サイトは、どちらもそれぞれの良さがあります。

      まあ!そうでしたか。葛西臨海公園は、今感じるのは、まるで元々の自然を生かしたように感じるのですが、実はすべて埋め立てによるスーパー堤防の役割も果たしており、約30年前に作られた公園だそうですね。わたしも結婚してこちらに移住して10年になります。鳥さんに興味がなくても十分に楽しめる素晴らしい公園だと思います。ぜひ、ご帰国の際には足をお運びくださいね☆彡
      鳥情報については、鳥類園非公式ブログが参考になります。
      https://choruien2.exblog.jp/

      ブラックバード、クロウタツグミさん日本ではごくまれに観察されるようですね。
      そうなのですね。わあ!素敵な関係ですね(*^_^*)嬉しいですよね。野鳥とのふれあい。
      うらやましいです♡わたしもうちの餌台に来るヒヨちゃんと仲良くしたいのですが、とても臆病らしく、カーテンが引いてある室内から出ないと、人が動くとすぐに逃げてしまいます。
      日本の公園は軒並み、餌付けは禁止されています(^^;そのため、渡り鳥などが長くとどまらない傾向にあります。
      ありがとうございます(*^_^*)実は、わたしイギリス、アイルランドに強い憧れが子供のころからあります。児童文学の影響ですが。ケルト文化への興味もあります。

      桜花音

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    5. ぎょぎょ、30年、そうですね、そのくらいになりますかね。月日の経つのは、早いものです。東京ディズニーランドが作られた数年後にできたのでしょうね。葛西臨海公園、ぜひ行ってみます。

      ブラックバードもピーターラビットの物語の中で、何回か描かれています。

      以前書いた記事で、うちに来るブラックバードたちとその子育てぶりを書いたもの
      https://mini-post-uk.blogspot.com/2014/05/blog-post_31.html

      牛乳瓶の蓋を開ける技を知っていたアオガラの事を書いたもの
      https://mini-post-uk.blogspot.com/2015/08/blog-post_9.html

      ロビンに関したナーサリーライム、Who killed Cock Robinについて書いたもの
      http://mini-post-uk.blogspot.com/2015/08/who-killed-cock-robin.html

      などがありますので、まあ、暇なとき、気が向いたら、めくってみてください。

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