ハーマンズ・ハーミッツのヘンリー8世君

前回の投稿の「チューダー王朝」でも、触れたように、ヘンリー8世はやたら、テレビドラマ、映画などの色々なメディアの題材になっているのですよね。シリアスなものから、ふざけたものまで。若くハンサムであった頃は別として、アン・ブーリンを処刑した頃からの、彼の人生の後半は、一種の一大悲喜劇なので、アングルによって色々な描き方をすることが出来、それがまた、よく題材として取り上げられる理由でしょう。

「I'm Henry the Eighth, I am」(直訳:俺はヘンリー8世だ、俺は)というユーモラスな歌があります。もともとは1910年に、庶民に、音楽をメインとした娯楽を提供していたイギリスのミュージックホールで大流行した、古い歌なのだそうですが、60年代のイギリスのバンド、ハーマンズ・ハーミッツ(Herman's Hermits)が歌った事によって、再び人気となります。うちのだんなも、いまだにソラで歌えるんですよね、これが。日本での題名は「ヘンリー8世君」(アイム・ヘンリー・ジ・エイス・アイ・アム)。

なんと、この歌、1965年に、アメリカのビルボードで1位の座を獲得しているのです。当時アメリカでは、ビートルズをはじめとした、音楽のブリティッシュ・インヴェイジョンが起こっていたとは言え、「こんなコミックソングのシングルが全米1位だったのかい?」なんて、ちょっとびっくり。

英語の歌詞は

I'm Henry the Eighth, I am
Henry the Eighth, I am, I am
I got married to the widow next door
She's been married seven times before
And every one was an Henry
She wouldn't have a Willie or a Sam
I'm her eighth old man, I'm Henry
Henry the Eighth, I am !

ざっと訳してみると、

俺は、ヘンリー8世だ、俺は
ヘンリー8世だぞ、俺は、俺は
隣の未亡人と結婚した
彼女は以前に7回結婚
過去の亭主はすべてヘンリー
ウィリーやサムなどには手を出さない
俺は彼女の8番目のヘンリー
ヘンリー8世だぞ、俺は!



要するに、結婚した女性の過去のだんな7人が、すべてヘンリーという名で、自分も名前がヘンリーなので、「俺はヘンリー8世だぞ」と、どうしょーもない事を威張っている歌なのです。

ヘンリーと言う名を発音する時、コックニー訛り(東ロンドン訛り)を使って、マイ・フェア・レディーのイライザ同様、ヘンリーのHの音が落とされ、「Enry」(エンリ、というか、エネリと聞こえます)と歌っているところも、優雅で贅沢な王様の世界からほど遠く、可笑しさの上乗せとなっています。

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