犬のナイジェル

禅の表情の犬のナイジェル

先週の初め、朝のラジオで、BBCの人気園芸番組「ガーデナーズ・ワールド」のプレゼンター、モンティ・ドン氏の愛犬、ゴールデン・レトリバーのナイジェルが死んでしまったというニュースが入りました。12歳。急に病気になり、静かに息をひきとったと。視聴者から、多くのお悔やみのメッセージが寄せられているようです。

「ガーデナーズ・ワールド」の放送は、ヘレフォード州にある、モンティ・ドンの自宅の広大な庭からの放映がメインになっており、いつのころからか、ナイジェルは、番組の大切な要素の一つになっていた感じです。

最初は、特に犬を一緒に撮影するという企画は無かったそうですが、とにかく、ナイジェルは、庭園内を手押し車を押して移動するモンティを追って、尻尾を振りながら、雨の日も晴れの日もついて回る。モンティが、種をまいたり、新しい苗を植えたりしている間は、そばで、のてっと横になって日向ぼっこをしている姿、よだれと土で薄ら汚れたテニスボールを、何度も何度も植木鉢の中に、くわえては落とす姿の愛らしさから、その人気と知名度が上昇。制作側は、偶然映ってしまっていたという状態から、ナイジェル人気のために、必ず映さなければ、という状態に。

2年前に、我が家のキッチンの拡張工事をしてくれた大工さんの名前がナイジェルでしたが、「ああ、モンティ・ドンの犬の名前と同じか」なんて思ったのを覚えています。こうした、ごく普通の人の名前を、犬の名前に付ける人がわりといますが、友人が、ある日、道を歩いていて、後ろから「デイブ!デイブ!」と呼ぶ声がする、周りには自分以外に人がいないし、「デイブ君」と勘違いされて、呼ばれているのか、と、とりえあえず、振り向いてみると、そばを走っていた犬の「デイブ」を呼んでいたのだとわかって、こけたようです。

「動物と子供と一緒にテレビに出るな、食われるから」と、よく言われますが、まさにその通りで、「ガーデナーズ・ワールド」を見ていて、ナイジェルが画面に登場しないと、「あれ?」って感じでした。一昨日の金曜日に、初めて、ナイジェルが死んでしまってからの放映があり、やっぱり、なんか物足りなく、うすらさびしいのですね、これが。番組の最後に公式に、ナイジェルは死にました、のアナウンスがあり、ちらっと、在りし日の姿を映しているのを見て、思わず、じわっ。モンティ・ドンは、他にも犬を数匹飼っているようで、番組には、別のゴールデン・レトリバーのネリーも登場していたのですが、犬もやはり個性というものがそれぞれ違うので、まるまる、代わりにはならないのです。それはそうですよ、野生の鳥でも、よく観察していると、性格が違うのがわかりますから。飼い主いわく、ナイジェルは、「少々お馬鹿で、何とも言えぬ純粋さがあった。」

「馬鹿ほど可愛い」などという言葉もありますが、これは、どうしてでしょうね。もともと、ここで言う、馬鹿は、天真爛漫、ほのぼの、おおらか、愛情表現の率直さ、かけひきの無さ、そういう要素が、なぜか「馬鹿」と表現されているだけかもしれません。

昨今、過去将来に気を揉んで、ストレスや心の病にかからないよう、「現在の瞬間を楽しもう」という事がよく聞かれますが、この犬、まさに、それを体現していた感じ。ナイジェルが、半目をつぶり、「禅!」とでも言わんばかりの表情で、時に身を任せ、ガーデンを眺めている様子から、癒しパワーを受けていた視聴者も、沢山いたかもしれません。モンティ自身、うつ病に悩んだ経験があるとやらで、彼を救ったのが、ガーデニングと、犬、特にナイジェルであったそうです。

ナイジェルは、一生を送った庭園内に、多くのテニスボールと共に埋葬されたそうです。なんと、英語のウィキペディアには、ナイジェルのエントリーもあるのです。そのエントリーには、括弧して(dog)と書かれているのには、笑ってしまいました。

コメント

  1. 夫がこの番組のファンで「ナイジェルが死んじゃった」と言っていました。
    どこのナイジェル?と思ったものです。
    「モンティの…」
    安らかにナイジェル・・・

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    1. 番組ファンには、寂しいニュースですよね。

      モンティは、かなり愛犬に場面を食われていたのでしょう、ナイジェルがいないガーデナーズワールドは味気なくなりました。

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