池の金魚の悲劇

良い気候となってきました。昨日は、午前中、前庭の草むしりをしてひと汗かいた後、裏木戸から家へ戻る時、庭で日向ぼっこをしながら本を読んでいたお隣の女性を見かけ、あいさつ。

この隣家の庭には、約1メートルくらいの高さで、長方形をした小型の、イギリスの風呂おけを浅くしたような池があります。彼女は、この池のすぐわきの椅子に座っており、「私たちの金魚が・・・」と、長らく美容院に行っていないため爆発してきている髪の毛を手で押さえながらいわく、「1匹だけ残して、全部、かもめに食べられちゃったの!」

この言葉に、一瞬、映画「ワンダとダイヤと優しい奴ら」(A Fish Called Wanda)の一場面で、ケビン・クライン扮する性悪のオットーが、マイケル・ペイリン扮するケンが大切に育てていた熱帯魚をつまんで、ちゅるちゅるっと飲み込む映像が頭をよぎりました。お隣さんが留守の時、私も頼まれて朝晩餌をまいたことがある、赤い小さい金魚たちが、カモメの口の中へ消えていったのか。あーあ。

「お宅の反対側のお隣も池あるでしょ?大丈夫かしら?この前、カモメが、塀にとまって、あの家の庭のぞき込んでるの見たわ。」と彼女は続けて言いました。うちの反対側の隣人は、かなり大きな深い池を持っていますが、飼っているのは、でかい鯉。食べがいはあるかもしれませんが、金魚のように一飲みでちゅるっとはできないですね。それに、池の上には、金網をかぶせてあったはずだし。

そう、最近、やたらカモメが多く空を徘徊しているのには気が付いていました。それも、いつもより低空を飛んでいる感じで。新型コロナ感染に伴う、イギリスのロックダウンのため、海岸線の町やリゾートの人出がなくなり、今まで、そういった場所での、食べかけで捨てられていた、フィッシュ・アンド・チップスなどの、人間のおこぼれを頂戴していたカモメたちが、食べるものが減少して、内陸までやって来ているのではないかという話です。おそらく、同じ理由から、冬季は、カモメは比較的多いのですが、この季節でこれだけ見るのは、やはりロックダウンの影響でしょう。街のタウンセンターなどでも、くずかごなどに人間の食べかすが無くなっているので、郊外の庭の池までのぞき込んでいるのか。カモメは何でも食べますからね。そういえば、例年、あまり見ないカラスも庭に到来する数が増えている気がします。

餌を求める怖いカモメはともかく、巷に人がいなくなったため、自然動物は、びくびくする必要なく、行動範囲を広めて、色々な場所に出没し始め、また、車の数も減っているため、排ガスの量が減り、都会の空気は少しきれいになり、また、道路で轢き殺されるハリネズミの数も減っているようです。

バタフライ・エフェクト(バタフライ効果)という、蝶が羽を動かすだけの小さな運動が、予想もしなかった様々な影響を及ぼしていく事を表現する言葉がありますが、今回のコロナ騒ぎで、こうした一見、何の関係もないような現象が、あちこちで起こっているのでしょう。もっとも、コロナは、蝶の羽ばたきよりも、もっとパワフルな大波の感じはありますが。あらゆる事象は、何かしらの因果関係でつながっているものです。

とりあえず、お隣さんは、最後の一匹の金魚を守るため、城壁のごとく、池の周りの縁に、カモメが舞い降りることができないように、壺やら、置物やら、彫像やらを並べて囲んでいました。

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