コロナ時代の死と葬式

うちの旦那が所属する、隣村のテニスクラブの知り合いが、先日、癌で亡くなりました。新型コロナ騒ぎが始まる前から、病院に出たり入ったりしており、経過はかんばしくはないと思われていた上、コロナの感染が蔓延したため、予定されていた治療が延期となり、ずっと自宅療養をしていた人です。

イギリスのロックダウンが始まる直前の、テニスクラブのクラブ・デー(メンバーが気ままに集まってプレーする日)に、彼はクラブ・ハウスに現れて、プレーは一切せずに、メンバーと話をしたり、みんながプレーするのを、ベンチに座って眺めてから、帰って行ったという事で、うちの旦那が彼に会ったのもそれが最後です。「あれは、もう治らないし、現状ではしばらく治療も始まらないと諦めて、別れのつもりで、やって来たんだと思う。」と、旦那は、その時から言っていましたが。

現在、葬式も、出席できる人員に制限などもかかり、ささやかなものとなっています。彼の奥さんから、葬式の日の連絡が回ってきて、「参列は家族だけとなりますが、もしよかったら、10時半に、テニスコートの近くの通りを、棺を乗せた車が通るので、道端にテニスラケットを持って、ソーシャルディスタンシングのため、間隔を取って並んで、見送ってやって下さい。」そこで、だんなは、テニスラケットを持って出かけ、他のクラブメンバー30人くらいと、3メートルづつほどの間隔を取り、道の両側に立って、棺が通る時に、ラケットを振って来たようです。棺を待っている間、他の車を運転していたドライバーが止まって、「何やってるの?」と聞かれたと言っていました。

もともと、葬式というのは、生きている人間のためのもの。こういう、あっさりとした見送り方もいいのではないかという気がします。棺を乗せた車は、そのまま樹木葬の場所へと向かったそうです。最近は、樹木葬を選ぶ人は増えてきている模様で、旦那も、私も、樹木葬でいいねと言っています。

彼も、ある意味では、コロナ騒動の間接被害者の一人とも言えます。この他に、旦那の故郷の友達のお母さんも、先日、おそらくコロナ感染で自宅で亡くなってしまいました。彼女は、旦那が育った通りに住む、当時最後の住人だったとかで、旦那は、「これで故郷との絆もかなり細くなった気がする。」

彼女の場合は、3月中旬からすでに咳が止まらず、コロナの疑いがある場合は連絡する事となっている111に何度か電話しても、自宅待機を促されるばかり。症状が悪化したので、救急車を呼んでも、病院には連れて行ってもらえず仕舞い。ついに、自宅で、呼吸困難と血の混じった咳をしながら、亡くなってしまったそうです。

政府は、「医療機関は、余裕を残しており、切迫した状況にならずに済んだ」などと自画自賛していますが、切迫状況にならないはずですよ、入院させてもらえないのだから。そして、彼女のように、入院できずに、自宅、または介護施設で亡くなった人たちは、コロナかどうかのテストも受けていないので、イギリスのコロナ死者の公式の数には計上されていません。イギリスは、3月半ばにして、コンタクト・トレーシング(接触者の追跡作業)も打ち止めているので、彼女が、どうやって感染したか、またその後、誰と接触しているかは、まったく調査されていません。イギリスでのコロナの実際の死者数は、公式数をはるかに上回るものではないかと言われていますが、身近でこういうことがあると、「確かに、そうかも」と思います。

ロンドンに新しくできた巨大臨時病棟ナイチンゲール・ホスピタルは、イギリスの他の町にも作られ、彼女の住んでいたヨークシャーのハロゲイトにも、できていました。実際、彼女の家から車で10分もかからないのだそうで、しかも、ほとんど使われておらず、がらがらであると言います。まったく、何のために作ったのか理解ができません。いつ来るかもわからない、患者の津波のために開けておくというのか?また、作ったはいいが、軽症以外の患者には、設備が足りず、役に立たないという噂も、それだけのベッドの管理ができる人員も足りていないとい噂もあります。

彼女は、私も一度会ったことがあり、品の良い、やさしい老婦人でした。ブレグジット騒動の起こった時は、90歳を超す身でありながら、町中で、リメイン(残留)派キャンペーンに参加していたそうです。ハロゲイトは、彼女の様な住民が多かったのか、残留派が勝った町です。

「テイク・バック・コントロール」のスローガンで、ブレグジット派を勝利させた、この国の道化師首相は、東洋の各国や、イタリアが、コロナ対策で大わらわの時、コロナなんて怖くないと言わんばかりに、病院を訪問して、握手をしまくっていた。(この間に、彼、もしかしたら、他人を感染させている可能性もありますね。)何の対策も、何の考えもないまま、気が付くとヨーロッパ最悪のコロナ感染国・・・当たり前でしょ。コントロールを取るどころの騒ぎではない状態です。それなのに、まるで、自分をチャーチルだとでも思っているように、戦時中のような果敢な言葉を使ってスピーチしていますが、それも、鼻につきます。こんな事でも、ドイツに対するライバル意識が隠せぬ感じもし。また、責任を取るのが怖いのか、ずぼらなのか、すべてにおいて曖昧で、具体策を出すのも遅い。それでも、首相は、感染後、症状が悪化すると、即効で入院、治療を受けさせてもらえますからね、こうして自宅で亡くなってしまっている人たちと違って。

民主主義の世界では、所詮、政府やその方針は、その国の国民のメンタリティーを反映するに過ぎない、などと言いますが、上記二人とも、ボージョー(ボリス・ジョンソン)には投票していないので、とばっちりを食ったようなものです。現在の政権が、あと4年以上も続くと思うとげんなり。せめてもの慰めは、今になって、やっと、野党の労働党が、保守党と互角に戦えるような、まともなリーダーを選出してくれたことくらい。総選挙の前に、この党首交代があって、現政権が負けていたら、イギリスも、ここまでひどくなっていなかったかもしれない・・・まあ、そういう事を言いだすときりがないですが。

彼女の葬式も、おそらく、二人の子供だけの静かなものとなるようです。最後は、コロナのために、前倒しになってしまったのが残念ですが、良い人生を過ごしたのではないかと思います。外出が思うようにできなくても、家にいることが多くても、充実した日々を過ごしたいものです。

コメント

  1. 今朝イギリスの知人から、コロナのワクチン開発の目処が…の報が入りました。希望の光が見えて、おめでとうございます!日本も感染者数は激減しているとはいえ、まだ大都市圏は自粛解除に至らず、マスコミは第二波が来る来ると煽り続け、全く生きた心地がしません。コロナ鬱という言葉も生まれているくらいです。1ミリの希望にもすがりたいのは、地球人全員の今の心境では?

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    1. イギリスでは、試験的ワクチンを即効で大量生産できる体制を整えたというだけで、希望の光は、まだ、本当に希望の段階。空頼みになる可能性もあるようです。実際に、試験中のワクチンが効くのか、本当に安全なものができるのかというのも、現段階では?なので。今、各国、各研究所、必死に効果あるワクチン探索しているでしょうから、日本も含めた他の国で先に成功する可能性もありますね。

      コロナ鬱と、コロナ太りに注意して、踏ん張りましょう。比較的若くても、太りすぎの人は重症になりやすいようで、それも、イギリスとアメリカの死者が多い理由のひとつのようです。ますます運動と食生活には気を付けないと。

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