ロックダウンの中働く人たち

一昨日、玄関を誰かが、とんとんとノック。開けると、ドアの入り口に、小さな小包が置かれ、ポストマン(郵便配達員)が、ドアから2メートルくらい離れて立っていました。「ハロー、小包そこに置いたから。」と彼。小包を拾い上げ、「サンキュー!キープ・セーフ!」と私、彼は手を振り、「サンキュー、ユー・トゥー。」と去って行きました。ロックダウンが始まってから、外出はほとんどできないため、本を注文する人が増えているようですが、私もその一人。玄関の郵便受けに入りきらない厚さだったヒラリー・マンテルの「ウルフ・ホール」の小包を届けてくれました。いつもだったら手渡しなのが、コロナがはびこる、こんなご時世ですから、彼も気を使って、ソーシャルディスタンシングをして、私との間隔を取ってくれました。郵便局からも、そういう指示が出ているのかもしれません。

うちに来るポストマンは、記憶に残る限り、ずっと同じ人で、イギリスのコメディアン、ヒュー・デニスに似ているので、私とだんなは、彼の事を陰で、ヒューと呼んでいます。周辺を散歩している時なども、時に、彼が、手紙を持って歩き回っているのに出くわし、遠くでも手を振ってくれるお馴染みさんです。イギリスがロックダウンになってからも、彼の様な、社会を動かす上で無くてはならない、いわゆる「キー・ワーカー」は、仕事を続けています。

他のキー・ワーカーは、当然、イギリス医療機関のNHSで働く人員、また医療機関を支えるその他の会社の人員、介護師、薬剤師、スーパーや食料品店関係で働く人員、農業関係者、配送員、電気・ガス・水道・下水などに関わる仕事、教師、公共交通関係、警察、軍、政治家、地方自治体の人員、ゴミの収集員などなど。学校は現在しまっていますが、こうしたキーワーカーの子供たちは受け入れる体制を取っていて、先生をしている、だんなの幼馴染は、シフトで時々、キーワーカーの子供の指導に出勤しています。キーワーカーと正式にみなされていない人たちでも、まだ家から出て働いている人たちはいるわけですが。

前回の記事に書いた様、昨今、医者や看護婦さんの感染のリスクはかなり高く、仕事がほぼ命がけとなっていて、気の毒である上、畏敬の念を感じているのですが、スーパーのレジなどで働いている人たちの中でも、不安を感じている人も多いようです。スーパーによっては、客とレジの間に、透明のバリアをたてたりしている店もありますが、品薄のためか、一般にレジ係にマスクは配布されておらず、入れ替わり立ち代わり、何人もの人たちが、無防備の自分の前に立つわけです。一日一体、何人の人間を相手に接客しなければならないかわかりませんが、感染の確率はかなり高いでしょう。

我が家は、現在は、近くのお肉屋さんに、1週間から10日に1回の自宅配送をお願いしていて、肉類は、スーパーに行かずとも入手できるようになり、野菜果物類も、いざとなれば、地元のマーケットで屋台を出していた人が配達してくれると言っています。が、他のもの、特にミルクとパンは、週1回でもスーパーに行かねばならず、そんなに回数が少なくても、スーパーに足を踏み入れるのは嫌ですからね。お隣さんも、昨日、「スーパーは本当にできれば行きたくない」などとこぼしていました。何が嫌だって、内部にいる親子連れが、咳をしている子供を連れていたり(こちらは自分が風邪ひいていてもマスクしませんので)、また若めの男性などは、コロナなどどこ吹く風で、平気で人に接近してきたり、2,3人で大声上げて喋っていたりと、普段と一切、行動を変えていない人たちに時に遭遇してしまうのが嫌です。

今は、各スーパー、入り口や、レジの前に2メートルおきに、床にテープを張ってあるところが多く、混んで列ができている時は、2メートル間隔で並ぶことになっています。私は、比較的空いている時間帯を見計らって行くので、あまり待ったり、並んだりはしないのですが、なんだか、買い物してても、「早く出たい。」という気持ちが先立って、落ち着かないのです。ついでながら、ロックダウン開始直前と直後に品薄になっていた食品類も、徐々に顔を出し始めています。でも、どういうわけか、いまだトイレットペーパーは、一つも見当たりません!あとは、解熱剤のパラシタモルですね、一切消えてしまっているのは。薬局に行っても入手が難しいようです。

ロンドンやバーミンガムなどの人口密集地の、一部スーパーでは結構、内部に入るまで並んだりするんでしょう。特に、ガラの悪い地域のスーパーだったりすると、秩序も取れない事もあるかもしれません。先日、バーミンガム周辺のスーパーで働いている女性が、ラジオでインタビューを受けており、「スーパーの外で、2メートル間隔で並ぶように指示を出す係をしていたら、俺は俺の立ちたい場所に立つんだ、お前は何様のつもりだ、と罵られたり、嫌な顔をされました。感染も怖いところへもってきて、そんな扱いを受け、もう落ち込んで、働きに行きたくないけど、生活しなければならないから、仕方がない。」と言っていたのを聞いて、こっちまで泣きそうになりました。こういう、大変なときに、いちゃもんつける奴、いるんですよね。「お前こそ、何様だと思ってるんだ!」という感じです。スーパーなどは、今、市民生活のほんとの要ですから、そこで働く人はいたわってあげて当然なのに。

また、風邪の症状が出た場合は、セルフ・アイソレートする必要があるため、キーワーカーの間でも、人員が一概に少なく、ゴミの収集なども、回数を減らさざろうえない地方団体も増えています。うちも先週は、庭の葉っぱや枝などを収集する緑のゴミの日だったのですが、「人出不足で、しばらく緑のゴミは回収できません」の通知が出ました。こうした事にも、切れる人がいるらしく、場所によっては、住民から、唾を吐きかけられたり、罵られたりするゴミ収集人もいるのだそうです。

そんなどうしょーもない人間がいる一方、ボランティアで地域の人を助けようという頼もしい若者もいるわけで。うちへの肉の配送をしてくれる肉屋さんでは、こうしたボランティアの女の子が働き始め、彼女が、できるだけ家にいなければならないリスクグループのうちのだんなのような者がいる家庭への注文の取り付け作業と、宅配の手配をしてくれています。配達してくれたのも、ボランティアのおにいちゃん。スーパーのオンライン宅配制度が、需要の急増で爆発状態の今、これは本当にありがたいのです。

ポストマンのヒューにしても、その他キーワーカーの人たちにしても、ボランティアにしても、感染しないでくださいな。頑張ってくださいな。ほんと、感謝してます。

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去年の今頃は、何をしていたのか、と写真をめくり返して見ると、一番上に載せた写真に行き当たりました。隣村にある小さなカフェの内部。だんなと早めのランチをここで取った時のものです。うちからウォーキングをして、隣村まで歩き、ここでお茶か食事をして引き返す、という事を何度かやったことがあるのですが、小さく可愛いカフェです。コロナの影響で、おそらく、今は営業はしていないのでしょうが、何とか生き延びて、この騒ぎの後、また復活してくれるでしょうか・・・。

コメント

  1. とうとう日本も、大都市圏内での緊急事態宣言が出され、自粛がより強化されました。イギリスと違って、2枚のマスク配布以外は、何の保証の具体策が起きない中での始まりで、中小企業や小店舗の経営者は悲鳴を上げています。どこの店が、経営者が最初に倒れるか…ロシアンルーレットの世界に閉じ込められている気分です。入手不可のマスクはあるだけを洗濯して使い、手造りを始めている方も居られます。まったく酷い悪夢です。早く目覚めたいですね、世界はとっくに春なのに…。

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    1. 検査数も少ない日本が、なぜ、いつまで平常生活を続けていけるのか、政府は何をしているか不安でした。隠れコロナが沢山いるのだろうにと。最初はイギリスも、飲食店などには行くなと言うだけで、強制閉鎖宣言をしなかったため、パブやレストランは自主的に閉めては保険金がおりないと、恐怖していましたが、その後、強制閉鎖。経済は大変なことになるでしょうが、感染者と医療崩壊を抑え、ワクチンができるまで踏ん張るしかない・・・。イギリスより感染者がずっと少ないうちにロックダウンを始めたオーストリアは、ロックダウンを緩める話を始めています。とにかく、健康には気を付けて下さい。

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  2. 初めまして。洋子と申します。

    コロナ禍のためここ2週間外出しないで籠っています。世界地図も真っ赤に塗られ、それぞれの国それぞれのお人のご苦労が思われますが、それにつけても日本の忖度内閣はなにをしているのでしょうか。歯痒い限りです。

    実は今日こうしてⅯiniさんとお話させて頂くきっかけはワーズワースの水仙です。

    今から何年前になるでしょうか。友人4人とレンタカーで嵐が丘や湖水地方を訪ねてワーズワースに出会いました。黄色いラッパ型の水仙が咲くといつも思い出すのですが、今年はコロナの足止めで時間があり過ぎるぐらい在りますので、取りこぼしの歌稿の整理をしていました。

    大した事もないまま30年好きな短歌に関わっていますので。

    二階の部屋から見下ろすと、藤棚に薄紫のつぼみが思いっきり咲ける日の準備をしています。    

    一日も早くコロナ禍の去りますように。お大事にお過ごしくださいませ。

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    1. 洋子さん、はじめまして。

      コロナによる良いことなどは無いのでしょうが、ただ、家に籠って、出歩いても周辺だけ、という状態になってから、身の回りの小さな自然に、今まで以上に気が付く、注意を払う人が増えたという話を聞きます。特に今から、初夏に向けてのいい季節、短歌の作り時かもしれません。こちらは、水仙は終わり、庭のリンゴの花が咲きかけています。藤を眺めるのは、今年はあきらめかもしれません。

      イギリスは、このままでは、ヨーロッパで一番感染打撃のひどい国になりそうだという有り難くないニュースが昨日、入っていました。他の国が騒いでいる時に、何もせずに、のほほんとしてましたから。

      いつかは終わる、いつかは落ち着くと、心に唱えて、とりあえずは、小さな自然をながめながら、できるだけ、精神のバランスだけは保っていきましょう。良い作品を作ってください。

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