壁に耳あり障子に目あり
ハンプトン・コート宮殿内グレート・ホールの天井 |
「eaves」とは屋根のひさし、または建物の突き出た部分の事を指す言葉で、昔は、eavesdropというのは、屋根のひさしから落ちる雨水、またはそうした雨水が落ちる地面、の事であったと言います。そこから、家の外壁に近い、屋根のひさしから雨水したたるような場所(eavesdrop)に立ち、内部での会話を盗み聞きする人をeavesdropperと呼ぶようになり、そのうち、盗み聞きの行為自体を指してeavesdropと言うようになったそうです。まさに、壁に耳ありです。
天井に掘られている人間の頭 |
これは、ヘンリーが、「我の治世に対して、良からぬ噂話をする者、謀反を企てる者、反対意見を言うもの、心せよ。我は、全て見聞きし、お前たちが何を考えているか、知っておるのだぞ。」と、宮廷人たちに知らしめるためのものだったという話です。
エリザベス1世、「虹の肖像」部分 |
現在は、監視カメラはあちこちに設置されているし、プライベートのメールや携帯のテキストに至るまで監視される可能性があり、個人の言動を見張る、サーベイランス社会などと言われますが、これは今に始まったことではないわけです。チューダー朝の有力者によるスパイ活動は、日常茶飯事であり、トマス・モアが宗教上のイデオロギーを異にした敵、ウィリアム・ティンダルを、異国の地で逮捕できたのも、こうしたスパイ活動のたまもの。当時は、特に、一般市民の人権など糞くらえであったので、謀反人と見られ、捕らえられると、否応なく処刑されてしまいましたし。
政府の安泰と、国民の思想言論の自由の境界線は難しいところです。政府が、国の安全のために、あなたのメイルやテキストを読むことが出来るというのをどう思うか?と聞かれ、「私は何も、読まれて困る様な事を書いてないから、社会の安全のためには、別に構わない。」と言う人もいれば、「そんなのは、プライバシーの損害だ。何が何でも反対すべき。かつての東ドイツじゃあるまいし。」という意見もあり。
思うに、昨今、ひそひそと秘密の内容の話を交わしたいときは、インターネットなどのテクノロジーを使わず、昔のように、手紙でやりとり、読み終わったら焼いたりした方が、案外、見つからなかったりするかもしれません。政府が郵便局に指図して、ポストに入っていた手紙の封を全部開けて、何か良からぬこと書いてないか読んでから、また封をして宛先に送るなどと手間のかかる事やっていられないでしょうから。
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