誰が殺したクック・ロビン(Who killed Cock Robin?)

Who killed Cock Robin?
I, said the Sparrow,
With my bow and arrow,
I killed Cock Robin.

Who saw him die?
I, said the Fly,
With my little eye,
I saw him die.

Who caught his blood?
I, said the Fish,
With my little dish,
I caught his blood.

Who'll make the shroud?
I, said the Beetle,
With my thread and needle,
I'll make the shroud.

Who'll dig his grave?
I, said the Owl,
With my pick and shovel,
I'll dig his grave.

Who'll be the parson?
I, said the Rook,
With my little book,
I'll be the parson.

Who'll be the clerk?
I, said the Lark,
If it's not in the dark,
I'll be the clerk.

Who'll carry the link?
I, said the Linnet,
I'll fetch it in a minute,
I'll carry the link.

Who'll be chief mourner?
I, said the Dove,
I mourn for my love,
I'll be chief mourner."

Who'll carry the coffin?
I, said the Kite,
If it's not through the night,
I'll carry the coffin.

Who'll bear the pall?
I, said the Wren,
Both the cock and the hen,
We'll bear the pall."

Who'll sing a psalm?
I, said the Thrush,
As she sat on a bush,
I'll sing a psalm."

Who'll toll the bell?
I, said the Bull,'
Because I can pull,
I 'll tall the bell."

All the birds of the air
Fell a-singing and a-sobbing,
When they heard the bell toll
For poor Cock Robin.

「クック・ロビンを殺したのは誰?「私」と、すずめが言う。
「私の弓矢で、私がクック・ロビンを殺した。」

「ロビンが死ぬのを見たのは誰?」「私」と、ハエが言う。
「私の小さな目で、私がロビンが死ぬのを見た。」

「ロビンの血を受けたのは誰?」「私」と、魚が言う。
「私の小さな皿で、私がロビンの血を受けた。」

「経かたびらを作るのは誰?」「私」と甲虫が言う。
「私の糸と針で、私が経かたびらを作る。」

「ロビンの墓を掘るのは誰?」「私」とフクロウが言う。
「私のつるはしとシャベルで、私がロビンの墓を掘る。」

「牧師を司るのは誰?」「私」とカラスが言う。
「私の小さな聖書で、私が牧師を司る。」

「事務を司るのは誰?」「私」とひばりが言う。
「暗がりの中でなければ、私が事務を司る。」

「松明を掲げるは誰?」「私」とムネアカヒワが言う。
「今すぐにでも持って来て、私が松明を掲げる。」

「喪主を司るのは誰?」「私」とハトが言う。
「愛する者を悼む私。私が喪主を司る。」

「棺を運ぶのは誰?」「私」と鳶が言う。
「夜の最中でなければ、私が棺を運ぶ。」

「棺布を運ぶのは誰?」「私」とミソサザイが言う。
「私たち夫婦両方で、私たちが棺布を運ぶ。」

「賛美歌を歌うのは誰?」「私」とツグミが言う。
藪に座りながら、「私が賛美歌を歌う。」

「鐘を鳴らすのは誰?」「私」と雄牛が言う。
「紐を引くことができるから、私が鐘を鳴らす。」

空の鳥たちは、ため息をつき、すすり泣いた。
可愛そうなクック・ロビンの弔いの鐘を聞いた時。

・・・とかなり長いナーサリー・ライム(子供が習う韻を踏む詩)の、「Who killed Cock Robin?」です。

日本語では、「Cock Robin」をクック・ロビンと訳すのが主の様ですが、英語の発音は、スペルの通りの、「コック・ロビン」。鳥の事を指して、コック(cock)と言うと雄の事で、雌の鳥はヘン(hen)。ニワトリだけでなく、他の鳥にも当てはまります。ですから、すずめに殺されたのは雄のロビン(ヨーロッパコマドリ)。「sparrow」と「arrow」、 「fly」と「eye」、 「fish」と「dish」の様に、生き物の名前と、同じ韻(ライム)を踏む言葉が、必ず次の行に含まれています。

ナーサリー・ライムは、古いものになると、その時あった歴史的事項が、背後に隠されている事があるようで、其々のナーサリー・ライムに、これには、実はこういう隠れた意味がある、などの説がいくつか上がっている事があります。クック・ロビンの場合は、この殺されてしまったクック・ロビンは、シャーウッドの森で活躍した、伝説の義賊ロビン・フッドの事だという話もあり。単純に、ロビンと言う名前が同じである事、弓矢という言葉からの連想、そして、森の仲間たちがその死を悼んだと言うことから来ている説です。

その他にも、征服王ウィリアムの息子、ウィリアム・ルーファスがニュー・フォーレストでの狩猟の最中に、弓で刺されるという謎の死を遂げた事を歌ったものだとか、イギリス最初の首相と言われるロバート・ウォルポールのあだ名が、「クック・ロビン」であったため、ウォルポール政権の失脚を歌う政治的ライムだなどとも言われています。

ロビン・レッドブレスト(Robin Redbreast、赤胸ロビン)と愛称で呼ばれるよう、ロビンの胸は、弓に刺されて血が滴り落ちるイメージにはあっています。基本的には、非常に縄張り意識が強い鳥で、特に繁殖期の雄のロビンに、赤い丸の描いてある布を見せると、それを他のロビンと見て攻撃してくるのだそうです。赤を見て興奮する闘牛さながら。ちなみに、上の写真のロビンは、先日、お昼を食べたパブの庭にいたもので、私がご飯にぱくつく様子を、じっと見ていました。

どうしてロビンの胸が赤いかというのにも、伝説があり・・・まず、処刑されるべく、十字架を運んでゴルゴダの丘へむかうキリストの側へ、ロビンが飛んで行き、くちばしで、キリストの額にささっていた棘を抜いたのですが、その時にキリストの血が、ロビンの胸に滴り落ちて赤く染まった・・・という説があります。十字架上のキリストの血を拭い取ったために赤くなった・・・という話も。いずれにせよ、ロビンの赤胸はキリストの血であるということ。よって、このクック・ロビンのナーサリーライムも、キリストの死に関するもの、と読む人もいるようです。

また、ロビンの胸が赤いのは、実は、キリストが死んだときでなく、厩で生まれた時に由来するという話もあり。厩が寒かったため、ロビンが、幼子イエスが寒くないよう、厩内のくすぶり消えそうな残り火を、必死で翼であおぎ、そして、小枝をその中に落としたため、勢いよく燃え上がった炎で、胸にやけどをしてしまったのだと。暖かくなった厩で、マリア様が、「何と感心な鳥であることよ。これからずーっと、その赤い胸が、あなたの果敢な行為の象徴でありつづけるように。」とのたまったとか。以来、キリスト生誕の際の貢献者として赤い胸を誇らかに見せている・・・という事。ですから、ロビンは、クリスマス・カードにも、多々登場する鳥なのでしょう。

ロビン・レッドブレストの伝説の参考サイト:
http://www.britishbirdlovers.co.uk/articles/the-legend-of-robin-redbreast

「Who killed Cock Robin?」に関しては、私、個人的には、ロビン・フッド伝説のイメージが合う気がします。

コメント

  1. 全文拝見いたしました。なるほどと感心するばかりです。なぜ胸が赤いのか以外はウィキペディアにも載っているのですが、それ以降のことは載っていなかったので、非常に興味深く拝見いたしました。
    また、「誰が殺したクックロビン♪」と言う歌があるのですが、わたしも最近知ったばかりですが、実はパタリロというアニメの歌だそうです。全く知らないまま、節だけ知っていました。
    以下ウィキペディアより引用
    漫画作品での引用も見られる。例えば、作中でマザー・グースの歌詞が随所に引用される萩尾望都の『ポーの一族』中の1篇「小鳥の巣」 (1973年発表) は、この詩を下敷きとした作品である。また、魔夜峰央の『パタリロ!』作中にも、「クックロビン音頭」なる踊りが登場する
    引用終了

    深いですね。日本でコマドリさんを見つけるのは、かなり難しいことです。初夏の亜高山帯の笹薮にいることが多いそうです。なかなか藪からは出てこないと聞きました。なので、日本の野鳥好きとしては、コマドリさんは憧れの鳥さんです。日本と欧米では大分事情が異なりますね。日本で、ちょくちょく見られるのは、カラス、ハト、雀が多いですね。ハクセキレイも多いですが、鳥好きでなければ、おそらく気がつかないでしょう。ヒヨドリ、ムクドリも多いのですが、やはり鳥好きでなければ、見逃してしまうでしょう。

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    1. ポーの一族は好きでしたので、今でも手元にあり、全作読みましたが、パタリロで、知っているのは、この「誰が殺したクックロビン」の歌だけです。日本の漫画というのも文化ですね、今年の春はロンドンの大英博物館で、日本漫画展が開催される予定です。

      日本は、カラスが沢山集まって鳴いている場所が多いなと、帰るたびに思います。スズメはこちらでは数が減っているようで、庭ではあまり見かけなくなりました。セキレイは、街中をちょこちょこ歩いているのをよく見る鳥です。日本のハクセキレイとは多少種類がちがうようですが。英語では、尻尾を上げ下げしながら歩く様子から、Wagtail(ワグテイル、尻尾ふり)という名で呼ばれています。

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