英国ロイヤル・ウェディングでのスタイルあれこれ

イギリスのロイヤル・ウェディングは、ブランドとしてのイギリスを世界へ売り込むもってこいのショー・ケースです。「伝統があり、そしてモダンでもあり、こんなに親近感のある将来の王と女王がおり、世界の皆さん、観光においで！イギリスの物を買ってね！」と。確かに、今回のウェディングの影響で、海外からの観光客の数の上昇は、すでに予想されているようです。そして、来年はオリンピックもありますし。

そういうイメージアップの意味でも、大成功のウェディングでした。伝統的なウェストミンスター寺院での式典から、バッキンガム宮殿からクラレンス・ハウスまでの短距離を、結婚したての二人が、風船を後ろにつけたアストンマーチン（Aston Martin）を走らせる小粋な演出まで、それは、良く考えてアレンジされて、ショーとして十分楽しめました。

このチャールズ皇太子から借りたというアストンマーチンは、DB6 Volante（ＤＢ６　ヴォランテ）というモデルで、１４０台しか作られなかったというコレクターズ・アイテム。ボンド映画にも登場するＤＢ５に、形は似ています。チャールズ皇太子の２１歳の時の、女王からの誕生日プレゼントだったという事です。エコ活動に余念の無いチャールズ皇太子の事、エンジンを改造して、英国産の余剰ワインを使用したバイオ・エタノールで走るグリーンな車。

また、これはうちのだんなも、テレビのコメンテーターも一人言っていたのですが、ダイアナとチャールズの結婚式の際は、ダイアナが、新しい血を求めた王室への生贄の様な気がして、今ひとつ気分がよくなかったが、今回は、大学で知り合い長く付き合った二人の結婚で、自然の成り行き的おめでたさがあったのです。

「グレース・ケリーの様だ」とそのエレガントさが大好評だったドレス。ファッション・ブランド、アレクサンダー・マックイーンのチーフ・デザイナー、セーラ・バートンによるもの。シンプルだけれど手が込んでいて上品。私も、ダイアナのおとぎ話のお姫様スタイルよりも、こちらに花丸。繊細なレースの刺繍を作成するに当たって、作業をした人物は、手の脂で汚さぬよう、３０分おきに手を洗ったといいます。参列者も一般的に、イギリスのデザイナーを使用する傾向が強かったようです。当ドレスに関する記事はこちら。

それにしても、このロイヤル・ウェっディングのクライマックス、バルコニーのキス・シーンで、しかめっ面で、喧騒に耳を塞いでしまったブライズメイドの女の子（上の写真左下）・・・。グレースちゃん、と名前まで発覚してしまい。１０年くらい経って、この写真を見て、恥ずかしい思いをしてしまうかも。

ああ、グレースちゃん、皆が、バッキンガム宮殿の上を通過する飛行機を眺めている時も、まだ、ひとり、耳をふさいで、ムンクの「叫び」のポーズを取ったまま。バルコニーから内部へ戻った後、ウィリアム王子は、彼女と同じポーズを取って「グレースは恐かったみたいだ。こんな風にして、耳をふさいじゃって。」とのたまっていたと。

メイド・オブ・オナー役をつかさどった、ケイト・ミドルトンの妹ピパ・ミドルトンの衣装も、セーラ・バートンによるものとの事で、綺麗でした。上は、彼女が、小さなブライズメイドとページ・ボーイ達と一緒に歩いているところ。一部、「ピパの方が、姉さんより魅力的」という人もいるようで、特に男性視聴者の間で、好評。彼女のおしりのファンがすでに大勢いるのだそうです。

当結婚式での最悪の帽子賞は・・・間違いなく、女王の次男坊アンドリュー王子とセーラ・ファーガソンの間にできた、長女のベアトリス王女へ行くでしょうでしょう。上の写真、中央がアンドリュー王子、右がその最悪の帽子をかぶるベアトリス王女、左は次女のユージェニー王女。私達夫婦も、テレビを見ながら、彼女が車から降りてきた直後に、思わず「What is that !」（なんじゃありゃ！）と絶句してしまいましたから。

米のハッフィントン・ポスト記事によると、この悪名高きベアトリスの帽子は、すでに「Princess Beatrice's ridiculous Royal Wedding hat」（ベアトリス王女のばかげたロイヤル・ウェッディング・ハット）という名で、フェイスブックにページができ、大変な数の訪問者を集めています。「つのかと思った」「ヘラジカみたいだ」「プレッツェルだ」「古代の多産の神」などのコメントが入っており、大笑い。皆、同じような事を思うものです。妹のユージェニー王女のいでたちも、かなり品の無いものがあり、「シンデレラの醜い意地悪姉さん達」という意見も入っていました。ファッション・デザイナーも、さりげなく、「こうした方がいいですよ」とアドバイスできなかったものか・・・。気の毒な気もしないでもないです。アンドリュー王子とはすでに離婚している、２人の王女達のお騒がせママ、セーラ・ファーガソンは、結婚式にも呼ばれなかったのです。

（多少支離滅裂な行動を取る人物ではあれ、セーラが招待されなかった事、さらには、あれだけ任期の長かった前首相トニー・ブレアが招待されなかった事に、英国王室の、闇の好ましくない部分が見え隠れしないでもない気がします。どう考えても、どんな理由があれ、特に、ブレアは呼ぶべきだった。彼の現在の評判がどうであっても、誰が選んだわけでもない女王とは異なり、彼は３回も国民から選出された人物、しかも、ウィリアムが青年となる過程の時期に首相だった人物なのですから。）

ちなみに、ベアトリス王女の帽子は、フィリップ・トレイシー（Philip Treacy）のデザインによるもの。サイトはこちら。

ヴィクトリア・ベッカムのかぶっていた帽子もこのフィリップ・トレイシーによるものということ。うーん、私はこちらもちょっといただけないですが。それに、彼女はいつも恐い顔してこちらを睨んで、少しリラックスすればいいのにと思う次第。ご主人見習って、ほれ、チーズ。

女性参列者は、ほぼ全員、帽子をかぶっていたのですが、その中で、帽子をかぶらずに現れた著名参列者の一人が、首相夫人のサマンサ・キャメロン。

女性参列者に対する着るもののガイドラインとして、「帽子はoptional（任意）」とあったようですが、この「optional」という言葉、「被るのが好ましい」という暗黙の了解のようなものがあるらしいのです。こういう「暗黙の」というのも、英国エスタブリッシュメントのいささか鼻に付くところ。もったいぶらずに、はっきり言ったら？という感じです。「サマサンサは帽子をかぶっておらんかった、けしからん。」という意見も出てしまいましたが、燕尾服を着る着ないで、一時ニュースになってしまった夫のデイヴィッド・キャメロンの着ているものに、あまり注目がいかないよう、話題をそらせるために、わざと、自ら帽子をかぶらず乗り込んだのでは、などと考えてしまいました。彼女、なかなか頭の良い女性だと思いますので。ともあれ、着ていた服は美しく似合っており、そんな批判もどこ吹く風で通してしまう彼女に、ハッツ・オフ（脱帽）。

＊追記（５月２２日、日曜日）＊

ベアトリス王女の帽子が、本日の夜、オークションサイトのイーベイ（eBay）にて、￡８１，１００．０１（８万１千百ポンド１ペンス）にて落札されました。お金は、２つのチャリティー（ユニセフとチルドレン・イン・クライシス）に寄付されるとの事。彼女から購買者へのメッセージは、「落札する人が誰であれ、私が、この帽子を楽しんだのと同じくらい、楽しんで欲しいわ。」服のセンスは悪くとも、ユーモアのセンスは持っているようなのが、なにより。慈善にもなったし。まずは、めでたし、めでたし。

このニュースを載せたＢＢＣの記事はこちらまで。