ばい菌渦巻くロンドンの地下鉄
がらがらの羽田空港国際ターミナルのディスプレイ |
先月(2月)頭から、約1か月、日本に滞在しており、昨日の便で帰国しました。今回、新型コロナウィルスの感染が拡大しつつある中、という、実にタイミングの悪い訪問となってしまい、やりたかった事のいくつかが、残念ながらキャンセルとなりましたが。日々、日本での感染が広がり、帰るころには、英国から、渡航を止められるのでは、などと冷や汗もあったものの、無事、帰宅。調度、私の帰国と共に、英国での感染も勢いをつけて来た模様です。
日本は、昨日段階で、カテゴリー2とやらで、イギリスでは、日本から入国した人には、もし2週間のうちに、風邪や熱などの症状が出た場合は、イギリスの医療機関NHSの決められた番号に電話をするように、などという指示を出していました。が、個々人の自主性に任せられているので、大したことがない風邪っぽい症状を出した人が、実際に医療機関に連絡をとるかどうかは、たいへん疑問です。
帰りの便は、がらがら。乗っていたのは、イギリス人4割、日本人6割くらいの感じでした。日本人は、多くは、私のように、住んでいる人か、駐在の人という気がします。3人分の座席を一人で占領し、ゆったりとすごせたのはいいのですが、機内に、幾人か咳をしている人がいたのには気になりました。(咳が聞こえてくる場所を確認して、その方角のトイレは使わないようにしていました。)ヒースロー空港に着いたら、熱をはかるくらいの事はするのかな、と思いきや、何の検査もなく、すーいすーいと入国。あの咳していた人たちも、何のおとがめもなく入っていったわけです。これじゃ、世界中に広がるわけですよね。どこもかしこも、危機感がなく、ずさん。国への出入り口ですよ。お金にきゅーきゅーしているイギリス政府、こうした場所に、熱を測る検視官を置いたりする金銭的人材的余裕もなく、「まーだいじょーぶだろー」という態度なのかもしれません。日本は、どうやっているのでしょう。
そして、空港から、ロンドンの地下鉄、ピカデリー線の車両に乗り込むと、日本に1か月も滞在したのもあり、車内の汚らしさが、やたら目につきました。まず、座席の後ろ部分に、誰かが車両内で食べたバナナの皮が3,4枚、それにコーヒーの空きカップがころがっていたのです。それを目にした瞬間から、ぴかぴかの日本の車内がすでに恋しくなっていました。
座席に着き、斜め前に座った大きなおじさん、いきなりぶへん、ぶへんと咳をはじめた。ほとんど、その大口を覆う事もせず。私は、新聞を読むふりをして、ばーと顔の前に広げて、シールド!体が大きいから、その分、目に見えない沢山のものがあの口から出てきそう。
次の駅で、私の隣にのった、おねーさんが、近ごろブームの枝豆が容器に入ったものを、ごそごそカバンから取り出し、ぷちゅぷちゅと音をたてて食べ始めたのです。おまけに、指までなめている!「あんた、危ない、やめろー」と叫びそうになりました。この人、自分への害もあるでしょうし、この後、色々、その指で、公共のドアやら、ボタンやら触るんですよ。気分が悪くなってきた・・・。
さらに、次の駅、前に座ったおじさんが、なんだかプリンの様なものを食べだし、時々ごほごほ、むせている。私は、新聞の盾を下げることなく、ほとんど息を止めるように、「早く、目的地に着いて!」と心で唱え続けるばかり。
さらに次の駅、もう片方の隣に座ったロシア人のねーさん、半ば、私の方に体をむけてスマホで大声で、ロシア語で喋りだした。「やめて、唾が飛ぶ!前向いて喋って!」とまた、心の叫び。この段階で、コートについていた、フードを深くかぶりました。横からのつば攻撃に多少のたしになるかと。
とにかく地下鉄のあちこちで、実に非衛生な行動が連発していて、乗っていると逃げどころがない、ばい菌やウィルスが渦巻く濃厚なスープの中にいるよう。季節がら、咳をしている人の数が多く、ほとんどが、一切他人におかまいなし。物を、人目構わず食べるというのも、ロンドンの地下鉄ではよくある話です。とにかく車内エチケット、マナーなどは存在しない・・・。あるとしたら、混んでいても、他人の体には触れない様注意することくらい。
帰りのラッシュアワーというのもあって、中心に近づくにつれ、混みに混んできた地下鉄。特にセントラル線に乗り換えてからは、超混みで、目的駅のリバプール・ストリート・ステーション駅より2駅前のセント・ポール駅で降り、しょぼ降る雨の中、残りの区間は、馴染みの通りを歩いていきました。多少、時間は多くかかっても、とにかく、あのばい菌とウィルスの巣窟から、少しでも早く抜け出して、外の空気が吸いたかったのと、シティーを通り抜けながら、私の好きなロンドンの一角に「ただいま」と言いたかったのと。こんな事もあろうかと、荷物は、小型の背中に背負えるものにし、日本で買ったものは、郵送してしまったのも正解でした。
人は、免疫力をつけるために、子供のころから、多少は色々なばい菌にさらされていた方がいいという話はありますが、あの地下鉄は、ちょっと怖い。うちの母親は、子供のころに、肥溜めに落ちたことがあり、その時に、全身にあびたばい菌のおかげで、「私は自分の免疫力を信じている」と豪語して、マスクなども一切しない人です。まあ、毎冬、予防注射もしていないのに、風邪やインフルエンザをひいたという話も聞いたことはありませんが、一応、老齢者ですので、帰宅したら、手ぐらい洗ってね、とは言ってあります。
現段階で、イギリスの感染確認者数90人。あの地下鉄に乗る人々のやりたい放題を見ていると、これは、日本よりすごい事になるかも、という気がしています。大体、「あれしなさい、これしなさい」と言われて、それに従うというのがあまり得意ではないというお国柄ですし、特にロンドンは、文化的衛生的観念が、ばらばらの人たちが沢山います。今朝のニュースでは、看護婦の数が足りず、ウィルスがさらに広がったら、NHSが対処するのはむずかしい、という話も出ていました。
イギリスでは、マスクは効果はない、マスクをする必要はないというアドバイスをしています。確かに、私も、マスクはたいした予防にはならないだろうなとは思いますので、目の色変えて、予防用にマスクを入手しようという気はあまり起こりません。大体、売り切れの様ですしね。特に戸外を歩いている時に、マスクをするというのは、返って、いい空気が吸えずに逆効果ではないかなどとも感じます。が、あれだけ、唾を飛び散らせている人たちをみると、あからさまに風邪の症状を持っている人たちには、他人の事、他人の気持ちを考えて、マスクくらいして欲しいという気はしますね。唾の飛び方の勢いが少しでも抑制されるように。マスクは自分のためでなく、他人のために使うものだと思います。
ただ、日本にいる間は、あまりにやっている人が多いため、マスクをしていないから白い目で見られても気分が悪いと、100均でガーゼのハンカチと、ゴムを購入して、お手製ガーゼマスクを2つ作り、電車に乗る時のみ、これを活用していました。ガーゼなら洗って干せるし、どうせ、気安めなら、手作りでも良いと思って。
前回のクリスマス直前に、10年前にかかった白血病の治療の一環の、骨髄移植の後遺症で、免疫力が弱いうちのだんなは、普通のインフルエンザをこじらせ、4,5日入院する騒ぎとなりました。1月半ばまでには、信じられないほど、元気を取り戻したので、まあ、だんなの調子が良さそうだから、しばらく一人でおいておいても大丈夫そうだ、という事もあり、今のうちにと、一時帰国をしてきたわけです。今回、さすがに、だんなは、コロナウィルスにやられたら、ついに自分もやばい、と思っているようです。とりあえずは、私が、万が一感染していた時のため、しばらくの間は、寝室は別に取ることにし、ドアノブやらスイッチやらをまめに拭いて回っています。
・・・でも、たとえ、万が一、私がコロナウィルスを持っているとしたら、それは日本でもらったものではなく、昨日のロンドンの地下鉄のどこかで持ってきたものだという気がします。
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