狼男アメリカン
昼間は普通の人間、しかし、満月の夜になると、体に毛が吹き出し、牙がむき出し、狼に変身するのは、ご存知、狼男(werewolf)です。英語の「werewolf ウェアウルフ」は、were(昔の英語で男を意味する)とwolf(狼)が合体してできた言葉。これをもじって、ウォレスとグルミットの映画で、ウォレスが満月の夜にウサギに変身してしまうという、「The Curse of Were-Rabit」(直訳:ウサギ男の呪い、邦題:ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!)というのがありました。
古くから、色々な場所で、人間が狼に変わるというような、伝説はあったのでしょうが、中世のキリスト教社会で、狼は悪魔の化身と見られるようになり、人間が、何かのきっかけで、うちに持った魔性や獣性をあらわにする、狼男への変身というパターンが確立されていったようです。満月を見ると変身・・・というのはどこから生まれたかはわかりません。狼は月に吠える、というイメージからでしょうね。
狼男を主題とし、人間から狼に変身する場面がド迫力、と評判であった映画が、「An American Werewolf in London」(邦題:狼男アメリカン)。話題の変身場面は、何度か、テレビで見た事があるのですが、映画自体は最初から最後まで見た覚えがなかったため、先日、立ち寄ったセカンド・ハンドの店で格安DVDを見かけ、やっと見ました。笑えるホラー映画です。
簡単なあらすじ
アメリカ人の青年、デイヴィッドとジャックは、3か月の休暇でヨーロッパへやってきて、まずはイギリスからリックを背負っての旅を始める。殺伐としたムーアのただ中の、とある村へ、夕刻にたどり着いた二人は、村のパブへ暖を求めて入る。2人が入ると、よそ者が来たとばかりに、中にいた村人たちは、ぱたりと喋るのをやめる。星型のペンタグラム(pentagram、五芒星)が、狼男のシンボルだそうで、入ったパブの壁には、この五芒星が書かれていた。異様な雰囲気にいたたまれなくなった二人は、再び外へ。その時、村人の一人から、「月に気をつけろ。道路を離れるな。」の忠告を受ける。外を歩きだした二人はいつの間にか、村人の忠告を忘れ、道をはずれ、ムーアの中を歩きはじめており、空には満月が、そして、獣の叫び声が聞こえてくる。やがて、現れた巨大な狼に襲われ、ジャックは喉をかみ砕かれ死亡、デイヴィッドは狼に襲われたものの、すんでのところで、後を追ってきた村人たちにより、狼は銃殺。銃殺された狼は、死ぬと人間に姿が変わっていた。
そのまま気を失ったデイヴィッドは、ロンドンの病院の一室で目を覚ます。村の狼男伝説の話を伏せたいためか、村人たちの情報により、デイヴィッドとジャックは、狂人に襲われたという話になっていた。美人看護婦アレックスに看護されながらも、時に悪夢にさいなまれるデイヴィッドの前に、死んだはずのジャックが、狼男から受けた傷も生々しい姿で現れ、狼男に噛まれながらも生き残ったデイヴィッドは、狼男と化している事を告げる。そして、ジャックなどの狼男に殺された者たちは、狼男の血筋が絶えぬ限り、死にきれずに、うろうろ漂うしかないと言う。狼に変身して人殺しとならぬよう、自分たちが往生できるよう、最後の狼男の血を持つデイヴィッドに、ジャックは、自殺をすすめる。
ジャックの話に半信半疑で、更には、退院後、看護婦アレックスと恋に落ち、彼女の家で同棲を始めたデイヴィッドは、自殺などという気にはなれない。やがて、アレックスの仕事中の、満月の夜、ついにデイヴィッドは狼男に変身し、夜のロンドンを暴れまわり、6人の人間を殺してしまう。
翌日、ピカデリー・サーカスの映画館でデイヴィッドは、ジャックと、前夜自分によって殺された6人の人物たちと会い、更に、自殺を勧められるのだが、それも間に合わず、デイヴィッドは映画館の中で狼に変わってしまい、映画館内部で人を殺した後、夜のピカデリー・サーカスに飛び出し、大騒動となる。ラストは、細い道に、警察によって追い込まれたデイヴィッドは、自分を追ってやってきたアレックスにもとびかかろうとし、警察によって射殺される。死ぬと、狼は、人間としてのデイヴィッドの姿に変わっていた。
*****
「狼男アメリカン」の公開は、1981年。イギリスは1978年から79年にかけての冬、労働党政権下で、歴史的に「不満の冬」として知られる、全国的一大ストライキを経験。このダメージが大きかったストライキの影響もあり、1979年の5月に、マーガレット・サッチャー率いる保守党政権が誕生していますので、この映画が公開された当時は、マーガレット・サッチャー政権初期の頃です。40年前のロンドンの街の様子を見るのにもいい映画です。
不満の冬からまだ間もないロンドンは、現在に比べ、ぼろっと薄汚い感じがあります。タワー・ブリッジのすぐそばで、浮浪者たちを襲うシーンがありますが、現在この周辺、浮浪者はおろか、高級マンションがあるエリアです。ピカデリーサーカスでのクライマックスの大騒動シーンは、なんでも、2日続きで、夜の2時から4時にかけて交通をすべてストップしてロケをする許可を得て取ったのだそうで、昔スタントをしていたというジョン・ランディス監督自ら、車にはねられ、店のショーウィンドーに突っ込むという形で登場しています。
現在は、やはり、かなり綺麗になっている、地下鉄トッテンナム・コート・ロード駅内部で、男性が狼男に追いかけられ殺されるというシーンは、怖く、また、昔の駅の様子が懐かしかったです。誰もいない駅のプラットフォームに降り立つ男性は、まず、かつては地下鉄駅のプラットフォームに良く設置されていた自動販売機でお菓子を買うのですが、こうした自動販売機、それは頻繁に壊れている事があって、しかも、木製の物もあったと記憶します。お金を入れて、何も出てこなかった自動販売機に腹を立て、雨傘で自販を何度もたたいている男性を目撃した事もありました。
看護婦アレックス役は、少女期は「若草の祈り」や「美しき冒険旅行」などの映画で活躍したジェニー・アガターが演じています。
映画の出だしで、デイヴィッドとジャックが、村のパブに足を踏み入れた途端、話し声がはたりとやみ、村人たちがよそ者を上から下まで見上げる場面には、映画「ウィッカーマン」を連想。外から隔離された小集落の不気味さを表すには、常套句ではあるものの、最適の演出です。
ジャックは、計3回、デイヴィッドの前に姿を現しますが、その度に、段々、体が腐っていく様子が、気色悪いながらも、可笑しいのです。1回目は、死んだばかりで傷も生々しく、2回目は、腐敗直前か、顔も体も紫色、3回目の登場では、もう腐敗が進み、目玉むき出し骸骨に近い姿。そんな姿でありながら、生きていた時と同様、普通に友人同士の会話をする様子も、また可笑しい。メイクが大変であったようですが。
そして、デイヴィッドが狼男への変身の場面。アレックスの部屋でくつろいでいる時、いきなり激痛に襲われ、手がにょきにょきと長くなり、背骨がぼこぼこっと突起、そして顔がぐいぐいと長くなっていく。骨格が変わっていくので、体中が痛いはずだ、というのは、確かに、監督、考えたものです。そしてバックに流れる音楽は、ちぐはぐにも、陽気なメロディーの「ブルームーン」。
ジャックの腐敗メイクもそうですが、この変身でのメイクの苦労が報われ、メイクアップ・アーティストのリック・ベイカー氏は、「狼男アメリカン」をもって、1982年のオスカーで、初のアカデミーメイクアップ賞を獲得。おつかれさん。
原題:An American Werewolf in London
監督:John Landis
言語:英語
1981年
「狼男アメリカン」内で、デイヴィッドが、アレックスに、映画「The Wolf Man」(狼男、1941年)を見た事があるか、と聞く場面がありました。ので、こちらも、勉強のため(?)、さっそく見てみました。なかなか、面白かったです。
20世紀の初め、ウェールズの良家の家系のラリー・タルボットは、家を継ぐはずであった兄の死後、後継ぎとなるべく、父が住む故郷の屋敷へと戻る。ラリーは、帰郷後すぐに知り合った、アンティークショップの娘グエンと、彼女の女友達ジェニーと、3人で連れ立って、夜、森の中のジプシーのキャラバンへ、運命占いをしてもらおうと出かける。先に運命を見てもらったジェニーを離れ、ラリーとグエンは、周辺を散歩。ジェニーの運を読み、形相を変えたジプシー男、ベラは、何も言わずに、ジェニーを帰す。ベラの胸には、星のマーク(ペンタグラム)があった。ジェニーは、キャラバンを去るとすぐ、狼に襲われる。ジェニーの悲鳴を聞き駆けつけたラリーは、狼をグエンのアンティーク・ショップで買った、銀の狼をかたどった握り手を持つステッキでたたき殺すが、胸を狼に噛まれる。狼は死後、ジプシーのベラに姿を変える。
ベラが狼男であったという事情がわからぬまま、ラリーは、狼と誤ってベラを殺したものとみなされるが、ラリーはジプシー女マレーバに事の真相を知らされ、噛まれた自分も狼男となったと告げられる。マレーバから、護身用にと星のマーク(ペンタグラム)のペンダントを渡されるが、ラリーは、万が一、狼男と化した自分に襲われたときのために、これをグエンに身に着ける用にと渡す。案の定、夜、狼男と化したラリーは墓掘りを殺す。墓掘りは、狼に襲われたものと思われ、村と警察は、狼狩りの手はずをたてる。
再び狼と化し、更なる殺人を犯すことを恐れたラリーは、父親に告白、疑心半疑の父は、ラリーを椅子に縛り付け、窓に鍵を閉めることとし、自分は、その夜、村での狼狩りに参加に出かける。出て行こうとする父親に、ラリーは、自分の銀の狼のステッキを持っていくよう頼む。ジプシーのマレーバから、狼男を完全に殺すには銀のステッキか、銀の弾丸が必要と聞かされていたため。ラリーは縛られていた椅子から抜け出し、再び狼男として、森へ。ラリーの身を案じて、やはり森へ来ていたグエンを狼男は絞め殺そうとする。が、ラリーの父は狼男を見つけると、銀のステッキでたたき殺す。狼の死骸は、やがて、人間の姿のラリーに戻る。
・・・こちらは、ずっと以前の映画なので、変身シーンは、椅子に座っている足だけを見せ、足がだんだん、まるでコケでも生えていくように毛むくじゃらになっていきます。また、変身したあとの狼男は、やや前のめりに2本足で歩き、服は着たまま。ロシア帽をかぶったひげもじゃの大きなおじさん、という感じで、ユーモラスです。ランディス監督は、「狼男アメリカン」以前の映画の狼男は、このように、皆、2本足で歩くものだったので、これをもっと、当時の観客に受け入れられるように、リアルにするために、4つ足の野獣にしたかったという事です。
狼男である、ジプシー男のベラ役をやっていた、ベラ・ルゴシという俳優は、かなり有名であったようで、「狼男アメリカン」の中でも、デイヴィッドは、この映画の事をアレックスに喋っている時、「新しい狼男の映画じゃなくて、ベラ・ルゴシが出ていた、オリジナルの狼男の映画」と念を押しています。うちのだんなにも、「ベラ・ルゴシって俳優知ってた?」と聞くと、「うん。ホラー映画に沢山出てたでしょ。」と言っていました。特に、ドラキュラ役者として名を成したそうです。
この映画の時代描写が本当だとすると、20世紀初期には、まだ、流浪の民風の、カラフルに塗ったキャラバンに乗ったジプシーたちが、ウェールズあたりも旅して、手相占いなぞ、していたのですね。
原題:The Wolf Man
監督:George Waggner
言語:英語
1941年
古くから、色々な場所で、人間が狼に変わるというような、伝説はあったのでしょうが、中世のキリスト教社会で、狼は悪魔の化身と見られるようになり、人間が、何かのきっかけで、うちに持った魔性や獣性をあらわにする、狼男への変身というパターンが確立されていったようです。満月を見ると変身・・・というのはどこから生まれたかはわかりません。狼は月に吠える、というイメージからでしょうね。
狼男を主題とし、人間から狼に変身する場面がド迫力、と評判であった映画が、「An American Werewolf in London」(邦題:狼男アメリカン)。話題の変身場面は、何度か、テレビで見た事があるのですが、映画自体は最初から最後まで見た覚えがなかったため、先日、立ち寄ったセカンド・ハンドの店で格安DVDを見かけ、やっと見ました。笑えるホラー映画です。
簡単なあらすじ
アメリカ人の青年、デイヴィッドとジャックは、3か月の休暇でヨーロッパへやってきて、まずはイギリスからリックを背負っての旅を始める。殺伐としたムーアのただ中の、とある村へ、夕刻にたどり着いた二人は、村のパブへ暖を求めて入る。2人が入ると、よそ者が来たとばかりに、中にいた村人たちは、ぱたりと喋るのをやめる。星型のペンタグラム(pentagram、五芒星)が、狼男のシンボルだそうで、入ったパブの壁には、この五芒星が書かれていた。異様な雰囲気にいたたまれなくなった二人は、再び外へ。その時、村人の一人から、「月に気をつけろ。道路を離れるな。」の忠告を受ける。外を歩きだした二人はいつの間にか、村人の忠告を忘れ、道をはずれ、ムーアの中を歩きはじめており、空には満月が、そして、獣の叫び声が聞こえてくる。やがて、現れた巨大な狼に襲われ、ジャックは喉をかみ砕かれ死亡、デイヴィッドは狼に襲われたものの、すんでのところで、後を追ってきた村人たちにより、狼は銃殺。銃殺された狼は、死ぬと人間に姿が変わっていた。
そのまま気を失ったデイヴィッドは、ロンドンの病院の一室で目を覚ます。村の狼男伝説の話を伏せたいためか、村人たちの情報により、デイヴィッドとジャックは、狂人に襲われたという話になっていた。美人看護婦アレックスに看護されながらも、時に悪夢にさいなまれるデイヴィッドの前に、死んだはずのジャックが、狼男から受けた傷も生々しい姿で現れ、狼男に噛まれながらも生き残ったデイヴィッドは、狼男と化している事を告げる。そして、ジャックなどの狼男に殺された者たちは、狼男の血筋が絶えぬ限り、死にきれずに、うろうろ漂うしかないと言う。狼に変身して人殺しとならぬよう、自分たちが往生できるよう、最後の狼男の血を持つデイヴィッドに、ジャックは、自殺をすすめる。
ジャックの話に半信半疑で、更には、退院後、看護婦アレックスと恋に落ち、彼女の家で同棲を始めたデイヴィッドは、自殺などという気にはなれない。やがて、アレックスの仕事中の、満月の夜、ついにデイヴィッドは狼男に変身し、夜のロンドンを暴れまわり、6人の人間を殺してしまう。
翌日、ピカデリー・サーカスの映画館でデイヴィッドは、ジャックと、前夜自分によって殺された6人の人物たちと会い、更に、自殺を勧められるのだが、それも間に合わず、デイヴィッドは映画館の中で狼に変わってしまい、映画館内部で人を殺した後、夜のピカデリー・サーカスに飛び出し、大騒動となる。ラストは、細い道に、警察によって追い込まれたデイヴィッドは、自分を追ってやってきたアレックスにもとびかかろうとし、警察によって射殺される。死ぬと、狼は、人間としてのデイヴィッドの姿に変わっていた。
*****
「狼男アメリカン」の公開は、1981年。イギリスは1978年から79年にかけての冬、労働党政権下で、歴史的に「不満の冬」として知られる、全国的一大ストライキを経験。このダメージが大きかったストライキの影響もあり、1979年の5月に、マーガレット・サッチャー率いる保守党政権が誕生していますので、この映画が公開された当時は、マーガレット・サッチャー政権初期の頃です。40年前のロンドンの街の様子を見るのにもいい映画です。
不満の冬からまだ間もないロンドンは、現在に比べ、ぼろっと薄汚い感じがあります。タワー・ブリッジのすぐそばで、浮浪者たちを襲うシーンがありますが、現在この周辺、浮浪者はおろか、高級マンションがあるエリアです。ピカデリーサーカスでのクライマックスの大騒動シーンは、なんでも、2日続きで、夜の2時から4時にかけて交通をすべてストップしてロケをする許可を得て取ったのだそうで、昔スタントをしていたというジョン・ランディス監督自ら、車にはねられ、店のショーウィンドーに突っ込むという形で登場しています。
現在は、やはり、かなり綺麗になっている、地下鉄トッテンナム・コート・ロード駅内部で、男性が狼男に追いかけられ殺されるというシーンは、怖く、また、昔の駅の様子が懐かしかったです。誰もいない駅のプラットフォームに降り立つ男性は、まず、かつては地下鉄駅のプラットフォームに良く設置されていた自動販売機でお菓子を買うのですが、こうした自動販売機、それは頻繁に壊れている事があって、しかも、木製の物もあったと記憶します。お金を入れて、何も出てこなかった自動販売機に腹を立て、雨傘で自販を何度もたたいている男性を目撃した事もありました。
看護婦アレックス役は、少女期は「若草の祈り」や「美しき冒険旅行」などの映画で活躍したジェニー・アガターが演じています。
映画の出だしで、デイヴィッドとジャックが、村のパブに足を踏み入れた途端、話し声がはたりとやみ、村人たちがよそ者を上から下まで見上げる場面には、映画「ウィッカーマン」を連想。外から隔離された小集落の不気味さを表すには、常套句ではあるものの、最適の演出です。
ジャックは、計3回、デイヴィッドの前に姿を現しますが、その度に、段々、体が腐っていく様子が、気色悪いながらも、可笑しいのです。1回目は、死んだばかりで傷も生々しく、2回目は、腐敗直前か、顔も体も紫色、3回目の登場では、もう腐敗が進み、目玉むき出し骸骨に近い姿。そんな姿でありながら、生きていた時と同様、普通に友人同士の会話をする様子も、また可笑しい。メイクが大変であったようですが。
ギャー、手が伸びる! |
ここから鼻がぐいぐい伸びる・・・ |
原題:An American Werewolf in London
監督:John Landis
言語:英語
1981年
「狼男アメリカン」内で、デイヴィッドが、アレックスに、映画「The Wolf Man」(狼男、1941年)を見た事があるか、と聞く場面がありました。ので、こちらも、勉強のため(?)、さっそく見てみました。なかなか、面白かったです。
20世紀の初め、ウェールズの良家の家系のラリー・タルボットは、家を継ぐはずであった兄の死後、後継ぎとなるべく、父が住む故郷の屋敷へと戻る。ラリーは、帰郷後すぐに知り合った、アンティークショップの娘グエンと、彼女の女友達ジェニーと、3人で連れ立って、夜、森の中のジプシーのキャラバンへ、運命占いをしてもらおうと出かける。先に運命を見てもらったジェニーを離れ、ラリーとグエンは、周辺を散歩。ジェニーの運を読み、形相を変えたジプシー男、ベラは、何も言わずに、ジェニーを帰す。ベラの胸には、星のマーク(ペンタグラム)があった。ジェニーは、キャラバンを去るとすぐ、狼に襲われる。ジェニーの悲鳴を聞き駆けつけたラリーは、狼をグエンのアンティーク・ショップで買った、銀の狼をかたどった握り手を持つステッキでたたき殺すが、胸を狼に噛まれる。狼は死後、ジプシーのベラに姿を変える。
ベラが狼男であったという事情がわからぬまま、ラリーは、狼と誤ってベラを殺したものとみなされるが、ラリーはジプシー女マレーバに事の真相を知らされ、噛まれた自分も狼男となったと告げられる。マレーバから、護身用にと星のマーク(ペンタグラム)のペンダントを渡されるが、ラリーは、万が一、狼男と化した自分に襲われたときのために、これをグエンに身に着ける用にと渡す。案の定、夜、狼男と化したラリーは墓掘りを殺す。墓掘りは、狼に襲われたものと思われ、村と警察は、狼狩りの手はずをたてる。
再び狼と化し、更なる殺人を犯すことを恐れたラリーは、父親に告白、疑心半疑の父は、ラリーを椅子に縛り付け、窓に鍵を閉めることとし、自分は、その夜、村での狼狩りに参加に出かける。出て行こうとする父親に、ラリーは、自分の銀の狼のステッキを持っていくよう頼む。ジプシーのマレーバから、狼男を完全に殺すには銀のステッキか、銀の弾丸が必要と聞かされていたため。ラリーは縛られていた椅子から抜け出し、再び狼男として、森へ。ラリーの身を案じて、やはり森へ来ていたグエンを狼男は絞め殺そうとする。が、ラリーの父は狼男を見つけると、銀のステッキでたたき殺す。狼の死骸は、やがて、人間の姿のラリーに戻る。
・・・こちらは、ずっと以前の映画なので、変身シーンは、椅子に座っている足だけを見せ、足がだんだん、まるでコケでも生えていくように毛むくじゃらになっていきます。また、変身したあとの狼男は、やや前のめりに2本足で歩き、服は着たまま。ロシア帽をかぶったひげもじゃの大きなおじさん、という感じで、ユーモラスです。ランディス監督は、「狼男アメリカン」以前の映画の狼男は、このように、皆、2本足で歩くものだったので、これをもっと、当時の観客に受け入れられるように、リアルにするために、4つ足の野獣にしたかったという事です。
狼男である、ジプシー男のベラ役をやっていた、ベラ・ルゴシという俳優は、かなり有名であったようで、「狼男アメリカン」の中でも、デイヴィッドは、この映画の事をアレックスに喋っている時、「新しい狼男の映画じゃなくて、ベラ・ルゴシが出ていた、オリジナルの狼男の映画」と念を押しています。うちのだんなにも、「ベラ・ルゴシって俳優知ってた?」と聞くと、「うん。ホラー映画に沢山出てたでしょ。」と言っていました。特に、ドラキュラ役者として名を成したそうです。
この映画の時代描写が本当だとすると、20世紀初期には、まだ、流浪の民風の、カラフルに塗ったキャラバンに乗ったジプシーたちが、ウェールズあたりも旅して、手相占いなぞ、していたのですね。
原題:The Wolf Man
監督:George Waggner
言語:英語
1941年
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