扁桃腺摘出手術の体験記
子供の時に扁桃腺を取ってしまう、というのは、1950年代60年代あたりでは、わりとよくある現象でした。扁桃腺は、子供の免疫系が発達した後は、必要がなくなるものであるという事で、頻繁に炎症を起こしたり、高熱を引き起こす原因となるなど、ちょっと問題が出た場合は、早めに切ってしまうというのが、当時の傾向であったようです。親知らずを抜くのと似たような感じで。この頃幼少期を過ごした人には、扁桃腺はとっくの昔に切ってしまったという人は、わりと多い事でしょう。私の65歳の日本人の友人も、なんでも6歳の時に、麻酔無しで、立ったまま手術を受けた、という恐ろしくスパルタ風の話をしていました。
上の絵は、1968年に出版された、アメリカの人気絵本作家リチャード・スカーリー(Richard Scarry)によるものですが、子うさぎのアビーが病院に行き、ドクター・ライオンに、扁桃腺を取る手術をしてもらう、という内容。ドクター・ライオンは、アビーの喉を除きこみ、「とても悪いtonsils(扁桃腺)だ。切らないと。明日病院へおいで。」と事も無げに。
翌日病院へ行ったアビーは全身麻酔で手術。アビーが寝ている間に、ドクター・ライオンは、アビーを丸呑みにして食べてしまいました・・・・なんて、はずは無く、手術が成功したアビーはちゃんと目覚め、
喉が痛くなっていたけれど、アイスクリームを食べてちょっと元気になりました・・・と。隣のベッドの犬のロジャーもすでに手術を終えて、アイスクリームを食べた後。子供の扁桃腺摘出は、アメリカでも当時、多く行われた手術であったのでしょう。子うさぎですら、こうして手術をして、すぐ、ニコニコしているのだから、大丈夫だよ、と子供に安心させるのが目的で書かれたのだと思います。この本、「扁桃腺を取るのは日常茶飯事」のような感覚で、なかなか面白い時代物です。
昨今、トレンドの変化で、切ってもあまり意味が無いケースが多いのか、ちょっとやそっとでは、切らない事が多くなっているようです。そのためか、大人になってから、異常を起こした扁桃腺を切る、という人も増えているという話です。私もその1人で先月、扁桃腺を切りました。もっとも、私は、子供の時は、扁桃腺に問題を起こすことなどは一切無かったのですが。
という事で、大人になってから扁桃腺手術をむかえようとする人に、何かの参考になるかと、扁桃腺摘出手術体験談を載せておきます。ただし、扁桃腺を取る理由も、術後の経過も、ケース・バイ・ケースで個人差があるでしょうから、私の体験談から、参考になると思われる部分だけ取って、他の体験談なども読んだり、聞いたりしてみて下さい。
私の場合は、もともとは、かれこれ3年前に起こった左耳の痛みで始まり、痛みは、医者から出してもらって抗生物質を取っても治らず、そうこうするうち、今度は、左側の喉が痛み始め、日によって痛みの強度に度合いはあるものの、常に、左側の喉に湿ったスポンジが張り付いているような感覚で、痛みがひどい時は、痰などもしょっちゅう出て、風邪をひくと、治るのにそれは長い期間を必要とするようになり、左側の喉から耳にかけてじんじんと痛むのでした。
一般に扁桃腺に問題がある人の様に、熱などは一度も出したことがないので、自分でも扁桃腺の問題とは考えもせず、こちらでは、よくある話ですが、何回か足を運んだ家庭医には、「気のせい」とあしらわれました。あまりにも長引き、治らないので、ついに見切りをつけ、家庭医を変えて、やっと、新しい家庭医に頼んで、専門医に紹介してもらったのが、今年の5月。イギリスでは、直接、内科なり、外科なりの専門医に会うことができず、最初は、全て、何でも屋さんの家庭医(GP)に見てもらい、GPが、更なる検査が必要と決めると初めて、専門医に紹介してもらうシステムなのです。ですから、GPの腕や処置判断が悪いと、いつまでも、簡単なものも治らない、本当はひどい病気なのに、「何でもない」とあしらわれる、などの問題が起こる場合もあります。
耳鼻咽喉科専門医に見てもらい、「他に異常が見られないし、扁桃腺につぶつぶができているから、扁桃腺が原因の可能性がある。リスクを覚悟で、摘出手術をしてもよい。」と言われ、この段階で初めて、医者から「扁桃腺」という言葉が出てきたのでした。「リスクって何ですか?」と聞くと、耳鼻咽喉科の先生は、「一番大きいリスクは、出血して止まらなくなること。」これに対して私が眉をひそめたのを見て、先生は、「まあ、でも、普通はあまり無く、比較的簡単な手術だけどね。」「扁桃腺が無い事で起こる障害はありますか?」「それは全くなし。免疫系がちゃんとできた後は、必要が無くなる器官だから。」とりあえずは、考える時間をあげると、3ヵ月後に再び予約を入れ、その間、「頻繁に、薄めの塩水でうがいするように。」3ヶ月間、やはり治らず、8月の終わりの再診の際に、耳鼻咽喉科科の先生は、「切ろう。これ以上、体調が悪いの我慢しても仕方ないでしょ。」病巣という言葉がありますが、悪いばい菌たちが、居心地の良い扁桃腺内に居座って、そこを根城にしてしまっていたのでしょうか。
手術後の出血の可能性は、100に1つだそうで、その中でも、長期入院が必要になるような重大な事態になるのは、めづらしい、という話です。ただし、大人になってから切ると、超痛いという事は聞いていたので、少々たじろいでいたのですが、先月手術と相成りました。
日本では、扁桃腺摘出手術は、1週間の入院のようですが、こちらでは、一日で病院から出されてしまいます。私は朝の7時半に病院に入り、ざっと身体検査をして、9時頃から手術。全身麻酔で、手術自体は10分から20分と短いもので、意識がもどって、看護婦さんが、私の名を呼びながら、「今、どこにいるかわかる?」と聞いてきたのは、11時半頃。その後、回復室のベッドにいる時に、手術をしたお医者さんが回ってきて「成功だよ。」と、言ってくれました。12時半にはベッドから立ち上がり、洋服に着換え、安楽椅子に移って、雑誌などを読みながら時間をつぶし。夕方5時くらいまで、回復室で過ごし、出血も無いし、正常と判断されて、迎えに来てくれただんなとご近所の人と一緒に帰宅。
意外だったのは、術後は、とにかく、痛くても、どんどん、何でも物を食べろ、と言われた事ですね。だから、食べることを止めないように、痛み止め薬は取ってくれとも言われ。やわらかい物ばかり食べずに、固めの物も食べるようにと。物を咀嚼することで、喉の筋肉を使い、固形物を飲み込むことで、喉の傷口付近にはりついているものを取り除く役割もあり、回復が早くなるのだと。当然、栄養を沢山取るという意味もありますし。その事が頭にあったので、回復室のベッドの上で、看護婦さんに、「紅茶とトーストいる?」と聞かれて、「お願い」と、出してもらいました。うさぎのアビーの様にアイスクリームは勧めてくれませんでしたが。お医者さんが回ってきたとき、私は、かじりかけのトーストを手に持っており、「お、もう食べてるのか?頼もしい。」と言われ。ただし、「紅茶は冷めるのをまってから飲んでね。」とアドバイス。この時は、2枚出してもらったトーストは、痛さのため、1枚しか食べられず、午後に出してもらったサンドイッチも、耳は全部取り除いて食べましたが。
麻酔が切れ始めて、最初に痛くなったのは、喉より、舌でした。これは、手術の際に、おそらく、喉が良く見えるよう、舌を押さえるための器材を使用するせいだと思います。また、口の両脇も少々、切れており、かなり大口を開けていたのでしょう。しばらくは、歯磨きのために口をあけるのも大変で、時に、歯磨き粉を指につけて、指で磨き、ついでに舌に変なものが生えてこないように、舌に張り付いているものも指でこそぎ落としていました。
舌の痛さは、付け根部分の鈍痛をのぞけば、大体1週間で消えましたが、喉の痛さは、2週間以上続きました。飲食はもちろん、唾液を飲み込むのも・・・超痛い!1週間でピークを迎える、と言われた通り、1週間後も、かなりの痛さで、これは、痛みが取れる日が来るのか・・・と弱気になったりもしました。それでも言われた通り、出来る限り普通の食べ物を、時に涙を垂らしながら飲み込んで。
悪臭がする痰が出てきた時は、病院に連絡を取ってくれ、と言われていましたが、2日後に悪臭の痰が出始め、4,5日たっても治らず、しかも強烈な頭痛を伴うようになってしまい、病院に連絡を取ると、GPから、すぐ抗生物質をもらってくれとの指示。さっそく、その日のうちにGPで処方箋をもらい、薬を飲み始め、これは、即効で利き、頭痛も、痰も止まりました。
また、やはり術後2日目の夜、鼻がつまった感じで、口をあけないと息ができなくなり、鼻をかんでも拉致があかないので、夜中、起き上がり、薄い塩水を使って鼻うがいをしました。鼻から水を通して口から吐き出す・・・というのは、慣れないと結構大変ですが、そうして吐き出した塩水には、汚い話で恐縮ですが、濃い黄褐色のぬるぬるしたものの他に、喉の上部に張り付いていたと思われる前日食べた物のかすなども混ざって、どろーっと出てきました。つまった配管掃除と同じで、こうした汚いものが出て来なくなり、吐き出す液体が透明になるまで、鼻うがいを繰り返しました。この夜間の鼻づまりは、鼻うがいを3夜ほど繰り返したおかげで、綺麗に掃除されたのか、無事止まり。こんな事も考えると、1週間も入院せず、他人に気兼ねすることなく、洗面所を自由に何回も使えるし、好きな場所でのんびり出来る家にいられて、本当に良かった。手術前に日本の母親と電話で喋っている時、「えー、その日に退院するの?すごいわね、イギリスは。」なんて言ってましたが。
飲み物は、ぬるま湯と、冷たい豆乳が一番飲みやすかったです。普段は、毎朝楽しみにしている、朝の紅茶が、全く美味しいとも思えず、飲みにくく、2週間位してから、やっと紅茶が美味しいと思えた時に、ほっとしました。後は、果物は、物によって、非常に喉にしみて、あわてて、水で喉から流し落とす事などもありました。飲みやすいのではないかと口にしたバナナのミルクシェークなども、喉を刺激し、むせかえって吐き出し、ひりひりの痛さをやわらげるため、水をがぶ飲みし、大急ぎで真水のうがいをしました。トマトも結構、喉にヒリッと来たので、最近まで避けていた食べ物のひとつです。果物類で、一番食べやすかったのはブドウと小さく切ったりんご。意外と美味しいと思えたのが、バターをぬったトーストでしたね。当然飲み込むのは痛かったのですが、味が普通に美味しいと思え、朝も昼も、トーストはよく口にしました。おかゆなども作って、よく食べましたが、咀嚼が必要な野菜類や、栄養になるように卵なども必ず入れて作っていました。
他に病院から言われた注意事項としては、頻繁にマウスウォッシュか薄めの塩水で口内を清潔にすること。水分を良く取り、喉を潤すこと。ガムを噛むと唾液が沢山出て、口を潤す効果があるという人もいるようです。あとは、2週間はできるだけ、スーパーなど、人の多い場所は避けて、なるべく、人にも会わず、必要の無い外出もしないようにという指示も。食べるのも大変ですが、喋るのも、しばらくは痛くて一苦労で、他人と会ってお喋り、などという気は全くおこらなかったです。最初のうちは、舌もまわらなかったですしね。喉を痛めずに喋ろうと、思いっきりお腹を使った腹式呼吸で喋っていました。また、1週間後くらいから、耳も痛くなりましたが、これは、扁桃腺を取った直後、よくある事だそうですので、あまり心配しないようにと言われました。
簡単な家事や雑事は翌日からしていたものの、痛さと倦怠感で、何をやるのもあまり手がつかず、とにかくDVDで映画を見るくらいが楽しみでしたので、何が何だかわからなくなるほど、それは沢山の映画を見ました。気がまぎれるし、療養中一番です。手術前に、常々見たかった、テレビのシリーズ物のDVDを入手しておくのもいいかもしれません。
術後約3週間、ほぼ痛みを感じず飲食できるようになっています。それこそ、喉もと過ぎれば熱さ忘れるで、半端ではなく痛かった事なども、すでに忘れ始めています。痛みの減少は、調子が悪かった左側の方が、ぐずぐずと治りが遅く、良くなりつつある現在ですら、左側に多少の違和感が残っています。扁桃腺が原因じゃなかったのではないか・・・無駄な手術だったか・・・と多少気になっていますが、少なくとも、以前の塗れたスポンジが左側の喉に張り付いてる感覚は、今のところ、なくなっています。早く、普通の生活に戻り、3年間悩まされた左側の喉と耳の痛みも、永久にさってくれると有難いですが。今は様子見、「Wait and see...」と言ったところです。
上の絵は、1968年に出版された、アメリカの人気絵本作家リチャード・スカーリー(Richard Scarry)によるものですが、子うさぎのアビーが病院に行き、ドクター・ライオンに、扁桃腺を取る手術をしてもらう、という内容。ドクター・ライオンは、アビーの喉を除きこみ、「とても悪いtonsils(扁桃腺)だ。切らないと。明日病院へおいで。」と事も無げに。
翌日病院へ行ったアビーは全身麻酔で手術。アビーが寝ている間に、ドクター・ライオンは、アビーを丸呑みにして食べてしまいました・・・・なんて、はずは無く、手術が成功したアビーはちゃんと目覚め、
喉が痛くなっていたけれど、アイスクリームを食べてちょっと元気になりました・・・と。隣のベッドの犬のロジャーもすでに手術を終えて、アイスクリームを食べた後。子供の扁桃腺摘出は、アメリカでも当時、多く行われた手術であったのでしょう。子うさぎですら、こうして手術をして、すぐ、ニコニコしているのだから、大丈夫だよ、と子供に安心させるのが目的で書かれたのだと思います。この本、「扁桃腺を取るのは日常茶飯事」のような感覚で、なかなか面白い時代物です。
昨今、トレンドの変化で、切ってもあまり意味が無いケースが多いのか、ちょっとやそっとでは、切らない事が多くなっているようです。そのためか、大人になってから、異常を起こした扁桃腺を切る、という人も増えているという話です。私もその1人で先月、扁桃腺を切りました。もっとも、私は、子供の時は、扁桃腺に問題を起こすことなどは一切無かったのですが。
という事で、大人になってから扁桃腺手術をむかえようとする人に、何かの参考になるかと、扁桃腺摘出手術体験談を載せておきます。ただし、扁桃腺を取る理由も、術後の経過も、ケース・バイ・ケースで個人差があるでしょうから、私の体験談から、参考になると思われる部分だけ取って、他の体験談なども読んだり、聞いたりしてみて下さい。
私の場合は、もともとは、かれこれ3年前に起こった左耳の痛みで始まり、痛みは、医者から出してもらって抗生物質を取っても治らず、そうこうするうち、今度は、左側の喉が痛み始め、日によって痛みの強度に度合いはあるものの、常に、左側の喉に湿ったスポンジが張り付いているような感覚で、痛みがひどい時は、痰などもしょっちゅう出て、風邪をひくと、治るのにそれは長い期間を必要とするようになり、左側の喉から耳にかけてじんじんと痛むのでした。
一般に扁桃腺に問題がある人の様に、熱などは一度も出したことがないので、自分でも扁桃腺の問題とは考えもせず、こちらでは、よくある話ですが、何回か足を運んだ家庭医には、「気のせい」とあしらわれました。あまりにも長引き、治らないので、ついに見切りをつけ、家庭医を変えて、やっと、新しい家庭医に頼んで、専門医に紹介してもらったのが、今年の5月。イギリスでは、直接、内科なり、外科なりの専門医に会うことができず、最初は、全て、何でも屋さんの家庭医(GP)に見てもらい、GPが、更なる検査が必要と決めると初めて、専門医に紹介してもらうシステムなのです。ですから、GPの腕や処置判断が悪いと、いつまでも、簡単なものも治らない、本当はひどい病気なのに、「何でもない」とあしらわれる、などの問題が起こる場合もあります。
耳鼻咽喉科専門医に見てもらい、「他に異常が見られないし、扁桃腺につぶつぶができているから、扁桃腺が原因の可能性がある。リスクを覚悟で、摘出手術をしてもよい。」と言われ、この段階で初めて、医者から「扁桃腺」という言葉が出てきたのでした。「リスクって何ですか?」と聞くと、耳鼻咽喉科の先生は、「一番大きいリスクは、出血して止まらなくなること。」これに対して私が眉をひそめたのを見て、先生は、「まあ、でも、普通はあまり無く、比較的簡単な手術だけどね。」「扁桃腺が無い事で起こる障害はありますか?」「それは全くなし。免疫系がちゃんとできた後は、必要が無くなる器官だから。」とりあえずは、考える時間をあげると、3ヵ月後に再び予約を入れ、その間、「頻繁に、薄めの塩水でうがいするように。」3ヶ月間、やはり治らず、8月の終わりの再診の際に、耳鼻咽喉科科の先生は、「切ろう。これ以上、体調が悪いの我慢しても仕方ないでしょ。」病巣という言葉がありますが、悪いばい菌たちが、居心地の良い扁桃腺内に居座って、そこを根城にしてしまっていたのでしょうか。
手術後の出血の可能性は、100に1つだそうで、その中でも、長期入院が必要になるような重大な事態になるのは、めづらしい、という話です。ただし、大人になってから切ると、超痛いという事は聞いていたので、少々たじろいでいたのですが、先月手術と相成りました。
日本では、扁桃腺摘出手術は、1週間の入院のようですが、こちらでは、一日で病院から出されてしまいます。私は朝の7時半に病院に入り、ざっと身体検査をして、9時頃から手術。全身麻酔で、手術自体は10分から20分と短いもので、意識がもどって、看護婦さんが、私の名を呼びながら、「今、どこにいるかわかる?」と聞いてきたのは、11時半頃。その後、回復室のベッドにいる時に、手術をしたお医者さんが回ってきて「成功だよ。」と、言ってくれました。12時半にはベッドから立ち上がり、洋服に着換え、安楽椅子に移って、雑誌などを読みながら時間をつぶし。夕方5時くらいまで、回復室で過ごし、出血も無いし、正常と判断されて、迎えに来てくれただんなとご近所の人と一緒に帰宅。
意外だったのは、術後は、とにかく、痛くても、どんどん、何でも物を食べろ、と言われた事ですね。だから、食べることを止めないように、痛み止め薬は取ってくれとも言われ。やわらかい物ばかり食べずに、固めの物も食べるようにと。物を咀嚼することで、喉の筋肉を使い、固形物を飲み込むことで、喉の傷口付近にはりついているものを取り除く役割もあり、回復が早くなるのだと。当然、栄養を沢山取るという意味もありますし。その事が頭にあったので、回復室のベッドの上で、看護婦さんに、「紅茶とトーストいる?」と聞かれて、「お願い」と、出してもらいました。うさぎのアビーの様にアイスクリームは勧めてくれませんでしたが。お医者さんが回ってきたとき、私は、かじりかけのトーストを手に持っており、「お、もう食べてるのか?頼もしい。」と言われ。ただし、「紅茶は冷めるのをまってから飲んでね。」とアドバイス。この時は、2枚出してもらったトーストは、痛さのため、1枚しか食べられず、午後に出してもらったサンドイッチも、耳は全部取り除いて食べましたが。
麻酔が切れ始めて、最初に痛くなったのは、喉より、舌でした。これは、手術の際に、おそらく、喉が良く見えるよう、舌を押さえるための器材を使用するせいだと思います。また、口の両脇も少々、切れており、かなり大口を開けていたのでしょう。しばらくは、歯磨きのために口をあけるのも大変で、時に、歯磨き粉を指につけて、指で磨き、ついでに舌に変なものが生えてこないように、舌に張り付いているものも指でこそぎ落としていました。
舌の痛さは、付け根部分の鈍痛をのぞけば、大体1週間で消えましたが、喉の痛さは、2週間以上続きました。飲食はもちろん、唾液を飲み込むのも・・・超痛い!1週間でピークを迎える、と言われた通り、1週間後も、かなりの痛さで、これは、痛みが取れる日が来るのか・・・と弱気になったりもしました。それでも言われた通り、出来る限り普通の食べ物を、時に涙を垂らしながら飲み込んで。
悪臭がする痰が出てきた時は、病院に連絡を取ってくれ、と言われていましたが、2日後に悪臭の痰が出始め、4,5日たっても治らず、しかも強烈な頭痛を伴うようになってしまい、病院に連絡を取ると、GPから、すぐ抗生物質をもらってくれとの指示。さっそく、その日のうちにGPで処方箋をもらい、薬を飲み始め、これは、即効で利き、頭痛も、痰も止まりました。
また、やはり術後2日目の夜、鼻がつまった感じで、口をあけないと息ができなくなり、鼻をかんでも拉致があかないので、夜中、起き上がり、薄い塩水を使って鼻うがいをしました。鼻から水を通して口から吐き出す・・・というのは、慣れないと結構大変ですが、そうして吐き出した塩水には、汚い話で恐縮ですが、濃い黄褐色のぬるぬるしたものの他に、喉の上部に張り付いていたと思われる前日食べた物のかすなども混ざって、どろーっと出てきました。つまった配管掃除と同じで、こうした汚いものが出て来なくなり、吐き出す液体が透明になるまで、鼻うがいを繰り返しました。この夜間の鼻づまりは、鼻うがいを3夜ほど繰り返したおかげで、綺麗に掃除されたのか、無事止まり。こんな事も考えると、1週間も入院せず、他人に気兼ねすることなく、洗面所を自由に何回も使えるし、好きな場所でのんびり出来る家にいられて、本当に良かった。手術前に日本の母親と電話で喋っている時、「えー、その日に退院するの?すごいわね、イギリスは。」なんて言ってましたが。
飲み物は、ぬるま湯と、冷たい豆乳が一番飲みやすかったです。普段は、毎朝楽しみにしている、朝の紅茶が、全く美味しいとも思えず、飲みにくく、2週間位してから、やっと紅茶が美味しいと思えた時に、ほっとしました。後は、果物は、物によって、非常に喉にしみて、あわてて、水で喉から流し落とす事などもありました。飲みやすいのではないかと口にしたバナナのミルクシェークなども、喉を刺激し、むせかえって吐き出し、ひりひりの痛さをやわらげるため、水をがぶ飲みし、大急ぎで真水のうがいをしました。トマトも結構、喉にヒリッと来たので、最近まで避けていた食べ物のひとつです。果物類で、一番食べやすかったのはブドウと小さく切ったりんご。意外と美味しいと思えたのが、バターをぬったトーストでしたね。当然飲み込むのは痛かったのですが、味が普通に美味しいと思え、朝も昼も、トーストはよく口にしました。おかゆなども作って、よく食べましたが、咀嚼が必要な野菜類や、栄養になるように卵なども必ず入れて作っていました。
他に病院から言われた注意事項としては、頻繁にマウスウォッシュか薄めの塩水で口内を清潔にすること。水分を良く取り、喉を潤すこと。ガムを噛むと唾液が沢山出て、口を潤す効果があるという人もいるようです。あとは、2週間はできるだけ、スーパーなど、人の多い場所は避けて、なるべく、人にも会わず、必要の無い外出もしないようにという指示も。食べるのも大変ですが、喋るのも、しばらくは痛くて一苦労で、他人と会ってお喋り、などという気は全くおこらなかったです。最初のうちは、舌もまわらなかったですしね。喉を痛めずに喋ろうと、思いっきりお腹を使った腹式呼吸で喋っていました。また、1週間後くらいから、耳も痛くなりましたが、これは、扁桃腺を取った直後、よくある事だそうですので、あまり心配しないようにと言われました。
簡単な家事や雑事は翌日からしていたものの、痛さと倦怠感で、何をやるのもあまり手がつかず、とにかくDVDで映画を見るくらいが楽しみでしたので、何が何だかわからなくなるほど、それは沢山の映画を見ました。気がまぎれるし、療養中一番です。手術前に、常々見たかった、テレビのシリーズ物のDVDを入手しておくのもいいかもしれません。
術後約3週間、ほぼ痛みを感じず飲食できるようになっています。それこそ、喉もと過ぎれば熱さ忘れるで、半端ではなく痛かった事なども、すでに忘れ始めています。痛みの減少は、調子が悪かった左側の方が、ぐずぐずと治りが遅く、良くなりつつある現在ですら、左側に多少の違和感が残っています。扁桃腺が原因じゃなかったのではないか・・・無駄な手術だったか・・・と多少気になっていますが、少なくとも、以前の塗れたスポンジが左側の喉に張り付いてる感覚は、今のところ、なくなっています。早く、普通の生活に戻り、3年間悩まされた左側の喉と耳の痛みも、永久にさってくれると有難いですが。今は様子見、「Wait and see...」と言ったところです。
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