オーストリア土産はモーツァルトクーゲル

今年は、春に、1年ほどなりを潜めていた、だんなのが白血病が背骨へと移転してしまいました。珍しいケースなのだそうですが、またもや、貧乏くじを引いた感じです。初夏はキモセラピーのための入院、真夏は1ヶ月毎日続いた放射線治療、その後、2ヶ月ほど、血液の数値があがらずに、週に2,3回、輸血のために病院通いと、振り向くと、わりと大変な年ではありました。「治った!」と思って、再発という状態に慣れっこになりつつあり、ショック感が鈍化して、それなりの日常を送れる様になっています。発病から4年と3ヶ月、有難い事に、まだ生きてますし。日本の母親が、学校時代の同窓会を、「生きてるかい?」と命名したと言っていました。名簿係の人は、毎年、死んでしまった人の名を、横線で消しているのだそうで、先月の同窓会でも「死んでしまうと、こうして横線引かれてしまいますからね。皆さん、健康に注意してがんばって長生きしましょう!」とお開きになったようです。うちも、まさにそんな感じ。

先日、だんなは、単発で、オーストリアはウィーンでの仕事をいきなり依頼されました。肺も弱っており、ぜいぜいする事もあるので、酸素の少ない飛行機に乗って良いものか・・・という心配はあったものの、何人かの医者に聞き、まあ、大丈夫だろうという事で、発病してから初めて海外へ、1日ですが、ぽこぽこ出かけて行っていました。べニューがホテル内であったため、空港ーホテルー空港、ちょっとだけ外のレストラン、という典型的ビジネス旅行で、クリスマス迫るウィーンの町並みを楽しむなどという事はできなかったようですが、「全然、問題なかった」と帰国。「何かをやった」という気持が、楽しかったようで、引き受けて良かった、と喜んでいました。帰りの空港で、お土産に買ってきたのは、赤いコートを着たモーツアルトの絵の包み紙にくるまったお菓子、モーツァルトクーゲルと、ホテル・ザッハーの缶入りファッジ・ケーキ。

モーツァルトクーゲル(Mozartkugel)は、1890年に遡り、モーツァルトの故郷のザルツブルクのチョコレート職人であったパウル・フュルストが考案し、1905年、パリで開催されたお菓子展示会で、堂々の金賞を取った代物なのだそうです。クーゲル(Kugel)は「球」の意味で、クーゲルン(Kugeln)はその複数形。英語では往々にしてモーツァルトボールなどとも呼ばれています。

成功すると、真似する菓子屋が沢山出てくるのは必然で、違う会社による、いくつかのモーツァルトクーゲルが存在します。菓子名をめぐってのバトルもあり、現在も手作りだというフュルストのクーゲル(上の写真)のみが、オリジナル(元祖)・ザルツブルク・モーツァルトクーゲルと呼ばれる権利を有しているのだそうで、ザルツブルクのフュルスト店でのみ販売されているという事です。美味しいかもしれませんが、高そうですね。

ザルツブルクの観光案内サイトによると、「ザルツブルクへ来たからには、モーツァルトクーゲルンを買わねばなりませんぞ。モーツァルトクーゲルン無しで帰ったら、ザルツブルクへ来なかったのと同じ事ですから。」などと書かれていました。また、モーツァルトクーゲルンと言えどもピンきりですので、気をつけて買いましょうとあり。同サイトに紹介されていたのは、元祖フュルストのものと、比較的高めのものとして、ドイツのレーバー(Reber)社のもの、そして中くらいの値段のものとしては、地元ザルツブルグのミラベル(Mirabell)社のもの。その他にも、「オーストリア中のスーパーで、質は落ちるが値段の低いものも多々あり」だそうです。

一般的に一番出回っており、海外への輸出も多いのが、ドイツのレーバー社製のものだと言います。これは、球形ではなく、おしりの部分が平らで、すわり心地良い形。だんなが今回買ってきた物も、レーバー・モーツァルトクーゲルンですし、私が、昔、オーストリア旅行で土産に買ったのもこれでした。ザルツブルクにも足を伸ばしたのですけどね。確かに缶の裏を見ると、Germanyと書いてあるのです。レーバー社は、ザルツブルクから日帰り旅行が出来る距離の、ドイツのスパ・タウン、バード・ライケンハル(Bad Reichenhall )にあるのだそうですが、この町の写真を見たらそれは美しい場所。それにしても、ドイツは、車や機械、道具類の他にも、単価の低い鉛筆の様なものから、お菓子まで製造して輸出しているんですよね。効率良くやって、製造費を抑えているから商売になってるのでしょうが、すたれてしまっているイギリスの製造業界は、何故に、同じような事ができないのか・・・!昔はイギリスにも沢山あったお菓子製造社なども、次々、外国の企業に買われ製造も国外へ移動してしまっている始末。

貧乏だったけれど、お洒落好きで、お金がいつも指からすり抜けてしまっていたというモーツァルト。「素敵な赤いコートを買った」という手紙の記述も残っているようですが、赤いコートを着ている姿の印象が強い人ではあります。それも、このレーバー・モーツァルトクーゲルンのせいか?子供のための世界偉人伝シリーズが日本の実家にありましたが、このシリーズのモーツァルトの巻の表紙に描かれていた肖像も、赤いコート着用で同じ角度から描いた顔だった気がします。

チョコレートにコーティングされた内部はマジパン、そしてその中心にヌガー。マジパンはクリスマスのイメージがありますから、季節柄も雰囲気にあったお菓子です。ホテル・ザッハーのファッジ・ケーキは、クリスマスのデザート用に取っておきましょっと。

モーツァルトクーゲルを頬張りながら、見たくなった映画は・・・そう、「アマデウス」です。

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