モグラのスウィートホーム

クリスマスが近づいてきています。当ブログの過去の記事で何回も言及している、児童文学 「たのしい川べ」 (Wind in the Willows)の中で、私の大好きなエピソードのひとつは、第5章「Dulce Domum」。「Dulce Domum」はラテン語。英語に訳すと「Sweet Home」。時期的にも、クリスマスの直前の話なので、この頃に思い出す事が多いエピソードです。 この章の話の筋は、 モグラは、春の気配に誘われて、外に飛び出し、川辺にて、川ネズミとめぐり合って以来、川ネズミの家に移り住み、そこで光溢れる外界での生活を楽しんでいたのです。そのまま、季節が移り、すっかり、自分の昔の地下の住処のことなどを忘れていたのですが・・・クリスマス迫るある寒い夕刻、川ネズミとモグラが、川ネズミ宅に戻るため早足で歩いていたところ、モグラの鼻に、いきなりなつかしい自分の住処の臭いが感じ取られるのです。電撃に打たれたように、いきなり過去の家での思い出が戻ってきたモグラは、家が近くにあると感じ、先を歩くネズミに呼びかけるのですが、急ぐネズミは、振り向かず、すたすた行ってしまう。仕方なく、ネズミの後を追い、しばらく歩いた後、モグラの様子がおかしいのに気付く川ネズミは、ちょっと休憩を取るのです。そこで、モグラは、こらえていた涙がどーっと出てくる。このくだりを初めて読んだとき、モグラに同情して、もらい泣きしました。 "I know it's a—shabby, dingy little place," he sobbed forth at last brokenly: "not like—your cosy quarters—or Toad's beautiful hall—or Badger's great house—but it was my own little home—and I was fond of it—and I went away and forgot all about it—and then I smelt it suddenly—on the road, when I called and you wouldn't listen, Rat—and everything came ...