ブレグジット騒動は続く
ホンダがウィルトシャー州スウィンドンに約30年以上存在している工場を2021年に閉鎖するアナウンスを聞きました。サンダーランドにあるニッサン同様、今ではスウィンドンというとホンダという方程式の様に定着した感があるのに。両社とも、私がこの国に来た時と、大体同じ時期にイギリスにやって来ているので、この撤退には、一抹の寂しさを感じます。
スウィンドンもサンダーランドも、日系企業が、ブレグジットを望まないという態度を示していたに関わらず、国民投票では、大幅に、EU離脱に投票した街なので、たとえ、この結果、大量失業が出て、町がすたれて行っても、自業自得とも言えるのですが。ホンダは、閉鎖決断はブレグジットとは関係ない、と言っているものの、製造した車の90%を、ヨーロッパとアメリカに輸出している工場の閉鎖に、ブレグジットが関係ないわけがない。しかも、サッチャーさんに、「EUの拠点として、イギリスはいいですよ~」と熱いラブ・コールを送られた結果、80年代にやって来て、それぞれ、長期的視野で辛抱強く投資を展開してきたのに、このブレグジット騒動には、イギリスにしてやられた、という苦い気持ちも、両社とも持っている事でしょう。しかも、日本とEUが貿易協定を結んだ後とあって、もう、現在の信頼おけないイギリスに義理を尽くす必要もないですから。
日本の母親と電話で喋っていて、「そっち、大変みたいだけど、何が何だかわからない。」などと言っていました。気分が暗くなるので、ブレグジットの事は、しばらくブログに書かなかったのですが、これを機に、この後、どういう風にブレグジットに突入するのか、または、突入しそうなのか、簡単に説明を書くことにしました。
まず、イギリスがEUのメンバーでなくなるのは、3月29日なので、あと、1か月とちょっと。それまでに、イギリス政府が何をすべきかというのは、EUとの離脱協定(Withdrawal Agreement)を結ぶこと。去年の11月25日に、テレーザ・メイとEUの間で、とりあえず合意した現状の離脱協定案には、3つ大切な要素が入っていますが、それは、
離脱に当たり、イギリスがEUに支払う金額(今の段階では39兆ポンドほど)
イギリスに住むEU市民、EUに住むイギリス国民のそれぞれの権利の保護
北アイルランドとアイルランドの境界に関する予備対策(バックストップ)
鍵となる、北アイルランド・バックストップについて、詳しくは、当記事の最後にまとめましたので、そちらを参考ください。このバックストップを協定に入れることを嫌う、離脱強硬派の議員が多く、離脱協定案は英国議会で否決され、テレーザ・メイは、再びEUに舞い戻って、何とか、英国議会を通すことができるような変更を要求していますが、EU側は、今のところは、妥協の気配を見せていません。ややこしいことに、現状の協定案に反対を示しているのは、離脱強硬派のみにとどまらず、できる限り、現状に近い形での離脱をはかるか、第2の国民投票を希望する、EU在留支持の議員にも多い事。各陣営それぞれの理由で反対して、全く統制が取れていない状態です。
さて、とりあえず、ここで、3月29日までに、離脱協定案が、何とか、イギリス国会を通り、合意されたと仮定します。その際、イギリスは、2019年3月29日から、2020年12月31日まで、ブレグジット過渡期(Transition Period)へ突入する事になります。この期間中、イギリスは、EUのメンバーでは無いものの、欧州関税同盟(カスタムズ・ユニオン)、欧州の単一市場(シングル・マーケット)に参加したまま、EU内の規律にも従う事になります。ですから、EUとの関係は、今までと一切変化なし。ただし、もうメンバーではないので、EU内での話し合いへの参加はできず、EU内での決議事項への投票権を失います。そして、この間に、イギリスは、それぞれのEUの国々と、別々に、貿易その他に関するネゴを行い、新しい関係を約2年間で取り決める事となります。要は、貿易交渉などは、今の時点では、まだ全く始まっていないのです。こうした話し合いは往々にして、非常に長い時間がかかるため、この過渡期は、2年の延長が可能。ですから2022年の末まで、この状態が、そのまま、ずるずると続く可能性もあるわけです。
そして、もし、離脱協定案の合意が得られなかった場合・・・!これは、こちらでは、ノーディール・ブレグジットとか、クリフ・エッジ(崖っぷち)、などと呼ばれています。「合意なき離脱」というやつ。
合意なしで、3月29日にEU離脱となると、イギリスは、上記の2年の過渡期がないまま、関税同盟や単一市場を含め、その他もろもろの今まで存在していたEUとの取り決めから、すべて絆を、一夜にして絶たれてしまう、という恐ろしいことになります。まさに、崖っぷちから転がり落ちるようなもの。今まで、何の検査もなしに自由に行き来できていた物資が、それぞれの港で検査を受けることとなり、ドーバーなどの大切な港では、それに時間がかかり、足止めを食ったトラックの列が場合によっては、はるか地平線のかなたまで続くなどという大混乱をきたす恐れがあります。これが、スペインからのトマトやきゅうりなどの腐る可能性のある商品だったりすると、こんな状況に陥った場合、商品として役立たず。ですから、合意なき離脱になった場合に、ヨーロッパから、商品の出荷が行われない事もあり、そうなると、イギリスは食糧危機?そんなこんなで、今から、缶詰などの買いだめに走っている個人も出てきている始末。イギリスの医療機関のNHSも、万が一に備えて、薬品の買いだめ。スーパーも、保存のきくものは、倉庫にぎっしり買いだめ。食品だけに限らず、自動車工場など製造業でも、EUから部品を輸入している場合は、製造に支障がでるため、やはり今から準備の部品買いだめ。なんでも、現在、イギリス国内の倉庫のスペースは無くなってきていて、開いている倉庫があると、かなり高い値段で貸し出されているという話も徘徊しています。そして、当然、こちらから何かをEUへ輸出しようとするときには、今まで無かった関税がかかり、やはり検査が入ることとなります。
在留支持派の議員たちは、どう考えてもイギリス経済に大打撃を与えかねない、この合意なき離脱を避けたいため、テリーザ・メイから、それは絶対あり得ないという約束を取り付けようとしているものの、テリーザ・メイは一向にその様子を見せず。一方、保守党内部の離脱強硬派は、EUからの完全な離脱を求めるため、合意なき離脱でもいい、という信じられない見解も見せています。テレーザ・メイは、こうした党内での極右派をなだめるため、合意なき離脱の可能性を否定しないのと、とにかく、何が何でも、現状の離脱協定案を議会で承認させるため、ゆーっくりと進行をのろめての、時間稼ぎ(running down the clock)作戦。結果、もう、あまり時間が残っていないというのを理由に、「私のこの離脱協定案に賛成しないと、このまま合意なき離脱よ。それでいいの?」と議員たちを脅して、とにかく、自分の協定案で、ブレグジットを決行しようとしている感じです。国の将来がかかっているというのに、こんな博打じみた作戦に出るなんて、とんでもないおばさんです。次回の、この離脱協定案の投票は、今月27日に行われるようですが、EUから一切変更を認められずに、テリーザ・メイの離脱協定案が、イギリス国会でまた否決されたらその後はどうなるのか・・・ブレグジット悲喜劇は続きます。(追記:離脱協定案の投票は、再びメイおばさんの、時間稼ぎ大作戦により、3月12日へ延期されました。)
また、一般のブレグジットに投票した国民の中にも、とにかく、すぐにでもEUから出て行きたいたいのに、なんでこんなに時間がかかってるんだ、「Get on with it !」(とっととやれ!)などと言って、合意なき離脱でいい、などと豪語している者も結構いるのです。こういう人に限って、一切、ニュースを読んでおらず、詳細は全く知らないまま、面倒くさい、なんとかなる、イギリスは立派な国だから大丈夫、偏見からくるEUへの嫌悪感という、非常に怠惰な理由から、合意なき離脱を支持している。実際、合意なき離脱とは何なのか、よくわかってないのに賛成している人も沢山いるのです。傍から見ると、ただの経済的自殺行為でしょうに。根本的に、こういった人たちは、イギリス人は素晴らしい、イギリスは偉大な国、という今ではもう根拠のない、妙なプライドや傲慢さを持っている。大体、製造業を、ホンダやニッサンなどの他国の投資に頼っている国の、この傲慢さ、一体どこから来るのでしょうね。イギリスが過去偉大な国であったとしても、それは、こうした人物たちのおかげでない事は確かです。自分だけで幻想の世界に住むのはいいが、残留に投票した他の国民を共に引きずりおろすことになります。
以前、ロンドンのパブで、国民投票でEU残留に投票したおじいさんと話していた時、「今の世の中、協力がますます必要となっているのに、自らEUを出て行こうなどと、どう考えても良くない。この国が、自分だけで、何かをできると思うのは間違ってる。」と言っていたので、私が、「第2次世界大戦で、ナチスドイツに勝ったというのが、いまだに、妙な自信へとつながって、何とかなると思っている人が、わりと沢山いるんじゃないですか?」と言うと。「だって、第2次世界大戦だって、アメリカも含めて、みんなが協力したから何とかなったのに。イギリスだけだったら、負けてた。」ごもっとも。その後、「これから大変なことになりそうな気がする。僕はともかく、次の世代がかわいそうだ。」とため息をついていました。
という事で、いまだに、どんな形でイギリスがブレグジットをするのかわかっていない状況で、しびれを切らしたビジネスは、次々と、沈んでいく船を捨てるように、大陸ヨーロッパへ拠点を移動させたりもしています。ソニーとパナソニックがEUの本部を、イギリスからオランダに移したというニュースが入り、ホンダのように、丸々閉じてしまう会社もあり。また、イギリス掃除機の会社ダイソン社のジェームズ・ダイソンなどは、EU離脱を支持しながら、自分の会社の本部をとっとと、EUと貿易協定を持つシンガポールに移動させるという事をしています。イギリスの経済に打撃を与える事を支持して、自分は、EUとの取引を続けられるよう、とんずらとは、なんたる偽善者。ダイソンの掃除機なんて買いたいと思った事もないけれど、ますます、買いたくなくなりました。掃除機なんて、つまらんデザイン性のためにダイソンに高額を払うより、しっかり作られていて長く使えるドイツ製、または日本製を買った方がずっーといいです。
と、文句いっぱいになってきたところで、力尽き、本日はこの辺にしておきます。
北アイルランド・バックストップについて
まず、バックストップという言葉は、野球の用語だそうで、観客を、飛んできたボールから守るため、打者の後ろにあるネットや壁などの事。いざという時の、安全対策。
北アイルランドはイギリスに属しますが、お隣さんのアイルランド共和国は独立国でEUメンバー。現在は、イギリスもEUメンバーであるため、この2つの地域の国境には検問など一切なく、人も物も、自由に行き来できています。が、これがイギリスがEUから出ていくとなると、そでは国境はどうするんだ、という問題になる。
プロテスタントの住民と、カソリックの住民の紛争で、イギリス政府を悩ませ続けた北アイルランド問題は、1998年4月の平和協定、グッド・フライデー・アグリーメント(ベルファスト合意)で、一応、解決を見たのですが、この合意の中に、アイルランド共和国と、北アイルランドの国境に、以前のように、テロと暴力のターゲットとなりえる、壁や検問などの、人と物の行き来の妨げになるものを作らない、というのがあるのだそうです。イギリスは、この協定項目を破らないような、貿易条約を結び、EUから離脱することができるのか。ブレグジット過渡期中に、検問無しの国境を必須条項とした貿易協定をイギリスが結べずに終わる場合、このバックストップという安全対策が実行される事になります。内容は、北アイルランドもイギリス本土も、一時的に(解決策が見つかるまで)、物資や人の移動に関しては、EUの関税同盟と、単一市場に留まるというもの。一時的、などと言っても、これはずるずると半永久的に続く可能性もあり。
これには、とにかくEUとの縁をばしっと切りたい保守党内の右派である離脱強硬派と、現在過半数に満たないテリーザ・メイの保守党と協力をしている北アイルランドのDUP(民主統一党)の10人の議員たちが、頑として反対。DUPは、アイルランドのプロテスタントの政党でも最右派で、国民投票でもEU離脱を支持。妊娠中絶反対、地球温暖化を信じないなど、社会的にも非常に保守的な政党です。テリーザ・メイは、この党内極右派とDUPの意見を、常に考慮しなければならない現状です。
EUは、メンバー国であるアイルランド共和国の平和と、ベルファスト合意を守りながらも、EU単一市場内に、イギリスから、検査なしの怪しげな物資が流れ込まないよう、バックストップは絶対必要であると、主張しています。
スウィンドンもサンダーランドも、日系企業が、ブレグジットを望まないという態度を示していたに関わらず、国民投票では、大幅に、EU離脱に投票した街なので、たとえ、この結果、大量失業が出て、町がすたれて行っても、自業自得とも言えるのですが。ホンダは、閉鎖決断はブレグジットとは関係ない、と言っているものの、製造した車の90%を、ヨーロッパとアメリカに輸出している工場の閉鎖に、ブレグジットが関係ないわけがない。しかも、サッチャーさんに、「EUの拠点として、イギリスはいいですよ~」と熱いラブ・コールを送られた結果、80年代にやって来て、それぞれ、長期的視野で辛抱強く投資を展開してきたのに、このブレグジット騒動には、イギリスにしてやられた、という苦い気持ちも、両社とも持っている事でしょう。しかも、日本とEUが貿易協定を結んだ後とあって、もう、現在の信頼おけないイギリスに義理を尽くす必要もないですから。
日本の母親と電話で喋っていて、「そっち、大変みたいだけど、何が何だかわからない。」などと言っていました。気分が暗くなるので、ブレグジットの事は、しばらくブログに書かなかったのですが、これを機に、この後、どういう風にブレグジットに突入するのか、または、突入しそうなのか、簡単に説明を書くことにしました。
まず、イギリスがEUのメンバーでなくなるのは、3月29日なので、あと、1か月とちょっと。それまでに、イギリス政府が何をすべきかというのは、EUとの離脱協定(Withdrawal Agreement)を結ぶこと。去年の11月25日に、テレーザ・メイとEUの間で、とりあえず合意した現状の離脱協定案には、3つ大切な要素が入っていますが、それは、
離脱に当たり、イギリスがEUに支払う金額(今の段階では39兆ポンドほど)
イギリスに住むEU市民、EUに住むイギリス国民のそれぞれの権利の保護
北アイルランドとアイルランドの境界に関する予備対策(バックストップ)
鍵となる、北アイルランド・バックストップについて、詳しくは、当記事の最後にまとめましたので、そちらを参考ください。このバックストップを協定に入れることを嫌う、離脱強硬派の議員が多く、離脱協定案は英国議会で否決され、テレーザ・メイは、再びEUに舞い戻って、何とか、英国議会を通すことができるような変更を要求していますが、EU側は、今のところは、妥協の気配を見せていません。ややこしいことに、現状の協定案に反対を示しているのは、離脱強硬派のみにとどまらず、できる限り、現状に近い形での離脱をはかるか、第2の国民投票を希望する、EU在留支持の議員にも多い事。各陣営それぞれの理由で反対して、全く統制が取れていない状態です。
さて、とりあえず、ここで、3月29日までに、離脱協定案が、何とか、イギリス国会を通り、合意されたと仮定します。その際、イギリスは、2019年3月29日から、2020年12月31日まで、ブレグジット過渡期(Transition Period)へ突入する事になります。この期間中、イギリスは、EUのメンバーでは無いものの、欧州関税同盟(カスタムズ・ユニオン)、欧州の単一市場(シングル・マーケット)に参加したまま、EU内の規律にも従う事になります。ですから、EUとの関係は、今までと一切変化なし。ただし、もうメンバーではないので、EU内での話し合いへの参加はできず、EU内での決議事項への投票権を失います。そして、この間に、イギリスは、それぞれのEUの国々と、別々に、貿易その他に関するネゴを行い、新しい関係を約2年間で取り決める事となります。要は、貿易交渉などは、今の時点では、まだ全く始まっていないのです。こうした話し合いは往々にして、非常に長い時間がかかるため、この過渡期は、2年の延長が可能。ですから2022年の末まで、この状態が、そのまま、ずるずると続く可能性もあるわけです。
ドーバー港 |
合意なしで、3月29日にEU離脱となると、イギリスは、上記の2年の過渡期がないまま、関税同盟や単一市場を含め、その他もろもろの今まで存在していたEUとの取り決めから、すべて絆を、一夜にして絶たれてしまう、という恐ろしいことになります。まさに、崖っぷちから転がり落ちるようなもの。今まで、何の検査もなしに自由に行き来できていた物資が、それぞれの港で検査を受けることとなり、ドーバーなどの大切な港では、それに時間がかかり、足止めを食ったトラックの列が場合によっては、はるか地平線のかなたまで続くなどという大混乱をきたす恐れがあります。これが、スペインからのトマトやきゅうりなどの腐る可能性のある商品だったりすると、こんな状況に陥った場合、商品として役立たず。ですから、合意なき離脱になった場合に、ヨーロッパから、商品の出荷が行われない事もあり、そうなると、イギリスは食糧危機?そんなこんなで、今から、缶詰などの買いだめに走っている個人も出てきている始末。イギリスの医療機関のNHSも、万が一に備えて、薬品の買いだめ。スーパーも、保存のきくものは、倉庫にぎっしり買いだめ。食品だけに限らず、自動車工場など製造業でも、EUから部品を輸入している場合は、製造に支障がでるため、やはり今から準備の部品買いだめ。なんでも、現在、イギリス国内の倉庫のスペースは無くなってきていて、開いている倉庫があると、かなり高い値段で貸し出されているという話も徘徊しています。そして、当然、こちらから何かをEUへ輸出しようとするときには、今まで無かった関税がかかり、やはり検査が入ることとなります。
在留支持派の議員たちは、どう考えてもイギリス経済に大打撃を与えかねない、この合意なき離脱を避けたいため、テリーザ・メイから、それは絶対あり得ないという約束を取り付けようとしているものの、テリーザ・メイは一向にその様子を見せず。一方、保守党内部の離脱強硬派は、EUからの完全な離脱を求めるため、合意なき離脱でもいい、という信じられない見解も見せています。テレーザ・メイは、こうした党内での極右派をなだめるため、合意なき離脱の可能性を否定しないのと、とにかく、何が何でも、現状の離脱協定案を議会で承認させるため、ゆーっくりと進行をのろめての、時間稼ぎ(running down the clock)作戦。結果、もう、あまり時間が残っていないというのを理由に、「私のこの離脱協定案に賛成しないと、このまま合意なき離脱よ。それでいいの?」と議員たちを脅して、とにかく、自分の協定案で、ブレグジットを決行しようとしている感じです。国の将来がかかっているというのに、こんな博打じみた作戦に出るなんて、とんでもないおばさんです。次回の、この離脱協定案の投票は、今月27日に行われるようですが、EUから一切変更を認められずに、テリーザ・メイの離脱協定案が、イギリス国会でまた否決されたらその後はどうなるのか・・・ブレグジット悲喜劇は続きます。(追記:離脱協定案の投票は、再びメイおばさんの、時間稼ぎ大作戦により、3月12日へ延期されました。)
また、一般のブレグジットに投票した国民の中にも、とにかく、すぐにでもEUから出て行きたいたいのに、なんでこんなに時間がかかってるんだ、「Get on with it !」(とっととやれ!)などと言って、合意なき離脱でいい、などと豪語している者も結構いるのです。こういう人に限って、一切、ニュースを読んでおらず、詳細は全く知らないまま、面倒くさい、なんとかなる、イギリスは立派な国だから大丈夫、偏見からくるEUへの嫌悪感という、非常に怠惰な理由から、合意なき離脱を支持している。実際、合意なき離脱とは何なのか、よくわかってないのに賛成している人も沢山いるのです。傍から見ると、ただの経済的自殺行為でしょうに。根本的に、こういった人たちは、イギリス人は素晴らしい、イギリスは偉大な国、という今ではもう根拠のない、妙なプライドや傲慢さを持っている。大体、製造業を、ホンダやニッサンなどの他国の投資に頼っている国の、この傲慢さ、一体どこから来るのでしょうね。イギリスが過去偉大な国であったとしても、それは、こうした人物たちのおかげでない事は確かです。自分だけで幻想の世界に住むのはいいが、残留に投票した他の国民を共に引きずりおろすことになります。
以前、ロンドンのパブで、国民投票でEU残留に投票したおじいさんと話していた時、「今の世の中、協力がますます必要となっているのに、自らEUを出て行こうなどと、どう考えても良くない。この国が、自分だけで、何かをできると思うのは間違ってる。」と言っていたので、私が、「第2次世界大戦で、ナチスドイツに勝ったというのが、いまだに、妙な自信へとつながって、何とかなると思っている人が、わりと沢山いるんじゃないですか?」と言うと。「だって、第2次世界大戦だって、アメリカも含めて、みんなが協力したから何とかなったのに。イギリスだけだったら、負けてた。」ごもっとも。その後、「これから大変なことになりそうな気がする。僕はともかく、次の世代がかわいそうだ。」とため息をついていました。
という事で、いまだに、どんな形でイギリスがブレグジットをするのかわかっていない状況で、しびれを切らしたビジネスは、次々と、沈んでいく船を捨てるように、大陸ヨーロッパへ拠点を移動させたりもしています。ソニーとパナソニックがEUの本部を、イギリスからオランダに移したというニュースが入り、ホンダのように、丸々閉じてしまう会社もあり。また、イギリス掃除機の会社ダイソン社のジェームズ・ダイソンなどは、EU離脱を支持しながら、自分の会社の本部をとっとと、EUと貿易協定を持つシンガポールに移動させるという事をしています。イギリスの経済に打撃を与える事を支持して、自分は、EUとの取引を続けられるよう、とんずらとは、なんたる偽善者。ダイソンの掃除機なんて買いたいと思った事もないけれど、ますます、買いたくなくなりました。掃除機なんて、つまらんデザイン性のためにダイソンに高額を払うより、しっかり作られていて長く使えるドイツ製、または日本製を買った方がずっーといいです。
と、文句いっぱいになってきたところで、力尽き、本日はこの辺にしておきます。
北アイルランド・バックストップについて
まず、バックストップという言葉は、野球の用語だそうで、観客を、飛んできたボールから守るため、打者の後ろにあるネットや壁などの事。いざという時の、安全対策。
北アイルランドはイギリスに属しますが、お隣さんのアイルランド共和国は独立国でEUメンバー。現在は、イギリスもEUメンバーであるため、この2つの地域の国境には検問など一切なく、人も物も、自由に行き来できています。が、これがイギリスがEUから出ていくとなると、そでは国境はどうするんだ、という問題になる。
プロテスタントの住民と、カソリックの住民の紛争で、イギリス政府を悩ませ続けた北アイルランド問題は、1998年4月の平和協定、グッド・フライデー・アグリーメント(ベルファスト合意)で、一応、解決を見たのですが、この合意の中に、アイルランド共和国と、北アイルランドの国境に、以前のように、テロと暴力のターゲットとなりえる、壁や検問などの、人と物の行き来の妨げになるものを作らない、というのがあるのだそうです。イギリスは、この協定項目を破らないような、貿易条約を結び、EUから離脱することができるのか。ブレグジット過渡期中に、検問無しの国境を必須条項とした貿易協定をイギリスが結べずに終わる場合、このバックストップという安全対策が実行される事になります。内容は、北アイルランドもイギリス本土も、一時的に(解決策が見つかるまで)、物資や人の移動に関しては、EUの関税同盟と、単一市場に留まるというもの。一時的、などと言っても、これはずるずると半永久的に続く可能性もあり。
これには、とにかくEUとの縁をばしっと切りたい保守党内の右派である離脱強硬派と、現在過半数に満たないテリーザ・メイの保守党と協力をしている北アイルランドのDUP(民主統一党)の10人の議員たちが、頑として反対。DUPは、アイルランドのプロテスタントの政党でも最右派で、国民投票でもEU離脱を支持。妊娠中絶反対、地球温暖化を信じないなど、社会的にも非常に保守的な政党です。テリーザ・メイは、この党内極右派とDUPの意見を、常に考慮しなければならない現状です。
EUは、メンバー国であるアイルランド共和国の平和と、ベルファスト合意を守りながらも、EU単一市場内に、イギリスから、検査なしの怪しげな物資が流れ込まないよう、バックストップは絶対必要であると、主張しています。
先週までロンドンに居ました。咲き乱れるスノウドロップの白い花が美しいかったです。自分たちが選んだイバラへの道は、迷い込んでみたら進むことも退くことも最早不可である底なし沼という現状を静観しつつも、実は途方に暮れている子供の様にも思えました。混乱がこれ以上大きくならない事、国としての機能が失われない事を祈るのみです。
返信削除スノウドロップ見れて良かったですね。
削除非常に複雑な要素が紛れ込んでくるEU離脱などを、最初から国民投票にかけるべきではなかったんですけが。保守党は、今はEU嫌いの最右派に牛耳られ、野党の労働党は、大幅に左よりとなり、リーダーのジェレミー・コービンは別の意味でEUに懸念を示す隠れ離脱派などとも言われています。こうした両極端に走ってしまった2つの党を捨てて、今の段階で11人の在留派議員が新しいグループを結成しました。この人たちが、なんとか、中道で、理性的な、これからの政治の主流を作ってくれるといいんですが。まだ始まったばかりで、ぽしゃってしまう可能性もありますが。