クロッカス

今週は、かなり気温が上がり、本日は16度くらいもなるという嬉しい予報。とにかく、イギリスのグレイな冬の日々は、年と共に嫌になり、ながーく感じるのです。明日が、冬の間は中止されていた、今年初のグリーン・ビン・デイ(庭の枝や刈った芝など、緑のゴミを、トラックが回ってきて各家庭から、2週間に一回収集する日)なので、昨日は、あちこちの庭から芝刈り機や、藪を刈り込む音などが聞こえてきていました。私も、昨日から、久しぶりの本格ガーデニング・モードへ入り、小さな木やバラなどを掘り起こし、新しい場所に植え変えました。また、洗濯物が、外で干せるようになるのも助かり、ここ2,3日、近所の庭でも洗濯物がはためいています。2軒先のおばあさんの家の庭に、鯉のぼりもびっくりの、彼女のそれはカラフルなパンツが何枚も、washing line(洗濯ロープ)に並んで干してあるのを見て、にんまりし。

さて、イギリスの花の歳時記で、年の初めに、春の兆しを告げるのは、以前にも何度か書いた、スノードロップ(待雪草)ですが、スノードロップの咲くころは、まだ気温が低く、また白い花というのは可憐ではありますが、やはり、そろそろ色が欲しくなる。そして現れるのがクロッカス。

クロッカスも、スノードロップ同様、イギリス原生ではありません。時々、野原や自然の中にも見られますが、これもやはりスノードロップ同様、もともとは庭で栽培されていたものが、何かのきっかけで外へ逃げ出し、繁殖したものであるそうです。クロッカスは、アヤメ科の植物であるという事。

わが家の庭にも、私は植えた覚えがなく、おそらく、かなり昔、この家の以前の持ち主が植えたものの子孫と思われる真っ黄色のクロッカスが毎年ちょこちょこ黄色い顔をのぞかせます。また、前庭の芝生には、やはり植えた覚えのない、ほんのり紫のクロッカスが数個顔を出し、この同じ種ものは、隣の家、更にはその隣の家の芝生からも生えてくるので、一体、どうやって繁殖するのだろうと、それは不思議に思っています。

真っ黄色だけでなく、少々別の色のものを増やして見ようと、去年の秋、私が良く使う、その名も「クロッカス」というオンライン植物ショップから球根を注文しました。白地に薄紫の線が走っているもの、下の方が黄色く全体は紫のもの、それからクリームのやらかい黄色。これを、いくつかの鉢にまとめ植えをし、それは咲くのが楽しみでした。

クロッカスが咲くくらいの気温になると、蜂たちもそろそろ活動を始めるので、早咲きのクロッカスは蜂には格好のカクテル・バーとなるのです。開花したその日に、さっそく蜂が数匹やってきて、かなりの勢いで花粉集めをしていました。そのうち1匹などは、まさに朝から夕までという感じで、足につけた花粉の大きさで、なんだか飛ぶのが大変そうな気配さえ。まあ、これを見ただけで、買ったかいがあると思えました。クロッカスは、開花期が多少短いのが残念ではありますが。

ハロゲイトのThe Stray

クロッカスが咲き始めると、毎年のように、だんなが言うのは、「ハロゲイトのクロッカスもそろそろかな。」ハロゲイト(Harrogate)はイングランド北部のヨークシャー州にある、うちのだんなの故郷で、古くからスパタウンとして知られた瀟洒な町です。北のバースみたいな感じですかね。アガサ・クリスティーのファンには、彼女が失踪事件を起こした時に隠れていたホテルのある場所、と言えばわかるでしょうか。イングランド北部なので、開花時は、南部より一足遅れた感じだそうです。

ハロゲイトの町の中心部を走る、The Strayと呼ばれる、300エーカーに渡る広い遊歩道の緑地は、おびただしい数のクロッカスで覆われる事で有名です。上の写真はハロゲイト観光サイト(visit Harrogate)からのもの。サイトによると、この場所が作られたのは、1778年に遡り、クロッカスが終わるとダフォデルがバトンタッチ、そして、道に沿って植えられている桜の木のピンクに取って代わられるとあります。だんなは、The Strayの桜の花の間を通って学校に行ったのを覚えているそうです。彼が、桜に感動して見上げていたかどうかはともかく。私は、ぐずぐず支度をして出て、始業時間に遅れないよう、桜どころでなく、必死で息せき切って走っていたという姿の方を想像します。

(余談となりますが、以前、二人で函館に旅行をした時、だんなが言っていたのは、子供の時に、世界地図を見て、日本のHakodateというのが目にとまり、なんだかハロゲイトに似ていると思ったそうで、函館は、彼にとってずっと気になる場所であったのだそうです。そこから、故郷の知り合いに、「おいらは、今、HarrogateならぬHakodateにいる」、と絵葉書を何枚か書いて出していました。まさに、はーるばる来たぜ、は・こ・だ・て~、というところです。)

クロッカスは、こうした春咲きのものだけではなく、秋に咲くものもありますが、その中でも有名なのは、紫色のサフラン・クロッカスですね。スパイスのサフランは、この花のにょきっとしためしべを引き抜き乾燥したものです。地中海東方の地では、すでに紀元前2300年くらいから使用されていた形跡があるとかで、由緒正しきスパイス。サフロンは、かなり高価なので、自分で育てて、収穫、乾燥させ、ゲットするというのもいいかもしれません。

エセックス州には、サフラン・ウォルデン(Saffron Walden)という町がありますが、その名は、16,17世紀に、この地に盛んに栽培され、薬用やスパイスとしての他にも、香料、染料としても重宝された、このサフラン・クロッカスに由来します。染料としては紫色の花びらとは裏腹に、黄色の染料であったそうで、サフロンという言葉は、なんでもアラビア語の黄色という意味の言葉からきているなどという話です。ちなみにWaldenというのは、ブリトン人の谷という意味だそうですが、「サフランの咲く谷」とは、ちょっといかした町名です。

コメント

  1. ブログの再開嬉しいです。ずっとずっとイギリス含めた海外に行けず、今年のスノウドロップの花は、来年まで持ち越しと思っています。日本では、雪割草が春の最初の花として有名な一つで、花の交配が出来るので、オリジナルに挑戦する方も多く咲き始めの報告がボチボチ。
    今年はそれで我慢します。

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    1. 日本での花めぐりも楽しいですよ。梅、桜、菖蒲、藤、あじさいと、秋の紅葉狩りもあるし。私は逆に日本に帰れるのはいつの事やらと思ってます。ただ、去年は見そびれたブルーベルを今年は見たいですね。そのころまでには、私も一回目のワクチンをもらっていると思うので。

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