レドンホール・マーケット

シティー・オブ・ロンドンのオフィス街の間に建つ、過去へのトンネルの様な瀟洒な姿のアーケイドは、レドンホール・マーケット(Leadenhall Market)。

レドンホール・マーケットは、シティー・オブ・ロンドンの中心部に位置し、ローマ時代は、ローマのフォーラムがあった場所に当たるとされます。映画「ハリーポッターと賢者の石」で、ハリーが学校へ行く前に、魔法使い用品のお買い物をするディアゴン・アレー、リーキー・コールドロンの撮影場として登場したため、今では、ハリポタのロケ先イメージが強い場所ですが、マーケットとしての歴史は古く、その名に触れた最古の記述は、1321年。

最初は、La Ledene Halle(鉛の館)という名の、屋根を鉛で覆ってあった館に面した広場で市が開かれていたことから、Leadenhall Marketという名が派生。ロンドン市民以外の人間(よそ者)が、鳥類の肉を売る事が許された市場であったと言います。シティー・オブ・ロンドン内には、Poultry(鳥類の肉)という名の比較的大きい通りがありますが、ここは、ロンドン市民が鳥類の肉を売っていた場所。14世紀後半からは、ロンドンっ子以外のよそ者たちは、レドンホール・マーケットで、鳥肉のみでなく、バターとチーズを売る許可も得ます。

15世紀初めに、この場所は、ロンドン行政機関、コーポレーション・オブ・ロンドンの手に渡り、1455年に、ロンドン市長は、新しく、非常時のための穀物を貯蔵できる倉庫を建て、建物の中庭部を様々なる食物を売る一般市場とします。後に羊毛や皮の販売も開始。1666年のロンドン大火の際に、焼け落ちたものの、マーケットは再建され、数多くの屋台が並ぶ市場として機能し続けます。スミスフィールド家畜市場で売られ、近くのシャンブルズで屠畜された肉類、ビリングスゲイト魚市場で仕入れられた魚、テムズ川沿いの荷揚げ場所から搬送されてくる穀物、そして田舎から百姓のおかみさんたちなどが持ってきて販売していた鶏や兎。田舎から来た鳥類は、ロンドン近郊で太らせてから、レドンホール・マーケットなどの市場で販売される事も多く。

「ハリー・ポッターと賢者の石」に映るレドンホール・マーケット
現存の、ハリポタロケに使われたレドンホール・マーケットの構造は、タワーブリッジやスミスフィールド食肉市場の設計者としても知られる、ホレス・ジョーンズ(Horrace Jones)設計により、1880年に建てられたものです。なんでも、ジョゼッぺ・メンゴー二設計による、巨大アーケードであるミラノのガッレリア(1877年完成)の影響を受けているそうですが、規模はずっ~と小さめ。今は、活気あふれる食べ物市場、というより、レストランや、バーや、普通の店がほとんど。私が近郊で働いていた頃は、このレドンホール・マーケット内に、日本の弁当屋があり、時にお昼に買いに行っていました。コンビニ弁当風で、味も日本的、働いていたのも日本のおねーさん。頼むと電子レンジでチンもしてくれ、良かったのですが、気が付くと無くなってました・・・。

シティーのこの辺りは建設ブームで次から次へと色々な形の高層ビルが建っていっているのですが、レドンホール・マーケットのすぐわきに、マーケットの屋根を見下ろすように、新しく37階建ての高層ビル建設予定だそうで、これが、レドンホールを丸々隠してしまうのではないかと、懸念の声もあがっています。ますます、高層ビルの森林の中、一足踏み込むとヴィクトリア朝の、全く違うイメージの世界に入り込む気分が強くなることでしょう。

コメント