トウモロコシ畑でつかまえて

コーン(corn)という英語を聞くと、イギリス英語よりアメリカ英語の影響が強い日本人としては、自動的にとうもろこしを連想しがちです。が、コーンはイギリスでは伝統的に小麦を意味する場合が多いです。

もともと、コーンとは、「小さな種」「穀物」などを意味する言葉で、古くは、まだ、茎に付いたままの穀物一般を指して使用されていたようです。これが、国や地域により、その場所で栽培される主な穀物をコーンと呼ぶようになり、イングランドでは小麦が、スコットランドやアイルランドではオーツ麦がそれぞれの「コーン」であるわけです。一部ドイツでは、ライ麦をさして、「コーン」(korn)と呼ぶのだとか。イギリスでは、コーンフラワーと呼ばれる、夏に、きれいな青い花を咲かせる植物が人気ですが、これは、とうもろこしに咲く花ではなく、小麦畑の端などに、点々と咲いていた事から来た名前です。

ピルグリムファーザーズたちがたどり着いた頃のアメリカでは、穀物として重宝されたのは、現住のンディアンたちが食べていた、とうもろこし。これが、アメリカでは主要の穀物として、初期は、イングランドの小麦(コーン)と区別すべく、インディアン・コーンと称されていたようですが、そのうち、「インディアン」部分が落ち、アメリカでは、とうもろこしが、コーンと称されるようになったわけです。アメリカで、ケロッグのコーンフレークが本格的に製造され始めるのは、1906年と、かなり早いのです。そして、日本でも、アメリカの影響で、コーンと言うと、とうもろこし・・・となるのでしょう。コーンが小麦も意味すると気が付いたのは、私も、イギリスに住むようになってからの話です。

植物としての「とうもろこし」は、英語で、メイズ(maize)ですが、夏の終わりから秋にかけて、私の住んでいる町の周辺でも、収穫が終わりつつある黄金の小麦畑の他に、とうもろこしが並ぶ、メイズ畑を目にするようになります。

背が高いので、とうもろこし畑の真ん中で、かくれんぼうなどをすると、中々見つからないでしょうね。本当、「トウモロコシ畑でつかまえて!」って、感じです。それを利用してか、とうもろこし畑の中に迷路(maze)を作って、「メイズ・メイズ」(Maize Maze、とうもろこし迷路)と銘打ち、期間限定の子供用アトラクションをやっている農家や、農耕地を所有するガーデンセンターなども、2,3見かけました。メイズ・メイズへの入場料は取れるし、収穫したとうもろこしは売ることができるし、一石二鳥の多角経営ではあります。

ですから、ここのところ、スーパーでも、旬のスイートコーン(sweetcorn)がずらっと並んでいます。スイートコーンは、糖分の多いとうもろこしの種類の総称。ばらしたものを、缶詰に入れて売っているのも、スイートコーンです。私は、日本語のとうもろこしの「とう」は砂糖の「糖」かと、昔思っていたのですが、もともとは、外国から来た事を意味する「唐」が、語源なのだそうです。中国から、すでに入ってきていた「もろこし」という植物に似ていたために「外国から来たもろこし」となったそうで。今では、漢字で無理やり書くと、玉蜀黍が一般的なようですが。

最近は、とうもろこしを庭で育てる人も増えて来た感じで、隣人も、庭の塀沿いに、今年は6本ほどスイートコーンを植えて、着々と成長しています。

畑や野原の脇に、遅咲きのひまわりも咲いていました。その中に混じって、近くの畑から落ちた、トウモロコシの種が自然発芽してしまったのか、メイズも2、3顔を出して背比べをしていました。先週、町の目抜き通りにあるポーランド人用の食料品店を覗いたとき、種がついたままのひまわりの頭が売られていたのですが、あれを買ったポーランド人、一体、何に使用するのでしょう。気になります。店の人に聞いてみれば良かった。ガーデン用かな・・・。

人間の食用に栽培する他にも、狩猟用の雉の餌や隠れ場所として、畑のほんの一部にとうもろこしを植えている農家も見かけます。

先日、歩いた畑の脇の散歩道でも、小さ目のとうもろこし畑があり、そのわきに、こんな立て札が立っていました。

「狩猟用鳥類、自然動物、保護地域。犬はつないで歩いてください。許可されている歩道から外れないで下さい。」

狩猟用鳥類(game)という言葉が、自然動物や保護という言葉と一緒に使われているのに、いささかのアイロニーを感じました。狩猟用の鳥を、金を払ってくれるクライアントが殺す前に、どこぞのペットの犬に殺されたくない・・・というだけの話でしょうに。

雉の狩猟シーズンの開始は、畑のメイズも枯れて茶色くなった10月くらいからでしょうか。雉が、とうもろこし畑の間や、くねくね曲がった田舎道を、暢気に走り回っていられるのも今のうちです・・・。(雉狩りについては、過去の記事「シューティング・パーティー」を参照下さい。)

コメント

  1. 私も今年はトウモロコシを少しばかり(100本ほど)植え、出来はあまり良くないのですが少しずつ収穫しては食べています。食べきれなかった分は写真と同じく遅咲きのヒマワリの種とともに冬期間小鳥の餌になると思います。夫にour corn fieldと言って怪訝な顔をされたのはそういうわけだったのですね。スウィートコーンと言い換えました。^^

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    1. 少しと言って100本だから、規模がちがう・・・。来年は、もっと増やして、メイズ・メイズをやってみるとか。入り口で入場料を取り、出口で、取れたてスウィートコーンを売って。昨日、植物の種のカタログが届いて、ぱらぱら撒くって見ていたら、スウィートコーンの種もいくつか載っていました。家庭菜園でも人気が出てきているのでしょう。私も、少し(5本くらい!)やってみるかもしれません。

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    2. うちにはグリーディーピッグがいるのでいっぱい植えましたが10本は必要と思いますよ。トウモロコシ農家は1本から1個しか収穫しないんだとか。写真のトウモロコシ畑は3個程度実がついているようですが下のほうのは間引くそうです。うちは放任なのでやはり下のほうのは貧弱な実です。上の実もやや小さめかもしれません。

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    3. なるほど、家で細々やろうと思ったら、余興程度の収穫しかできないわけですね。10本以上をブロック植えするとなると、野菜エリアをとうもろこしだけにするか、新たな花壇を掘り起こさないと、うちでは、ちょっと難しいかな・・・

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