スコットランド独立投票結果にほっと一息

明け方、ひどい稲光と雷ごろごろの音で目が覚めました。昨夜は、スコットランド独立を聞くスコットランド国民投票。結果は本日早朝にわかることになっており、この雷様は、もしや、スコットランド独立を告げる天からのお告げか・・・などと5時半にラジオを入れると、「スコットランドの独立は、ノー(反対)派が勝利の見込みです」のニュースで、とりあえずは、まあ、良かったなと。6時ちょっとすぎには、独立反対勝利がまちがいなく確定。ポンドは上昇、スコットランド企業の株も上昇。ユニオンが生き延びて、胸を一撫でした人は、沢山いたのでしょう。ラジオでも、アナウンサーが、「嵐と雷があちこちで起こっていましたが、これがスコットランド独立を告げるものかと思った人は、ご安心あれ、スコットランドはユニオンに留まる事を決定しました。」なんて言っていました。そうそう、私も、天気に世の出来事の兆しを見る、という原始的な反応をした人のひとりです。

独立にイエスかノーかで、特に今月に入ってからは、ほぼ毎日ニュースで大幅にとりあげられ、イエス陣営の勢いが強くなっていたため、あせりを感じたウェストミンスター議会の政治家達が次々、スコットランドを訪れ、必死の「ノー」キャンペーン。ぎりぎりになって、パニくったか、ウェストミンスター3大政党の党首達が、独立反対派が勝った場合には、スコットランド議会に今までより多くの決断力を与えると約束。

イエス(独立賛成)陣営は、一部、非常に感情的となり、「ノー」というやつはスコットランド国民の恥さらしといわんばかりの態度を見せていました。どこぞの軍国主義国家が、家の前に国旗を掲げないと、「非国民だ」と指差し、軍部に通報するようなのと同じメンタリティーで、非常に見ていて嫌な気がする事もありました。反対陣営のキャンペーン資金に巨額を寄付した、ハリポタ作家、J.K.ローリングなども、「売れないシングルマザーの時は、エジンバラで生活補助を受けて世話になったくせに。裏切り者の、非国民め!」と多くのイエス陣営が反応し、ネット上で悪態をさんざんつかれていました。

そのためか、独立賛成側は大騒ぎで、早くから意思表示をしていたのに対し、反対陣営は比較的おとなしく、身をひそめている感じでした。攻撃的な賛成側に、お前は真のスコットランド人じゃない、非国民め、などとなじられるのが嫌な人も多くいたのでしょう。聞かれて「まだ決めてません」などと言う人にも、かなり多くが「ノー」支持だったのかとも思います。そういう人たちは、黙って投票所にでかけ、黙って投票。投票率は、なんと86%。独立賛成45%。独立反対55%。最終段階では、どっちにころんでもおかしくない感じだったので、予想されていたより大めの確立での反対派の勝利のようです。

また、今回の賛成派は、独立に賛成と言うのは、ともかく、スコットランドで不人気の、保守党と、現在の連合内閣に対する不満の爆発の感じもあります。金融機関なども多い、首都エジンバラは、反対派多数であったものの、比較的貧しく、社会保障を受けている人間の率も高いスコットランド最大都市グラスゴーが、賛成に投票しているのも、現政府の社会保障削減政策などに対する不満に起因するものでしょう。遡る事、マーガレット・サッチャー政権下で、スコットランドの鉱山閉鎖、及び造船業を含む重工業への補助金停止、それに伴う閉鎖などが行われましたが、その後、失われた産業の代わりとなるものへの投資、促進をほとんど行わなかったため、失業率アップ、すたれたままの地域なども多くあり、保守党への嫌悪感は、パブリックスクール、オックスフォード大卒のおぼっちゃま、デイヴィッド・キャメロン代表する、現政権に始まった事ではありません。

私も、現政府は気に食わないですけどね、だから、独立してしまうのがてっとりばやい、というのもね~。独立したから、すべてがOK、自分の生活が楽になると、片付ける考え方も、安易ですし。現在、スコットランドの社会保障につぎ込まれているお金は、ロンドンの納税者が稼ぎ出している率も多いでしょうに。

こちらのBBCのリンクで、スコットランドのどの地域が、どういう投票の仕方をしたかが見れます。賛成投票多数は、主にグラスゴーとその周辺地域、及びダンディーに集中。面白いのが、石油のあるオークニーの独立賛成票が少ないことですね。独立賛成派は、社会主義に近い、もっと左よりの国会が欲しいタイプが多いのだと思います。イングランドの国境に近い地域も、賛成票が少ないですが、これは、気持ちはわかります。

今回の国民投票は、民主主義の鏡、などと称する賛成支持者が沢山いましたが、「独立反対」と自分の意見を表示した者を、卑しめて、攻撃する態度のどこが民主主義なのやら。まあ、世界のあちこちの不安定な政情をながめ、多少、感情をむき出しにすることはあっても、最終的には、血を流す事も無く、投票場で全てが決まる、というのは、先進国に住んでいると当たり前のようですが、幸せなことなのかもしれません。

一難去って、また、一難。約束をした、スコットランド議会へのより多くの権力の移行をどうするか、でも、そうしたら、ウェールズ、北アイルランドそれぞれの議会ももっと力を得るべきではないか・・・そして、イングランドもウェストミンスターとは別の議会を持つべきではないか・・・喧々囂々の討論がすでに始まっています。

今のところ、あまりにもロンドンが大きくなりすぎ、仕事や機関がロンドンに集中しすぎ、とは常々感じます。東京に全てが集中しすぎ、と日本では思う人がいるかもしれませんが、イギリス内のロンドン集中ぶりにくらべれば、バランスが取れている方に見えます。何で、こんなものが、物価や土地の高いロンドンにあるんじゃ、と思うものまである。これらのいくつかを、スコットランドはじめ、他の地域に移動させ、各地の仕事を増やす、経済を上昇させるような事もした方がいいのではないでしょうか。ロンドン納税者が稼ぎあげたお金の分配するより、金を稼げる機関を各地に移動させた方が、それぞれの地域の活気もつくでしょうし。サッチャー時代に失われた雇用先を新たに作る意味でも。そうすれば、イギリス各地域の、「ロンドンのやつらが、俺らの生活を牛耳っている」という、ウェストミンスター政治家達への猜疑感も、少しは減るのではないでしょうか。

コメント