みじかくも美しく燃え
前回の投稿でトゥールーズ・ロートレックの事を書きながら、ふと頭に浮かんだ別の映画は、スウェーデンの「Elvira Madigan エルヴィラ・マディガン」(邦題:みじかくも美しく燃え)。いい映画だからと、友達に勧められ、ロンドンの名画座のようなシネマで見たのです。実話がもとになっています。
デンマーク人エルヴィラ・マディガンは、サーカスの綱渡り。スウェーデンでサーカスが掛かっている時に、スウェーデンの軍の中尉シクステンに見初められ、二人は瞬く間に恋に落ちます。彼は妻子のあある身の上、彼女はサーカスの稼ぎ所とあり、2人は駆け落ち。映画は、この駆け落ちの直後から始まります。筋と言っては、特に無く、北欧の森や野原の中を行く、彼らの熱愛の様子を追い、最後に、お金もなくなり、どうすればよいかの選択肢も無く、共に自殺。シクステンは、デンマークの森の中でピクニック後、野原で蝶々を追っているエルヴィラを射殺し、その後、自分もズドン。
エルヴィラのヘアスタイルは、不思議の国のアリス風。金色の前髪を抑えるのに、こちらでは、アリス・バンドと呼ばれるU字型のヘアバンドをしているのが、少女風で良かった。実際、彼女が死んだときは、まだ21歳だったといいますし。
サーカスについて、転々とヨーロッパの色々な土地を巡ってきたエルヴィラ。ヴェニスの思い出話をしたり、また、幼い頃、おそらく普仏戦争中のパリで、爆撃でサーカスが燃え、動物たちの焼けた匂いを覚えているなどとも。
さて、何故に、ロートレックの事を書いていて、この映画を思い出したかと言うと・・・エルヴィラがパリのカフェで座っている時、奇形の男性がこれを描いてくれたと、彼女の似顔絵が映るのですが、たしか、この似顔絵に、ちゃんとロートレックのサインも入っていたのです・・・二人は食う足しにと、やがて、この絵を売るのですが、奇形が書いたスケッチなどにあまり出せないと、わずかな金しか稼げない・・・あーあ。この逸話は事実かどうかは知りませんが、2人の駆け落ち、そして自殺の年、1889年は、パリでムーラン・ルージュがオープンした年。ロートレックも、この後、だんだん、パリでは有名になっていくわけですので、もうしばらく手元に置いておいて、その後、きちんとしたところに持っていって売っていれば、わりといい値がついたかもしれない。これが、現在だったら、インターネットで、「パリの小人の画家」などと検索して、その絵の価値を調べる事ができたかも。でも、この二人が、デンマークのインターネットカフェで、金儲けの検索をしている姿などを想像すると、「みじかくも美しく燃え」というより、「したたかにちょろちょろと燃え」っていう感じになってしまいます。
エルヴィラが綱渡りを披露して金を稼ごうともするのですが、それは当時のこと、彼女がスカートをちょっとたくし上げて、足首を見せるだけで、見物者の男達は大興奮。シクステンは、これに嫉妬して、すぐにやめさせるのですが。私が、「足首だけでこんなに喜んでくれるなら、足首1分眺めるのにいくらと金を取って儲ければよかったのに。」と、シネマから出てから友人に言ったところ、友人、ため息をつきながら、首を振り、「あんたは、純愛はできんな。」ですって。
視覚的にはとても美しいです。そして、背景に流れるのは、今では、エルヴィラ・マディガン協奏曲としても知られる、モーツアルトのピアノ協奏曲21番で、全体の印象は詩的。美しすぎて現実感はないというのはありますが、まあ、実際にあった恋の物語をおとぎ話風に語るとこうなるかな、という感じです。最後のシーンも、エルヴィラが蝶を捕まえようとしているところで、映像がとまり、後は、2発の銃声が響くだけ。血や死体などは見せずに、二人の美しい姿が、そのまま、皆の記憶に残るわけです。私と違って、純愛のできる性格の人には、特に一押しの映画です。
原題:Elvira Madigan
監督:Bo Widerberg
言語:スウェーデン語、デンマーク語
1967年
デンマーク人エルヴィラ・マディガンは、サーカスの綱渡り。スウェーデンでサーカスが掛かっている時に、スウェーデンの軍の中尉シクステンに見初められ、二人は瞬く間に恋に落ちます。彼は妻子のあある身の上、彼女はサーカスの稼ぎ所とあり、2人は駆け落ち。映画は、この駆け落ちの直後から始まります。筋と言っては、特に無く、北欧の森や野原の中を行く、彼らの熱愛の様子を追い、最後に、お金もなくなり、どうすればよいかの選択肢も無く、共に自殺。シクステンは、デンマークの森の中でピクニック後、野原で蝶々を追っているエルヴィラを射殺し、その後、自分もズドン。
エルヴィラのヘアスタイルは、不思議の国のアリス風。金色の前髪を抑えるのに、こちらでは、アリス・バンドと呼ばれるU字型のヘアバンドをしているのが、少女風で良かった。実際、彼女が死んだときは、まだ21歳だったといいますし。
サーカスについて、転々とヨーロッパの色々な土地を巡ってきたエルヴィラ。ヴェニスの思い出話をしたり、また、幼い頃、おそらく普仏戦争中のパリで、爆撃でサーカスが燃え、動物たちの焼けた匂いを覚えているなどとも。
さて、何故に、ロートレックの事を書いていて、この映画を思い出したかと言うと・・・エルヴィラがパリのカフェで座っている時、奇形の男性がこれを描いてくれたと、彼女の似顔絵が映るのですが、たしか、この似顔絵に、ちゃんとロートレックのサインも入っていたのです・・・二人は食う足しにと、やがて、この絵を売るのですが、奇形が書いたスケッチなどにあまり出せないと、わずかな金しか稼げない・・・あーあ。この逸話は事実かどうかは知りませんが、2人の駆け落ち、そして自殺の年、1889年は、パリでムーラン・ルージュがオープンした年。ロートレックも、この後、だんだん、パリでは有名になっていくわけですので、もうしばらく手元に置いておいて、その後、きちんとしたところに持っていって売っていれば、わりといい値がついたかもしれない。これが、現在だったら、インターネットで、「パリの小人の画家」などと検索して、その絵の価値を調べる事ができたかも。でも、この二人が、デンマークのインターネットカフェで、金儲けの検索をしている姿などを想像すると、「みじかくも美しく燃え」というより、「したたかにちょろちょろと燃え」っていう感じになってしまいます。
エルヴィラが綱渡りを披露して金を稼ごうともするのですが、それは当時のこと、彼女がスカートをちょっとたくし上げて、足首を見せるだけで、見物者の男達は大興奮。シクステンは、これに嫉妬して、すぐにやめさせるのですが。私が、「足首だけでこんなに喜んでくれるなら、足首1分眺めるのにいくらと金を取って儲ければよかったのに。」と、シネマから出てから友人に言ったところ、友人、ため息をつきながら、首を振り、「あんたは、純愛はできんな。」ですって。
視覚的にはとても美しいです。そして、背景に流れるのは、今では、エルヴィラ・マディガン協奏曲としても知られる、モーツアルトのピアノ協奏曲21番で、全体の印象は詩的。美しすぎて現実感はないというのはありますが、まあ、実際にあった恋の物語をおとぎ話風に語るとこうなるかな、という感じです。最後のシーンも、エルヴィラが蝶を捕まえようとしているところで、映像がとまり、後は、2発の銃声が響くだけ。血や死体などは見せずに、二人の美しい姿が、そのまま、皆の記憶に残るわけです。私と違って、純愛のできる性格の人には、特に一押しの映画です。
原題:Elvira Madigan
監督:Bo Widerberg
言語:スウェーデン語、デンマーク語
1967年
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