蜂のいない世界
スウィートピーの間をブンブンと飛んでいた蜂が一匹、そのささやかな体重で、スウィートピーの花びらを押し開け、花の中に侵入したと思うと、後ろ足で、器用に花粉をこすり取り、集め始めました。同時に、花の奥から蜜までちゃんと吸っている様子。体を後ろにそらせて見事なアクロバット・ポーズを見せてくれたこの蜂は、リーフカッターと呼ばれるソリタリービー(単独で行動する蜂)です。リーフカッターという名の由来は、植物の葉を切り取って巣に押し込む習性から。ごらんの通り、非常に優秀なポリネーター(受粉者)であります。
前回は、蝶のためになる庭造りの事を書きましたので、今回は蜂に焦点をあてることにします。花蜂の中には、ミツバチやマルハナバチ(バンブルビー)のように、女王を中心としたコロニーを作り集団生活をするものの他に、このリーフカッターの類のソリタリービーがいます。なんでも、イギリス内だけで、ソリタリービーの種類は260あるというのですから。受粉者=ミツバチ(またはマルハナバチ)だけではないのです。われらが食卓に、本日も色々な食べ物が並べられ、「おー美味そうじゃ、どれから食べようか・・・」という贅沢が出来るのも、これら数々の花蜂や、その他の小さな受粉者たちあってこそ。ありがたや~。
人間の食べるものの大部分が、蜂たちの無料受粉作業の賜物であるために、蜂の数の減少は、直接人間の生活に影響が出てくる、よって、その年々の減少に不安の色を見せる人も増えてくるわけです。プロの園芸家達の間でも、「蜂SOS」を説く人は多く、最近は、ガーデンセンターなどでも、蜂が好きな植物コーナーがあったり、「ビーフレンドリー」と書かれた札のついた植物が売られていたり。常時、何かしら蜂達に食べ物があるように、蜜と花粉をふんだんに提供できる植物を庭に植える奨励が続いています。
蜂の数がほぼ全滅状態になり、果樹園などでの果物の受粉は、人間がはけを手にして行うような状況になると、果樹園の規模にもよりますが、それにたずさわるマンパワーと人件費は、結構なものになるのではないでしょうか。それに、かなりはけさばき上手くやらないと、人間が手で行う受粉の効率の良さと巧みさは、蜂には到底かなわず、下手な受粉をさせた果実は、その形も少々いびつで悪質なものとなるようです。
何故、蜂の数が過去50年減り続けているのかというのは、諸説があり、まずは、寄生ダニ(ヴァローラ・マイト)と、その噛み口から入るウィルスによって絶滅するコロニーがあること。そして、一部の農薬によって脳がやられ、巣に帰る機能をなくすなどの影響を受けているらしいということ。また、農耕地の拡大と、農業方法の変化により、住む場所、また、いままで食用としてたよりにしてきた野の花が減少していること・・・などがあげられています。
最近は、ロンドンやバーミンガム、または米でもニューヨークなどの大都会で、ルーフテラスやバルコニー等を使用しての養蜂がさかんになってきているなどといいます。実際、農耕地の近くの田舎の蜂達よりも、こうした都会の蜂達の方が、健康で、はちみつもじゃんじゃん作っているなどという説もあるのですから、ちょっとびっくりです。農薬から離れ、数少ない野の花をあてにするより、都会で、近くの郊外の家の庭や公園の花から蜜や花粉を得るほうが蜂ライフには良いわけです。ですから、尚更、都会や庭に植えられる植物がビーフレンドリーであることは、蜂の将来、ひいては人間様の将来の食べ物獲得の大切な手助けとなるのでしょう。
今現在のうちの庭の花の中で、蜂に一番人気は、ラナービーン(花豆)でしょうか。日本語でラナービーンは、ベニハナインゲンなどと訳されているようですが、今年選んだラナービーンは、毎夏育てている赤い花のものではなく、種が白く、花も白い、白花豆。比較的新種のムーンライトというロマンチックな名前のもので、そのつるつる真っ白の種から育てました。
このムーンライトは、通常のラナービーンよりも、悪天でも良く育ち、またスジがほとんどなく、食べやすいというのです。収穫があまりに良すぎて、毎日のように夕飯に出し、「えーまた、ラナービーン?」と、だんなが音を上げ始めました。贅沢者!あまりにも取れすぎた日は、即行で斜めに小さくスライスし、そのままフリーザーへ突っ込みます。欲しいと言う人には、袋いっぱいあげても、まだまだ取れるのです。
ラナービーンの花の他には、ラヴァテラ(ハナアオイ)も人気。大きなカップのような花は、特に大型のバンブルビーのお気に入りで、花粉にまみれながら、狂喜乱舞。この植物は放っておくと、巨大化し、茎もまるで木のようになってくるので、つねに刈り込まないと花壇が占領されてしますが。
ピンクッション・フラワーと呼ばれるマツムシソウも、昆虫達には魅力的な花。
植えた覚えの無い、野の花のフィールド・ポピーが花壇の脇に生えていますが、こちらには、ハナアブたちが何匹も入れ替わり立ち代りやってきています。まるでティシュペーパーで作ったような花です。やはり蜂の好きな野の花、コーンフラワーを今年は植えなかった事を、今になってから、少々後悔しています。
夏も後半に突入し、ラベンダーやマジョラムなどのハーブ系のビーフレンドリーな花たちも、そろそろ終わりが近づき、霜が下りる頃まで咲き続けてくれ、蜂の餌になるような植物を・・・と先日、ジャパニーズ・アネモネ(シュウメイギク)と、一重咲きのダリアを購入しました。ダリアは中心が見えないようなポンポン形のものは、見た目にはゴージャスでも、虫達が蜜にありつけず、そういう意味ではバツなのだそうです。
この黄色いシングルのダリアは、「ハッピーパーティー」という品種。その名の通り、植えている過程ですでに、蜂とハナアブが、「ハッピーパーティー」の無料カクテルにありつこうと寄って来ました。葉や茎がチョコレート色なのも、目に綺麗です。
ちなみに、6月に買ったゲラニウム「ロザンネイ」は非常に元気に成長しており、蜂達を魅了しながら、花の勢いは増すばかり。11月まで咲き続ける、といううたい文句を信じると、この花も、ダリアと共に霜の季節まで、がんばって咲いてくれることでしょう。
花の他にも、昨今のガーデンセンターでは、ソリタリービーのための巣箱なども販売されているのを目にします。鳥の巣箱の前面をはずして、ここに20センチくらいの長さに切った細めの竹の筒を沢山つめてあるようなものです。これは、わざわざ買わずとも、細めのさおを、のこぎりで切って束ねれば自分でも簡単にできそうですので、来年作ってみましょう。何でもソリタリービーは、、他の蜂達と比較的近くに集まって住む傾向があるのだそうで、これは、ソリタリービーたちのための集団住宅建設です。巣は日当たりの良い場所に設置するのが必須だそうで、暗いじめっとしたところに据えると、まったく無視されてしまうようです。小型の蜂の中には、空き家となったカタツムリの殻にすむものもいるのだそうで、まるで童話のよう。
後は、意外と忘れがちなのが、蜂達も水を必要とするということで、バードバスなどのある人は、昆虫も水にありつけるように、水をふちまでひたひたに入れるのがグッド。また、池がある人は、縁からいきなり深くならないように、縁には大きめの石などを設置して、昆虫が近づけるような考慮をすると良い、などと言います。
蜂のいない寂しい将来が現実のものとならないように、野菜や果物をがぼがぼ美味しく食べ続けられるように、次回、庭に植えるお花、バルコニーに置く鉢植えを買うときには、出来る限りビーフレンドリーなものに手を伸ばすのも一考です。
前回は、蝶のためになる庭造りの事を書きましたので、今回は蜂に焦点をあてることにします。花蜂の中には、ミツバチやマルハナバチ(バンブルビー)のように、女王を中心としたコロニーを作り集団生活をするものの他に、このリーフカッターの類のソリタリービーがいます。なんでも、イギリス内だけで、ソリタリービーの種類は260あるというのですから。受粉者=ミツバチ(またはマルハナバチ)だけではないのです。われらが食卓に、本日も色々な食べ物が並べられ、「おー美味そうじゃ、どれから食べようか・・・」という贅沢が出来るのも、これら数々の花蜂や、その他の小さな受粉者たちあってこそ。ありがたや~。
人間の食べるものの大部分が、蜂たちの無料受粉作業の賜物であるために、蜂の数の減少は、直接人間の生活に影響が出てくる、よって、その年々の減少に不安の色を見せる人も増えてくるわけです。プロの園芸家達の間でも、「蜂SOS」を説く人は多く、最近は、ガーデンセンターなどでも、蜂が好きな植物コーナーがあったり、「ビーフレンドリー」と書かれた札のついた植物が売られていたり。常時、何かしら蜂達に食べ物があるように、蜜と花粉をふんだんに提供できる植物を庭に植える奨励が続いています。
蜂の数がほぼ全滅状態になり、果樹園などでの果物の受粉は、人間がはけを手にして行うような状況になると、果樹園の規模にもよりますが、それにたずさわるマンパワーと人件費は、結構なものになるのではないでしょうか。それに、かなりはけさばき上手くやらないと、人間が手で行う受粉の効率の良さと巧みさは、蜂には到底かなわず、下手な受粉をさせた果実は、その形も少々いびつで悪質なものとなるようです。
何故、蜂の数が過去50年減り続けているのかというのは、諸説があり、まずは、寄生ダニ(ヴァローラ・マイト)と、その噛み口から入るウィルスによって絶滅するコロニーがあること。そして、一部の農薬によって脳がやられ、巣に帰る機能をなくすなどの影響を受けているらしいということ。また、農耕地の拡大と、農業方法の変化により、住む場所、また、いままで食用としてたよりにしてきた野の花が減少していること・・・などがあげられています。
最近は、ロンドンやバーミンガム、または米でもニューヨークなどの大都会で、ルーフテラスやバルコニー等を使用しての養蜂がさかんになってきているなどといいます。実際、農耕地の近くの田舎の蜂達よりも、こうした都会の蜂達の方が、健康で、はちみつもじゃんじゃん作っているなどという説もあるのですから、ちょっとびっくりです。農薬から離れ、数少ない野の花をあてにするより、都会で、近くの郊外の家の庭や公園の花から蜜や花粉を得るほうが蜂ライフには良いわけです。ですから、尚更、都会や庭に植えられる植物がビーフレンドリーであることは、蜂の将来、ひいては人間様の将来の食べ物獲得の大切な手助けとなるのでしょう。
今現在のうちの庭の花の中で、蜂に一番人気は、ラナービーン(花豆)でしょうか。日本語でラナービーンは、ベニハナインゲンなどと訳されているようですが、今年選んだラナービーンは、毎夏育てている赤い花のものではなく、種が白く、花も白い、白花豆。比較的新種のムーンライトというロマンチックな名前のもので、そのつるつる真っ白の種から育てました。
このムーンライトは、通常のラナービーンよりも、悪天でも良く育ち、またスジがほとんどなく、食べやすいというのです。収穫があまりに良すぎて、毎日のように夕飯に出し、「えーまた、ラナービーン?」と、だんなが音を上げ始めました。贅沢者!あまりにも取れすぎた日は、即行で斜めに小さくスライスし、そのままフリーザーへ突っ込みます。欲しいと言う人には、袋いっぱいあげても、まだまだ取れるのです。
ラナービーンの花の他には、ラヴァテラ(ハナアオイ)も人気。大きなカップのような花は、特に大型のバンブルビーのお気に入りで、花粉にまみれながら、狂喜乱舞。この植物は放っておくと、巨大化し、茎もまるで木のようになってくるので、つねに刈り込まないと花壇が占領されてしますが。
ピンクッション・フラワーと呼ばれるマツムシソウも、昆虫達には魅力的な花。
植えた覚えの無い、野の花のフィールド・ポピーが花壇の脇に生えていますが、こちらには、ハナアブたちが何匹も入れ替わり立ち代りやってきています。まるでティシュペーパーで作ったような花です。やはり蜂の好きな野の花、コーンフラワーを今年は植えなかった事を、今になってから、少々後悔しています。
夏も後半に突入し、ラベンダーやマジョラムなどのハーブ系のビーフレンドリーな花たちも、そろそろ終わりが近づき、霜が下りる頃まで咲き続けてくれ、蜂の餌になるような植物を・・・と先日、ジャパニーズ・アネモネ(シュウメイギク)と、一重咲きのダリアを購入しました。ダリアは中心が見えないようなポンポン形のものは、見た目にはゴージャスでも、虫達が蜜にありつけず、そういう意味ではバツなのだそうです。
この黄色いシングルのダリアは、「ハッピーパーティー」という品種。その名の通り、植えている過程ですでに、蜂とハナアブが、「ハッピーパーティー」の無料カクテルにありつこうと寄って来ました。葉や茎がチョコレート色なのも、目に綺麗です。
ちなみに、6月に買ったゲラニウム「ロザンネイ」は非常に元気に成長しており、蜂達を魅了しながら、花の勢いは増すばかり。11月まで咲き続ける、といううたい文句を信じると、この花も、ダリアと共に霜の季節まで、がんばって咲いてくれることでしょう。
花の他にも、昨今のガーデンセンターでは、ソリタリービーのための巣箱なども販売されているのを目にします。鳥の巣箱の前面をはずして、ここに20センチくらいの長さに切った細めの竹の筒を沢山つめてあるようなものです。これは、わざわざ買わずとも、細めのさおを、のこぎりで切って束ねれば自分でも簡単にできそうですので、来年作ってみましょう。何でもソリタリービーは、、他の蜂達と比較的近くに集まって住む傾向があるのだそうで、これは、ソリタリービーたちのための集団住宅建設です。巣は日当たりの良い場所に設置するのが必須だそうで、暗いじめっとしたところに据えると、まったく無視されてしまうようです。小型の蜂の中には、空き家となったカタツムリの殻にすむものもいるのだそうで、まるで童話のよう。
後は、意外と忘れがちなのが、蜂達も水を必要とするということで、バードバスなどのある人は、昆虫も水にありつけるように、水をふちまでひたひたに入れるのがグッド。また、池がある人は、縁からいきなり深くならないように、縁には大きめの石などを設置して、昆虫が近づけるような考慮をすると良い、などと言います。
蜂のいない寂しい将来が現実のものとならないように、野菜や果物をがぼがぼ美味しく食べ続けられるように、次回、庭に植えるお花、バルコニーに置く鉢植えを買うときには、出来る限りビーフレンドリーなものに手を伸ばすのも一考です。
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