黒いチューリップ

今週後半から、気温はどんどん下がり、イギリス一部は雪の予報さえ出されています。冬の庭の彩りに、数週間前に植えたヴィオラは、寒い空気の中でも元気そうですが。

もう球根を植えるには時期的に遅いため、スーパーで、チューリップの球根が半額で売られていました。パティオに、大きな円形の植木鉢が一つあいていたので、気温が急降下する前に、大急ぎで埋めようと購入。黒いチューリップ(実際は、濃い紫と言った方が正解ですが)の「Queen of night」(夜の女王)の球根です。チューリップの中では、一番色が濃く、寒さに強く、丈夫で育てやすい品種だそうです。1パック4個入りが1ポンドから50ペンスに下がっていたので、2パック買いました。

16世紀のオランダに、トルコから導入された花、チューリップ。オランダで、初めてチューリップの球根が植えられたのは、1593年、ライデン大学にて。徐々に人気を増し、17世紀のオランダでは、チューリップマニアなるブームをもたらすほど、一大人気となります。めずらしい品種の球根は、アムステルダムの運河沿いの家が一軒買えるほどの巨額で売買され、投資の対象ともなり、チューリップ・バブルというバブルまで引き起こし。バブルは、はじけるもの・・・と相場は決まっていますが、このチューリップ市場の暴落により、当然、破産者も大勢出たわけです。チューリップマニアのピークは1633年から1637年。

読んだ事は無いですが、大デュマの作品で「黒いチューリップ」(La Tulipe noire)という小説がありました。17世紀オランダを舞台に、上記チューリップマニアを背景とし、実際にハーグで起こった、デ・ウィット兄弟虐殺事件をストーリーラインに織り込んで語られているということ。高額の賞金が出る黒いチューリップの開発へ励む青年、コルネリウスの物語。

小説では、コルネリウスは、黒いチューリップの開発に成功したことになっていますが、現実世界では、黒いチューリップの開発は難しく、このQueen of nightのデヴューは、1944年と20世紀に入ってから。植物学的に、真に黒い葉や花を持つ植物の開発は不可能だと言うことで、先にも書いたとおり、Queen of nightも厳密には、濃い紫色。光の加減やバックグラウンドによって、「黒にも見える」。その後も、何種かの黒いチューリップの開発が試みられたものの、いまだ、このQueen of nightが、一番、黒に近い色と言われています。

比較的遅咲きのチューリップで、5月あたりに咲く・・・ということは、私の「夜の女王」達は、プリンス・ウィリアムとケイト・ミドルトンの結婚式の頃咲き始めることになるでしょうか。

参考サイト:The Bulb Project

*追記*
11月25日のニュースによると、「Black Velvet 黒いベルベット」と名づけられた世界初の黒いペチュニアが開発され、イギリスでは来春から売り出される予定です。こちらも、やはり真の黒ではなく、とても濃い紫だそうですが、写真を見た限りにおいては、なかなか、いい線行っています。このニュース記事は、こちら

コメント

  1. 北海道でもプランターや鉢ごと埋める方法があると聞いたことがあります。オランダでドルドレヒトを訪れ兄弟の像の写真も撮りました。「黒いチューリップ」も読みましたが、実際の事件は小説よりも凄惨だったようです。「夜の女王」というと「魔笛」の女王を思い出します。どんな花が咲くか楽しみですね。

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  2. 兄弟の事を、以前の場所で書いていましたよね、確か。
    黒いチューリップの球根楽しみだ、と言う話をだんなにした際、デュマの小説に「黒いチューリップ」ってあるよ、と言われ、調べたところ、この兄弟の話に行き当たり、「あ、アネモネさんが書いてたのは、この人たちか。」と思い出から蘇った次第です。温和で公平な印象のオランダの、過去の汚点のひとつでしょうか。

    夜の女王、植物界では、夜に花の咲くさぼてんの名に多いようです。このチューリップの場合は、単純に色が濃いからですよね。

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  3. こんばんは
    私もチューリップを植えました。まだ芽は出ません。黒いチューリップなんて神秘的で素敵ですね。紫のビオラも奇麗ですよね。私、何色のチューリップが咲くのか忘れた。春を待ちましょう。

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  4. 非常に寒い日となりました。朝は霜で真っ白。地面も、植木鉢の中の土もがちがちです。
    こちらは、球根が目覚めて、芽が出るのはまだまだ先の話となりそうな感じです。

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