地球温暖化対策のため、ビーガンになれるか?
ミスター・ブロッコリー |
ロンドンには、ロンドンを洪水から守るためにテムズ・バリアという、緊急時に、テムズ川に流れ込もうとする水を遮断する建造物がありますが、これも温暖化が続く中、2030年以降には、役立たずになるのではないかという話です。そのうちに、たとえ、毎年作り直しても、対処できないような状況に陥ることもあるかもしれません。原因を抑えない、事後だけの対処とは、そういうものです。
西ヨーロッパ内で一番気温が上がっているというスイスでは、氷河が後退していき、グリーンランドなどでも、今まで雪の下にあった地表が露出されつつあるようです。太陽光を反射する白い雪が減っていくと、温暖化はますます加速すると言いますからこれは心配。にもかかわらず、露出されたグリーンランドなどの地表から、貴重な資源が掘り出せるのではないかと、目をつけている国々もあるわけですから、もう、地球は行くところまで行くしかない、と思いざるを得ないような気持になる時もあります。
エクスティンクション・リベリオン(絶滅に対する反抗)は、そうした、人類が生存の危機に向かっていると思われる状況にありながら、何もしない各国政府に働きかけ、何とか地球温暖化に歯止めをかけるための緊急対策を取らせようという運動です。ロンドン及び、イギリス内の大都市、更には世界の大都市でプロテストを何度か起こしています。
2週間ほど前に、市民の生活の妨害になると、そのプロテストが禁止となっていたロンドンで、エクスティンクション・リベリオンによるプロテストが大々的に行われていました。禁止となっているため、プロテスト参加者の中では逮捕されてしまう人も多々。何かしなければ、という参加者の気持ちはわかるのですが、内容は個々人に任せるプロテストであったため、中には、地下鉄の屋根に登って、地下鉄を止めてしまうプロテスターまで現れ、実際、車よりもずっとエコである電車を止めて、どういうつもりだ、という非難はごうごう。このプロテスターたちは、怒った通勤者によって、屋根から引きずりおろされていました。まあ、これは、ターゲットをミスった、的外れのプロテストで、私も通勤してたら、かなり怒ると思います。
また、政府に、早急に、二酸化炭素排出を0にしよと請求しながらも、実際に、どうやってそれを行うべきかという具体的な事は、少々あいまいなところがあります。現実問題として、例えば、ガソリンにかける税率をぐんと上げる、などの国民に非常に不人気になりそうな対策を政府が行うとは思えない。また、車は1台以上持たず、仕事以外で使うのは週1回にしろとか、子供は2人以上作るな、肉を食べるのは週に3回だけにしろ、海外旅行は一家庭、年に一回のみにしろ、とかの規則を、民主主義国家で法として施行するのはまず、不可能。「そんなの俺の勝手だ。」と、そういうことを言う政党は選挙で勝つ見込みゼロでしょう。また、政府としては、自国の国力や産業にマイナスになると思われるような事を、すすんでしたくない、たとえ、それが環境に悪くとも。
たとえ子供がいて、その将来が心配だ、などと言いながらも、人間とは短期的なものです。長期的視野をもって、今の自分の生活レベルをぐっと下げるような事はしたがらないのが人情。だから、やるのは、さほど個人的犠牲を伴わない、3Rs(Reduce, Reuse, Recycle、物資の使用・購買を減らす、再使用する、リサイクルする)くらい、という事になります。
このリサイクルというのも、先進国では、地方自治体で集めたものが、自分たちだけでは処理しきれず、金を払って、他の国に送って処理してもらっているという状態が多々あるそうです。そして、後進国などに送られた、このリサイクルすべきものは、やはり、そこでも処理しきれず、そのまま捨てられ、海に流れ出し、海のプラスチック公害に繋がっているという恐ろしいドキュメンタリーも見ました。リサイクルをして何か良いことをした気分になっていても、確かに、その後を確認してるわけではないですから、どうなってるかなんてわかりません。実際、リサイクルできると言われながら、リサイクルを非常にしにくい、または、不可能なもので作られている物も沢山あるようなのです。
例えば、少し前まで、紅茶などのティーバッグは、燃えないゴミと共にリサイクルできたり、コンポストにしたりできるという話でしたが、最近になってから、実は、ティーバッグの紙と紙を張り付けるために、プラスチックが使用されているという事が一般に知られるようになり、ティーバッグはリサイクルには不可である、一般ごみとして扱われるべきだという事になったのです。うちは、ティーポットにばらのリーフティーを入れてお茶を飲むことがほとんどですが、時にアールグレイなどはティーバッグも使いますので、今までリサイクルしてきたティーバッグは、一体どうなっていたのだろう、土壌を汚染する結果になっていたのか・・・と考えざるを得ません。製造側が、しっかりとした情報をくれないと、こういうことになります。この件が、公になってから、やっと、紅茶メーカーは、紙をふさぐのにプラスチックに変わるものを考え始めているようですが。今のところは、使い終わったら、紙を引き裂いて、紙は捨て、内部の茶殻だけを、庭の花壇にばらまいたりしています。
もっとも、たとえ一部でも、きちんとリサイクルされていると信じて、個人の立場としては、3Rsくらいは最低でもやるしかないです。これすらやらなかったら、もう道はないでしょう。
政府がイニシアチブを取ってくれなくても、個人的に、まあ、このくらいなら出来るかなあ、というようなことは、
3Rsは最低限出来る事なので必ずする
余暇などには、できるだけ車を使わず、歩き、自転車、公共交通機関で移動する
肉野菜はできるだけ、近場で栽培育成されたものを選んで買う
入手可能な場合は、有機野菜の購入も考慮する
食べる肉の量を大幅に減らす
くらいでしょうか・・・。
この「肉の量を減らす」・・・というのは、牛などの家畜を育てるという作業は、大変なエネルギーを必要とするため。家畜のための水の量、餌となる食料を育てるために必要な広大な土地とエネルギー、更に、牛のおならとゲップから出る、二酸化炭素より強烈なメタンガスの悪影響は、馬鹿にならないものがあるのだそうです。
ですから、食べる肉の量を減らす、またはベジタリアンになる、更にはビーガン(vegan)になるというイギリス人が、最近増えています。レストランや、テイクアウェイのメニューでも、ビーガン・オプションあり、というのを良く目にするようになり、スーパーでも、ビーガン食品をまとめて売っている一角も出てきています。
もっとも、大規模野菜栽培にも、大量の水の使用、農薬の使用、土壌の質の悪化と、それなりの問題はあるようですが。ただし、現段階で、地球上で栽培される農作物の40%もが、家畜を養うために使用さるという、非常に効率の悪い事が行われているのだそうです。世界中で、富裕層がどんどん増えていくと、以前にもまして、肉の消費量も増えていき、牛などを放牧されるための土地、更には、そうした家畜を育てるための広大な大豆畑、トウモロコシ畑等が必要となり、ブラジルなどでは、そのために、アマゾン森林の大規模伐採が続いているのだと。
昆虫を養殖して食べたらどうだ、という話も出てきていますが、これは、この国では、流行らないでしょうね。
これからイギリスでビジネスをやろうという人には、ビーガン、エコ関連は延びすじでしょう。最近、スーパーで買ったオーガニック豆腐のパッケージに、以前、同じものを買った時には見た覚えが無かった「ビーガン」という一字が加えられているのに気が付きました。
逮捕されるミスター・ブロッコリー |
Give peas a chance. (ギブ・ピーズ・ア・チャンス)
豆にチャンスを与えよ。
とのたまっています。これは、傑作。
よく反戦運動で、
Give peace a chance. (ギブ・ピース・ア・チャンス)
平和にチャンスを与えよ。
というスローガンを唱えたりしますが、それを文字ったもの。きっと、逮捕される前から、捕まったら、そう言おう、と、お笑い芸人の様にネタをひねっていたのでしょう。
それぞれの国、いいところ、悪いところはありますが、イギリスの好きな部分は、こういう、政治的問題意識を持って実行に移しながら、気のきいたジョークを飛ばすようなおチャッピーな人たちを多く輩出するところです。彼は後に無罪釈放されていますが、大工だから、職業上、ワゴン車にのって排ガスをまき散らせてるはずだ、何たる偽善者、と一部叩いている人もいましたが、それでも、害を少しでも減らそうと、彼なりに努力しているわけなので、現状維持の何もしない人よりはいいわけでしょうに。
私は、ベジタリアンにはなれないです。更には、乳製品や卵にも手を付けないビーガンたるや、もっと難しい。少なくとも、我が家でも、肉の消費量は、気にして、少し減らしてはいます。もともと、先進国でも、かつて、肉というのは、ぜいたく品であったのですから。江戸時代の日本人は、四つ足は食べなかったわけですし。どうやって育てられたかもわからない、粗悪な安い肉を毎日のようにガブつく習慣をやめ、戸外の良い環境で飼育された良質の肉に、多少高めのお金を払って、少量だけ、ありがたく食べる、という風潮にもどすべきだ、という話も出ています。過食の時代、たしかに、その方が、健康にもいいでしょうし。
食品や物品に関して、トレーサビリティーという言葉が、最近よく使用されます。栽培、育成、製造されてきた過程を、その元まで辿ることができる、という事。物を購入する時に、これを明記することによって、消費者が、比較的その製造・育成過程がエコで、搾取等が行われていない物品を購入するのを容易にできるという利点があります。でも、これは、個人というより、それこそ政府、企業がきちんとやってくれないと、わかりにくいものです。
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