グリーン・トマト・チャツネ

悪天候の夏とあって、今年育てたトマトは、ほとんど赤く熟さず、夏も過ぎようというのに、頑固に緑の顔のまま。去年は、7月にすでに毎日のように赤いトマトを摘んで食べていたのに。今後の天気予報を見てみると、20度を越す日は、もう、しばらくはやってきそうもないので、思い切って、グリーントマトをすべて収穫し、苗を抜き取りました。これで、また、ひとつのシーズンにさようならです。

収穫したグリーントマトを室内に移動させ、さて、これが全てちゃんと熟してくれることやら。山積みのグリーントマトをながめながら、人から「グリーントマトチャトニー(チャツネ)でも作ってみたら?」と提案された事が、頭をよぎりました。

チャツネ、またはチャトニー(chutney)は、もともとインドの食べ物です。手持ちの食べ物辞典によると、インドでのチャトニーのつづりは、古くはchutni、今はchatni。野菜や果物をスパイス、ハーブ類で調理し、ごはん等の淡白なものと一緒に食べる、いわば、日本の漬物、おしんこのようなものでしょうか。チャトニーは、大英帝国初期の時代から、インドへ渡ったイギリス人たちに、さかんに取り入れられていったそうです。インドのチャトニーの味は、すっぱいか、甘酸っぱいものを、イギリス風チャトニーは、嗜好にあわせ、甘味に重きを置く傾向があるということで、見た目は、ジャム。だから太っちゃうんですよね、こっちの人。インドでは、地域により、異なる材料を使い、たとえば、ココナッツのチャトニーなどは、南インドで主流だそうですが、トマトチャトニー(グリーン、レッド共)は、インドでも全域で食されるということ。

さて、それではグリーントマトチャツネを作ってみるかと、レシピを調べたところ、グリーントマトと刻んだたまねぎを塩にまぶし、一晩置いてから調理する・・・というのがもっぱらの感じです。「面倒くさいな」とずぼらな私の心がつぶやく。

フード・ジャーナリスト、テレビ・シェフのナイジェル・スレーター氏のレシピに行き当たると、彼のものは、この下準備なしで、即行で調理するものでしたので、これにしました。弁解しておくと、ずぼらな理由の他に、この人の書く食べ物の記事は好きだし、彼のレシピは以前にも、いくつかまねっこした事があり、美味しかったという理由もありです。彼のレシピが他のと違ったのは、即行であることと、グリーンと一緒に、赤の熟したトマトも混ぜて一緒に使う、というもの。この未熟、完熟コンビネーションが、いけるのだそうです。

レシピをざっと訳すと

材料
トマト(グリーンとレッドを混ぜて)900グラム
たまねぎ 350グラム
レーズン 90グラム
マスコバド糖(ライト、色の薄いもの) 250グラム
*マスコバド糖が入手できなければ、他のブラウンシュガーでもよいと思いますが
唐辛子 中サイズのもの1つ
塩 1テーブルスプーン
マスタードシード 2テーブルスプーン
白ワインビネガー 300ミリリットル

(私は、人から「あまり砂糖を入れないほうがいい」と助言されたことと、歯の健康と体重が気になることもあり、マスコバド糖の量は200グラムに減らして入れました。この他も、大体、イギリスのデザート類のレシピの砂糖やバターの量は少々減らして入れるのが常です。また、辛いものがあまり好きでない夫婦なので、唐辛子も、種をきれいに取り除いて、半分だけ使用。)

トマトを半切りにし、グリーントマトのみを、荒く刻んだたまねぎと、他の材料とともに、ステンレススチール鍋か、ほうろう鍋に入れる。
沸騰させ、その後火を弱め、合計約1時間ぐつぐつ。ただし、25分たった時に、熟したトマトを加え入れ、煮つづける。チャトニーが鍋にへばりつかぬよう、時々混ぜる。
完成したら、容器に移し、蓋をする。ブツを容器に移す前に、容器の熱湯消毒は必要で、熱湯を流し込んで、2,3分おいて、湯を切り、よく乾かしましょう。

容器には、上の写真のキルナージャーを使いました。ヨークシャー州にて1842年に創業されたブランド、キルナー(Kilner)ですが、今では、別のキッチンウェア・ブランド、メイソン・キャッシュを所有する会社によって製造されているようです。

調理中、、だんなは、「ぷはっ、ぷはっ!すごい酢のにおいだ。ぷはっー!」と大げさに叫びながら、家中の窓を開け放っていました。こういうものを作りながら、かき回していると、いつも、秘薬を作る魔女のような気分になるのです。できあがったものは、わりと強烈な味ではありますが、ごはんの上にちょっとだけのせて、試し食いをしてみると、美味しい。一応は、成功であります。長持ちしますしね。チーズと一緒にサンドイッチに挟んで、肉の付け合せにして、スープにぽとんと落として、食べ方色々です。

ここで一歌、

夏過ぎて 未だ熟さぬトマトなら
チャトニーにして ちゃっと煮よう

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