運河は続くよ、どこまでも

「運河沿いの散歩だったら、アックスブリッジ(Uxbridge)とリックマンズワース(Rickmansworth)の間をグランド・ユニオン・カナルに沿って歩ける。わりといいよ。」と人から教えてもらい、さっそくこの区間を、友達と歩きに行ってきました。

グランド・ユニオン運河(Grand Union Canal)は、前回の記事にも言及したように、ロンドンとバーミンガムを結ぶ、いくつかの支流を持つ長い水路。お勧めしてもらった、アックスブリッジとリックマンズワース間は、両方とも地下鉄メトロポリタン線の駅から歩けるので、車を使わず、ロンドン中心部からも比較的便よく行けるのです。

アックスブリッジ駅で下車して、運河を見つけるまで、ちょいと人に道を聞いたりしましたが、運河にたどり着いてからは、どこまでも続く運河の脇を、ひた歩くだけです。

ただ、歩き始める前に、ボートに乗っていた女性に「リックマンズワースは、こっちの方向でいいんですよね。」とは、一応確認。女性は、「イエス」と言った後、少し経って、私たちがかなり離れてから、思い起こしたように、「でも、かなり距離あるわよ~!」と叫んでくれました。距離は、約7マイル。まあ、平地ですので、それほど疲れないでしょう。

ところどころにベンチも置かれていて、ちょっと一服もできました。ただ、歩く人より、ちゃりをこいで行過ぎる人の方が多かったです。

そして、さらには、ちゃりをこぎ行過ぎた人の数より、見かけた水鳥の数の方が多かった・・・。

馬に引かれた貨物ボートが、このあたりを行き来した古き日をしのばせるパブの看板が目に入りました。

道中、6つか7つの、水位を調節する水門(ロック)に出くわし。

やはりボート・ハウスはあちこちに停泊されています。

このボートの住人は、私がガーデンに置いてあるのと、まるで同じ、居眠りするドラゴンの置物を、ボートの上に飾っていましたので、同じ趣味を持つ人間のよしみで、写真をぱちり。

ボートの住人たちが作ったちょっとしたアートなども、道端ところどころ置いてありました。自転車のサドルや、その他もろもろの廃材を使って作った、この巨大トカゲが良かった。口から飛び出している舌は、自転車のチェーンです。

こちらは、材木を掘り込んだトーテンポールのような置物。

ボートでの生活も、こうして傍から見てる分には面白くていいけれど、実際、自分でそういう生活がしたいかというと、私は後ずさりです。毎日お天気で、冬も温暖気候の国だったらいいですが、雨続きと、寒さで、狭いボートの中にずっといる事になると、つらい。

ボートに住むより、こういう、運河沿いの素敵なおうちに住んでみたい気はします。

こんな家に住んでたら、一日中、庭に座っていても飽きないな。

上の写真の右手の家は、壁がすべてガラスで、金魚鉢の中で生活しているよう。ライフスタイルを、運河沿いを歩く人々に見せびらかしたいのかな。でも、これじゃ、プライバシーないでしょ。さすがに、トイレとお風呂はガラス張りではないようですが。

この庭を持つ家の住人は、「Just Married」(結婚したて)と、札を立て、宣伝してました。「離婚したて、新しい妻求む」なんて立て札は、さすがに見ない。

運河沿いの家の庭で、他には、「HS2に反対」と書かれた立て札が目に入りました。このHS2は、ハイスピード2と呼ばれる、ロンドンとバーミンガムをつなぐ高速電車路線の建設。この路線が走る予定の地の住民たちは、景観が損なわれる、騒音に悩まされる、などの理由で反対運動を起こしています。一応、建設に当たっては、景観などは考慮されると思うのですが、口には出さずとも、反対の一番大きな理由は、「(現在は高価な)家の値段が下がる可能性がある」じゃないでしょうか。このあたり、裕福な場所ですから。

バーミンガムまで高速電車が通ると、その後は、その高速路線がマンチェスターとリーズ、さらには、いずれスコットランドまでつながることになり、将来、遠距離国内の移動時間は、かなり短縮されることとなるのでしょう。日本の新幹線は、やはり便利ですし、車旅行より、基本的には電車旅行のほうが好きな私は、HS2は、建設したほうが良いと思う一人です。高速道路や飛行機の国内線を増やすよりも良いでしょう。

途中、こんな立て札も目に入りました。「魚を持っていかないでください」と、英語と、おそらく、ポーランド語とロシア語で書かれているのです。下の方には英語で、「魚泥棒は、警察に通報願います」。東欧系の移民が、無断で魚を釣って、盗んでいくという話をよく耳にしますが、こういう札を見ると、なるほど、噂だけではないのです。さらには、彼ら、水鳥を捕まえて、バーベキューにして食べる、などという話もありますが、こちらは、眉唾か。

リックマンズワースに近づくと、運河の向かいに、スーパーマーケットのテスコが現れ、その脇には、客専用駐車場ならぬ、客専用ボート停泊所がありました。「お客様の停泊のみ」との看板が立っているものの、止まっているボートはひとつもなかったです。ボートの住民も、運河沿いを自転車で走って買い物に来たほうが早いのではないでしょうか。

運河の道は、まだ先へ続くものの、予定通り、リックマンズワースで、運河を離れ、地下鉄の駅へ向かい、帰途に着きました。

運河を辿って、あちこちのB&Bに泊まりながら、全国つづうらうら旅行したりするのも楽しいでしょうね。それは、また、いつの日かの夢としてとっておきます。

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