ポッキリ柳

 

先日、東京でイチョウの木の大枝が10メートル上から自身の重みで落下し、たまたま下を歩いていた男性が死亡したというニュースを読んでいた。頭に浮かんだのは、先日、ほぼ毎朝歩く、小川沿いの散歩道をふさいでいたポッキリ柳の大枝だった。折れて、ずどんと散歩道に落下したらしい。えっちら、おっちら枝葉をまたいで通過した。

柳と言うと枝を風になびかせゆれる、あのしだれ柳(Weeping Willow)を連想しがちだ。実際、児童文学「たのしい川辺」(Wind in the Willows=直訳:柳の中の風)の英語の題名なども、しだれ柳を指したものだし、陶器のミントン社の考案したウィロー・パターンというデザインもしだれ柳。しかし、イギリスの川沿いを歩いていると、しだれ柳の他にも、このポッキリ柳に出くわすことも多い。

ポッキリ柳・・・英語での俗名はCrack Willow 。ラテン名はSalix fragilis。Crackは、動詞としては折れる、ひびが入る。名詞では、ひび、亀裂と言った意味。一方、fragilisとは、脆い、折れやすい、を意味する。しだれ柳とは違い、直立して生えていく。25メートルまで成長するというので大木も多い。枝もかなりの太さと重さを持ち、これが往々にして、クラック!と音を立て折れる・・・よって、Crack Willow、ポッキリ柳、折れやすい柳というわけだ。

私も、あの大木の枝の下を歩いている時にポッキリこられていたら、下敷きになっていたかもしれない。数はさほど多くないかもしれないが、年に何人かは、落ちてくる枝でけがをしたり死亡したりすることはある。風が強い日など、ポッキリ柳が生えている場所を歩くと、風に揺られて木の内部から、ぎぎぎぎ、ぐぐぐぐとうめくような音が聞こえて来る時もある。木の内部に何者かが潜んでいるのではないかと感じてしまう。

4,5日で、折れた柳の大枝は散歩道から除去されていたけれども、上を見ると、あぶなげに頭上に斜めに伸びている大枝がまだあった。(上の写真)これなんかも、いつかはクラック!と落ちてくるのだろう。あわわと、急いで下を通過した。


小川の反対側は、水車小屋のある大きな屋敷の敷地になっている。

敷地内の端の川沿いに今は使われていないツリーハウスが柳の幹に組まれているのが散歩道からも見える。こちらはしだれ柳の巨木のようで、かなり安定感のある幹。幹がいきなり折れることは、しばらくは無さそうだ。この館の子供たちによって、一体、何年前まで使われていたのだろうか。朽ちるに任せ放置されており、蔦がハウスの窓や入口から吹き出し、柳の葉が伸びすぎた髪の毛のように上に垂れ落ちている。ゲゲゲの鬼太郎と目玉おやじでも、住んでいそうな気配がする。

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