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ヴァンダリズム

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 午前中、電車で10分ほどの隣町のマークス&スペンサーに下着や靴下などの買い物に出た。 我が町は、町の中心部のショッピングセンターに並ぶ店が限られている。マークス&スペンサーのようなデパート系の店は、人口が最低でも6万はいなと店を設置しないと聞いたことがある。人口3万を切るうちの町では小さすぎるのだ。ちなみに、イギリス人の大半はマークス&スペンサーの下着を身につけているという話だ。うちの旦那も物心ついて以来、パンツはマークス以外のものを買ったことが無いのではないかと思う。最近では、ウェストから下に身に着ける物は全部マークスで調達しているし。上に着ている洋服を透かして見ることができる眼鏡などあったら、それをかけて町行く人を眺めたところ、みなマークスの下着を着て歩いていると思うと時々可笑しくなる。話が脱線した・・・ 隣町に行くときは、大体いつも、駅からすぐの公衆トイレで用を足してから、すがすがしい気持ちで買い物をスタートするのだが、本日は、入ろうとした女子トイレが警察の立ち入り禁止テープのようなもので閉鎖されており、 「Extreme Vandalismのために、女子トイレは使えません」 の札が出ていた。Extreme Vandalism=過激な破壊行為。「過激」とわざわざ付け加えてあるところを見ると、何者かが、便器自体を使用不可能なまでに叩き壊したりしたのかもしれない。隣町は、特別に柄の悪い場所でもなく、比較的裕福な町でもある。 ヴァンダリズムは、遠い昔、初めてイギリスにやって来てすぐに覚えた言葉の一つだ。ダメージを与えること自体を目的とした破壊行為、要は破壊のための破壊。もっとも大学受験の時などにも習ったのだろうが、こちらの日常会話の中に、わりとよく出てくることにすぐ気が付いた。それだけ、イギリスではこうした「破壊行為」が日本より多い。公共物や他人が大切にしている物を壊すことに快感を感じる、という理解しがたい頭をした人物たちが沢山いる。刺激を受けるというのは、英語でget a kickなどともいうので、まさに、何かをキックして壊すことでキック(興奮・刺激)を得ているわけだ。 それこそ人口3万を切るうちの町でも、先月ショッピングセンターのゴミ箱というゴミ箱が、夜間に、ことごとく引き倒されてゴミが花吹雪のごとく散乱していた。このゴミ箱、しっかりとした鉄製なので、...

ハーベストムーン、ハンターズムーン、ブルームーン

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通常の場合、1年に12回現れる満月には、それぞれニックネームがある。主に北米先住民の文化から来たものだそうだ。 今年(2024年)は、9月18日がハーベストムーンと呼ばれる満月、10月17日がハンターズムーンという満月の夜だった。両方とも、先人の息づかいを感じるような季節感漂うニックネームだ。 ハーベストムーン(Harvest Moon  収穫月)は、日本の中秋の名月と同時期の満月(ただし中秋の名月は必ずしも満月とは限らない)。往々にして秋分の日に一番近い満月で、夏も終わり収穫の時期であることに起因する名前。この時期、月は明るく、出るのも早く、農民は長い時間収穫を続けられる。 上の写真は、先月のハーベストムーンの1日前に取った。もんわりとした薄い雲が流れる日で、それが月を見え隠れさせる様子に趣があり、しばらく庭に突っ立って見ていた。翌日の実際のハーベストムーンは、雲のない空に煌々としていた。明るいなとは思ったが、私は前夜の月空の方が気に入った。 ハーベストムーンの次にやって来る満月が、ハンターズムーン(Hunter's Moon 狩猟月)。草木も枯れ、木々の葉も落ち始め、夏の間に肥え太った獣たちを狩るのに適した季節ということから来たようだ。ハーベストムーン同様、明るく、空に輝く時間も長いので、狩人が獣を追い求めるのに十分な時間がある。 更に、今年の8月19日は、ブルームーン(Blue Moon)と呼ばれる満月の夜だった。 通常、満月と言うのは1年に12回あるわけだが、月の周期(29.5日)と暦の日数に差があるため、大体2年半に1回の割合で、これが13回ある。この通年より、ひとつ多い満月がブルームーンと呼ばれるのだが、その定義は2つ。ひとつめは、伝統的な、 天文学的季節 を単位としたブルームーン(Seasonal blue moon)。ひとつの季節に満月は通常3回だが、それが、ある季節に4回ある場合、その3回目の満月をブルームーンと呼ぶ。ふたつめは、ひと月を単位としたもの(Monthly blue moon)。ひとつの月に2回満月がある時、その2回目の満月をブルームーンと呼ぶ。 今年8月19日の満月は前者の定義の季節的ブルームーンだった。 ブルームーンの名の由来は、青い色とは無関係らしい。実際、月を見て青だと感じる人はいないだろうし、大体、月が青かったら、夜空...

チャットGPT君との初めての会話

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 先日、初めてチャットGPT君と対話をした。何を今更って感じだが。 とりあえず試しに他愛無いことをあれやこれやと聞いた後、テクノロジーの話になった。 私の日本の母親がスマホを持っていない話をし、「日本でスマホを持ってない人って人口の何パーセントくらい?」。この程度の情報は、普通にググっても比較的簡単に見つかるのかもしれないが、とりあえず。これに対して得た返答は「2024年のデータで3%」だ。少ないのはわかっていたが、「それにしても、こりゃ、本当に少なくないか?」と思い、隣の部屋にいた、うちの旦那に声をかけた。 「日本でスマホ持ってないのって人口の3%だって」 「3%?そりゃ、少なすぎないか?」 こっちが思ってたのと同じ言葉が返ってきた。そして、旦那は続ける。 「その人口っての、総人口じゃなくて、働く年代の人口とか、そういうんじゃないの? だって、赤ん坊もスマホ使わんだろ」 「そうだね」 PCに戻って、GPT君に聞き直した。 「その人口っての、日本の総人口じゃないよね?赤ん坊や小さい子供もスマホを使ってないわけだから、3%って少なすぎる気がするんだけど。人口の定義を明確にして。」 そこまで書いた後、ちょっと余興を入れてみようと、「今度の回答はざーます言葉でお願い」と、さらなる注文を付けくわえた。返答は下の通り。 スマホを持っていない方が約3%と申し上げましたが、これは 15歳以上の人口 を基にしたデータでございますのよ。ですから、赤ちゃんや未就学のお子様たちは、この割合には含まれておりませんの。おほほ。 例えば、総務省の調査などでは、15歳以上の方々を対象にスマホ普及率を調べておりまして、そのうち97%がスマートフォンをお持ちになっているという結果が出ておりますわ​ 「おほほ」まで入れてくれる気配りには、無茶うけた。 それにしても・・・。正確な、または意味のある情報を得るというのは結構難しい。人口が何を指すのかもわからぬまま、人口の3%がスマホを持たない、とそれだけでは、正確な答えとは言えない。もっとも、これは私の質問の仕方も悪かったというのも多少あるのかもしれない。 「こういう質問をされた時、その人口というものの定義を必ず入れるべきだと思わない?」 と責任を全てGPT君になすりつけて聞いてみると、 「確かに、人口の定義を回答に含めることで、情報の信頼性や正...

ブラムリーアップルの歴史

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  昨日の投稿 に続いてりんごの話題を。今回はブラムリーアップルという、イギリスの料理用りんごの誕生物語。料理用りんごはアップルパイ、アップルクランブルなどのデザートや、ポークと相性のいいアップルソースなどに用いられる 前回の投稿でも書いたよう、種から育てたりんごというのは、人間同様、往々に親の性質を受け継ぐことなく全く違った性質の木に成長してしまう。そのため、りんごというのは、品種の数がとても多いが、ある特別な要素・・・甘い、すっぱい、汁が多い、ジュースにいい、調理に最適、云々をそのまま新しい木に受け継がせたいとき、種には頼れないということになる。そこで接ぎ木(grafting)という方法が登場する。元になる台木に、クローンを作るべき、好ましい品種のりんごから取った穂木を埋め込み合体させ、二本の異なった木を、穂木の性質を受け継いだ一本の木に育てあげる。 オリジナルのブラムリーアップルの誕生は今から200年以上前のこと。ノッティンガムシャー州サウスウェル(サゼルとも発音)という町に住んでいた若い女性、メアリー・ブレイルスフォードが、1809年に、両親のコテージの庭にリンゴの種をいくつか植えたことから始まる。 やがてコテージの持ち主は変わり、マシュー・ブラムリー氏が住むようになっていた1837年に、メアリーの植えた種から育ったりんごの木のひとつが、つやつやと大きく、調理した時に絶妙な舌触りと美味しさを出す実をつけるに至った。 1856年に地元で育苗を営む家庭に生まれた青年、ヘンリー・メリーウェザーは、ブラムリー氏の庭のすばらしい実をつけるりんごに目を付け、氏から接ぎ木のための穂木をいくつか取らせてもらう。このりんごの名を聞かれた時、ブラムリー氏は「吾輩の庭で育ったのだから、ブラムリーだ!」じゃんじゃん、とあいなったわけだ。 やがて、接ぎ木で苗を増やしたメリーウェザー氏は、果実を売り、苗を売り、この新しいりんごの評判を広めていく。ブラムリーアップルは商業的に大成功をおさめ、今やイギリスの料理用りんごとしては押しも押されぬナンバー1だ。ただ、初めにコテージの庭に種を植えたメアリーは、1852年に亡くなっており、自分の植えた種が世界的に有名なりんごになろうとは知らずに終わってしまった。こうして、何の気なしにやった自分の行為が、後々に社会に大きな影響を与える現象を生み...

りんご物語

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  庭の奥のりんごの木が例年にないほどの豊作になった。しかも質が良い。この家に住んで四半世紀になろうとしているが、ここまで沢山の質の良いりんごを収穫したことはない。 毎年、実はそれなりにつくのだが、収穫に至るまでに虫に食われる、鳥につつかれるなどのダメージも多いのに、今年はそれもあまりない。虫や鳥の数が減っているのか?と考えると、それは自然にとって良いことばかりではないのだが。 この家が建てられたのは、1960年代で、りんごの木はおそらくその直後に、この家の最初のオーナーによって植えられたのだと思う。よって、樹齢は60年以上。りんごはイギリス国内だけでも2000以上も種類があるというので、うちのりんごの木が何と言う種名かは、記録も残っていないので定かではない。味は甘酸っぱくジューシーで、食べても美味しいが絞ってジュースにするのも適している感じがする。短所は、果肉がやわらかいため、落下すると簡単に傷む。実際、先月遊びに来た友人は、あざだらけだったので、芝の上に落ちたまま放置してあったりんごたちを拾い集め、「もったいない、ジュースにする」と言って持って帰っていた。 かつては、イギリスの庭にリンゴの木というのは定番で、我が家のある通りの家の大半にも、りんごの木が植えられていた模様だ。時が経つと共に、りんごの木というのはオールドファッションとなり、家が売られ、住み手が変わると、邪魔だとばかりに即座に伐採されてしまうようになった。今では、うちの通りで、昔ながらのりんごの木を持っているのは我が家だけではないかと思う。 二件先の家 が、60年代に植えられたりんごの木を保持していたものの、数年前に、ついに切り倒してしまっていた。この時、木を切りに来たお兄さんと通りで話をした。「なかなか個性のある老木で、実もまだなるというから、切るのは惜しいんだけど。顧客が切ってくれと言うからには仕方ない」と彼は言った。 りんごは、バナナ、アボカド、桃、メロンなどと同じく追熟する。収穫した後も、熟して甘くなっていく。まだすっぱそうな緑のりんごも何個も収穫したが、並べて保存しているうちに赤いクレヨンで上から周囲に何本も線を描いて行くように、少しずつ色づきはじめている。 ブドウ、いちご、ブルーベリー、さくらんぼ、柑橘系果物などが追熟しないのに対し、なぜに追熟する果実があるのか、という理由に関して...

ポッキリ柳

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  先日、東京でイチョウの木の大枝が10メートル上から自身の重みで落下し、たまたま下を歩いていた男性が死亡したというニュースを読んでいた。頭に浮かんだのは、先日、ほぼ毎朝歩く、小川沿いの散歩道をふさいでいたポッキリ柳の大枝だった。折れて、ずどんと散歩道に落下したらしい。えっちら、おっちら枝葉をまたいで通過した。 柳と言うと枝を風になびかせゆれる、あのしだれ柳(Weeping Willow)を連想しがちだ。実際、児童文学「 たのしい川辺 」(Wind in the Willows=直訳:柳の中の風)の英語の題名なども、しだれ柳を指したものだし、陶器のミントン社の考案した ウィロー・パターン というデザインもしだれ柳。しかし、イギリスの川沿いを歩いていると、しだれ柳の他にも、このポッキリ柳に出くわすことも多い。 ポッキリ柳・・・英語での俗名はCrack Willow 。ラテン名はSalix fragilis。Crackは、動詞としては折れる、ひびが入る。名詞では、ひび、亀裂と言った意味。一方、fragilisとは、脆い、折れやすい、を意味する。しだれ柳とは違い、直立して生えていく。25メートルまで成長するというので大木も多い。枝もかなりの太さと重さを持ち、これが往々にして、クラック!と音を立て折れる・・・よって、Crack Willow、ポッキリ柳、折れやすい柳というわけだ。 私も、あの大木の枝の下を歩いている時にポッキリこられていたら、下敷きになっていたかもしれない。数はさほど多くないかもしれないが、年に何人かは、落ちてくる枝でけがをしたり死亡したりすることはある。風が強い日など、ポッキリ柳が生えている場所を歩くと、風に揺られて木の内部から、ぎぎぎぎ、ぐぐぐぐとうめくような音が聞こえて来る時もある。木の内部に何者かが潜んでいるのではないかと感じてしまう。 4,5日で、折れた柳の大枝は散歩道から除去されていたけれども、上を見ると、あぶなげに頭上に斜めに伸びている大枝がまだあった。(上の写真)これなんかも、いつかはクラック!と落ちてくるのだろう。あわわと、急いで下を通過した。 小川の反対側は、水車小屋のある大きな屋敷の敷地になっている。 敷地内の端の川沿いに今は使われていないツリーハウスが柳の幹に組まれているのが散歩道からも見える。こちらはしだれ柳の巨木のようで、...