スーパーの宅配ブーム

3月に、イギリスのロックダウンが発表された後、うちの様にリスクグループのダンナを持つ家庭は、買物は、なるべく、周辺の親戚や友達に頼むようになどと言う話だったのです。が、周りに親戚もいないし、そんなことくらいで、近所の人に頼みたくもなかったので、しばらくの間、私がぼつぼつとリックを背負ってスーパーへ出かけていました。

スーパーの宅配に頼むという手もあったのですが、とにかく、ロックダウン開始時期に、国民が一斉にわーっと、宅配を行っているスーパーのサイトに押し寄せ、開いている日やスロットを見つけるのはほぼ不可能な状態。スーパーによっては、サイトに入るのに列ができ、待ち時間は1時間などと出てくる始末。仕方なく、実際に地元のスーパーに行くと、結構空いているという妙な状態でした。とにかく、感染と死亡者が日々上がって行っていたので、健康な人でも、あまりスーパーに行きたくなかったのでしょう。当時は、客はおろか、レジを含む、店の人も一切マスクをしていなかったので、空いていても、店内で長居はしたくなかったですね。

そのうちに、政府からの手紙で、リスクグループで、食料雑貨の入手が難しい人は、オンラインでレジスターすれば、緊急物資が無料で宅配されるという事を知らされ、このサービスを使う事約1か月。そして、やっと、念のため、宅配サービスに登録だけしておいた大手スーパーである、テスコから、だんなにメールで、「あなたは、国で指定するリスクグループであると理解しています。当社では、そういった人たちのために優先スロットを作ったので、ログインしてみてください」と有難い知らせが入り、さっそくログイン。見事、優先の宅配スロットの予約ができ、これで、買い物のジレンマは一件落着。こうして、始まったテスコにお願いする宅配サービスの1回目は、4月終わりの事でした。以来、毎週、宅配を頼むようになり、私は実はそれから一度もスーパーへ足を運んでいないのです。全国的ロックダウンが終わってから、現在も使い続けています。

なんでも、同じことを、21回だか繰り返すと、それは習慣になるのだそうです。私も、もうそろそろ、21回は、スーパーの宅配を使用しているはず。(ちなみに、この21という数字は、ラジオのニュースで、聞いたのですが、誰がどう考えたのかは知りません、28回だったような気もします。とりあえず、そのくらいの数字という事でご了承ください。)

うちのように、ロックダウン中に宅配を始めて、そのまま続けている家庭は多いのだそうで、オンラインでの買い物と宅配ブームはブームで終わらず、そのまま新しい習慣と化す可能性が大です。特にまた、今回のコロナ第2波の噂で、需要は減る様子を見せません。このため、以前は、宅配サービスには半腰であったスーパーも、徐々に、宅配部門を開き、広げることを余儀なくされている状態。将来的に、スーパーに限らず、オンラインでの買い物と宅配を無視する店舗は、淘汰されてしまう可能性もあります。近年、イギリスに進出し、その安い価格で、イギリスの大手スーパーのマーケットシェアを食い取ってきていたドイツ系のスーパー、オールディーリドルなども、遅れを取らぬため、徐々に宅配事業を開発する動きです。

肉類は、うちの町の目抜き通りに、良い肉屋さんがあるので、やはり小規模宅配を始めたこの店から買っています。こちらも、現在、店に入れる人の数の制限を続けているので、売り上げを広げるため、宅配サービスはしばらく続ける予定の様ですし。

10月以降、イギリスでは、失業者が大幅に増える事が予想される中、スーパーは、宅配事業の拡大から、かなり大規模に、雇用人数を増やしています。つぶれてしまった会社などから、スーパーで働く人が増えていくでしょう。以前、インタヴューされていたテスコの重役は、「解雇になったパイロットなども、新しく宅配ドライバーとして働いている」などと言ってました。パイロットから宅配ドライバーへ・・・とにかく、こんな時世だから、何でもやろうという意気込みが見えて、そういう人もえらいなあ、と感心しましたが。とにかく、現段階では、スーパーが、この国を動かしているという雰囲気さえあります。

数々のコロナに対する対応の他にも、ブレグジット移行期終了後の来年早々から、商品の流通が、できる限りスムースに運ぶよう、それにむけての対策もあり、今まで以上に考えることは増えているでしょう。

テスコの宅配を使って約5か月。一台のワゴン車が、どの家庭を、どんな順番で配送を行うか、などはコンピュータープログラムなどで、一番効率の良いルートなどを考え出すのでしょうが、いや、良く機能しているものだと思います。また、この短期間で、かなりの宅配の拡大を行った模様で、最初は、優先スロットを使わなければ予約できない状態だったのが、徐々に、一般のスロットでも空きのある日を目にし、指定された1時間枠内に配達してもらえるスロットも予約できるようになりました。この1時間枠内での宅配をお願いした時も、早めに着いてしまいそうな時は、大体電話をくれ、「予定より早くいっていいか」と聞かれた事もあります。それでも、予定より遅れたことはない。こういうのも、ある程度の余裕でスケジュールを組んで、早く行っても遅れるな、という方針なのでしょう。早く着いて文句をいう人はほとんどいないでしょうが、遅れると文句がでる可能性があるので。また、牛乳などは、1週間もつように、2本購入しているのですが、賞味期間も、いつもちゃんとかなり長いものを選んでくれています。こんなのも、賞味期間1週間前に切れたりしていたら、クレームつくでしょうから、商品を選んで、パックをする係りの人は、こういう事も、固く、注意されているのかもしれません。

以前、宅配ドライバーの人に、どこから来るのかと聞くと、うちの町の小さなテスコではなく、車で20分くらいいった、商品ぞろいの良い、大型テスコから来ているとのこと。夜間に注文の品がパックされ、ワゴン車に積まれ、翌朝ドライバーが着くと、もう出発できる状況であるようです。だから、翌日配達分の注文は、パッキングの始まる前の、前夜の11時ころまでは変更可能となっています。別の宅配ドライバーの人に、「一日何件回るの?」と聞いたところによると、シフトによっても違うかもしれませんが、彼は、午前中に14件、午後に14件回ることになってると言っていました。という事は、大体1件につき15分くらいの時間があるということかな。「早く終わったら帰っていいのか?」と聞くと、予定時間より早く帰ると、給料が減るので、予定時間まで、時間をつぶす事になるのだそうです。これも、早く帰っていいことにすると、超スピードで無謀運転する人が出てくるので、事故等を防ぐためなのでしょうね。ある程度余裕をもたせながらも、時間が余り過ぎない程度の宅配数というので、午前14件、午後14件と・・・この数字にたどり着くにも、背後に色々な考えと試行錯誤があったのでしょう。

スーパーの経営などと一口に行っても、考えることは多々あり、有能な人が上にいると、やはり、その差は歴然となるのだと思います。今回、対応が一番早かったのはテスコでした。スーパーに義理を感じても馬鹿の様ですが、とにかく「買い物にあまり行くな」と言われながら、はてどうしよう、と困っていた時に、大げさながら、命綱を差し出してもらった結果、私のテスコへの好感度はかなり上昇しており、他のスーパーでのスロットを取りやすくなっている今でも、同社の宅配を使い続けています。

また、上記の通り、習慣となってしまい、テスコのサイトに慣れてしまうと、わざわざ別の会社に変える気にもならないというのもあります。買い物にさほどの時間をとられたくもないし。宅配を使い始めて気が付いたのが、買うものの70%くらいは、いつも同じもの・・・という事実。だから、新しく注文をするときは、前の週の買い物を、まとめてざばっとバスケットに入れ、それを、今週はこれはいる、これはいらないと整理していくのが常となっています。また、1週間に一回の宅配で、大体、一週間で食べきれるものの量が把握できたのも、利点。

それでも、基本的にお買い物が好きなダンナは、ワクチンができて、コロナ騒ぎが収まったら、やっぱりまた、スーパーに自ら足を運びたいなあと思っているようです。彼はあっちのスーパー、こっちのスーパーと色々試すのが好きだし、特にチーズカウンターや、ハムカウンターなどで、好みの物を、じっくり選びたい様子。私は、イギリスでは、このまま宅配を続けても、それなりにハッピーですがね。日本に帰った時は、日本のスーパーが楽しくて、ちょこちょこ出かけてましたが。いずれにせよ、オンラインショッピングと、スーパーの宅配は、これから、イギリスでは確実に生活の一部となる動きです。

とスーパーの話をひとしきりしたところで、伊丹十三監督の「スーパーの女」という映画を思い出しました。「正直屋」なるスーパーが近くに新しくできた「安売り大魔王」というスーパーとのバトルのために、内部の改善と経営方針の変更を余儀なくされるという話。途中、売れなかった刺身をどばっと捨ててしまうというシーンに、こういうもったいない事は、もうやるべきじゃないだろうなあ、と思いましたが、たかがスーパー、されどスーパーと、その経営にも色々な苦労がいるというのは、こんな小規模スーパーの内幕を見てもわかります。

この映画によると、主婦は、まず、おじゃがなどの、家で切らしている野菜類からかごに入れていくのだそうで、ほとんどのスーパーで入り口付近に野菜コーナーがあるのは、このためなのだそうです。そうして、必需品をゲットしてから、さて、お買い得は無いか、変わったものはないか、今日の夕食のメインは何にしようと、もっと優柔のきくものを物色し始めるのだそうですが、これはオンラインの買い物でも同じだなあ、と妙に感心しました。

コメント

  1. ニュース報道では、イギリスは地方で日々感染者が増えている様なので、ご心配ですね。私も、そろそろ大丈夫かと渡英のつもりでいましたが、またもキャンセルで、一体この悪夢はいつまで続くのかと、年内はほぼ諦めムード濃厚です。イギリスのスーパーは、階級差(?)があるとかで、確かに地区や店によって品揃えがガラッと違う所が面白いなぁと思ったことがありました。食品コーナーは、物色し出すと止まらないですね。

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    1. たった今、感じのいいテスコ宅配おにーちゃんが帰ったところです。スーパーの階級差は確かにありますねえ。品ぞろえもそうですが、高級スーパー、ウェイトローズが近くにオープンすると、家の値段が上がるなんて話聞いたことあります。

      絶対に来なければならない用が無い限り、今のイギリスは来ない方が無難です。年内どころか、春ごろまでは控えるのが得策と思います。北の方、大学やカレッジが沢山ある町の感染が特にひどいようで、入院者数、死者も確実に増えている様子です。南にも、じわじわ広がってきそうな気がします。

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