イースト・アングリアン鉄道博物館

チャペル駅舎とイースト・アングリアン鉄道博物館入り口
前回の記事で書いたゲインズバラ鉄道の駅、チャペル・アンド・ウェイクス・コーン駅(Chappel and Wakes Colne、以後省略してチャペル駅と書きます)は、イースト・アングリアン鉄道博物館(East Anglian Railway Museum)の所在地でもあります。現在は、ひっそりとした今の駅の様子とは反対に、かつては、ここからもケンブリッジシャー州方面行きの別の支線が走り、乗り換えのための乗客が右往左往していた他にも、貨物車が、各地の産物を移動させるためにここに到着し、積み荷を降ろしたり乗せたりと、活気がある場所であったようです。

マークス・テイ駅ーサドベリー駅間を走る支線である、現ゲインズバラ鉄道も、他の多くの支線と同じく1960年代に閉鎖の勧告がなされたのですが、鉄道マニアのボランティアによって結成されたStour Valley Railway Preservation Sociaty(スタワー谷鉄道保護協会)が、反対運動を行い、1967年、当チャペル駅に拠点を構えます。周辺のすでに閉鎖された支線から、列車、信号扱所、その他の器具などの収集を開始。この区間の閉鎖は、何とか免れ、当協会の尽力で、1986年に、イースト・アングリアン鉄道博物館は一般公開を始めるに至ります。

私は、鉄道マニアではないのですが、このこじんまりした博物館が大好きで、過去、3,4回訪れていますし、チャペル駅はハイキングなどにも使うため、良く乗り降りします。以前、一度、博物館内で、ロンドンの駐在員一家風の、子供二人の家族連れ日本人に遭遇したことがあります。比較的マイナーなアトラクションなのですが、日本人は、電車好きなのか、探し当ててやって来たのでしょう。入場料は、現段階で大人6ポンド。特別なイベントのある日は、これより高くなります。

駅舎内の窓口に、人が立っていると思いきや、これはお人形で、内部は、昔ながらのチケット・オフィス。

今でも新聞、雑誌、本、お菓子などを売っている店、W.H.スミスのレトロなキオスクも再現してあります。1792年に、ヘンリー・ウォルトン・スミスが、妻のアナと共にロンドンで始めた新聞販売店。彼らの死後、商売は末っ子のウィリアム・ヘンリー・スミスによって受け継がれ、1846年に、彼は、自分と同名の息子をパートナーとして、会社は「W.H. Smith and Son」となります。鉄道建設ブームに便乗して、駅の構内で新聞、雑誌等を販売するキオスクを次々に建設していき、これが大成功。イギリス各地の駅の構内には、現在でもW.H.スミスの店は見かけますが、現在の看板は青地に白の文字。この深緑の方がシックでいいですね。店も普通の店舗でW.H.スミスのキオスクというのは、もう見かけません。

チャペル駅シグナル・ボックス内部
現在のゲンズバラ線が走っている1番プラットフォームの端には、かつて、鉄道の分岐や信号を操作した、1890年に遡る、信号扱所(Signal Box、シグナル・ボックス)がぽつねんとありますが、内部は、当時の面影を残す信号博物館。

こんなレバーがたくさん並んでいます。数ある中から、間違ったものをひいたりしたら大変な事になったのでしょうが。

博物館のメインの部分は、ゲインズバラ線の停車する1番プラットフォームから鉄橋を渡った反対側。これは、鉄橋からの眺め。右手に見えるレンガの建物は、かつて、移動中の貨物を貯蔵した倉庫(Goods Shed)。

1番プラットフォームの向こうには、コーン川(River Colne)沿いの緑の風景が広がっています。

鉄橋を渡った今は使用されていないプラットフォームには、いくつかの昔の列車がとまっており、中に入って座ることができます。

昔っぽい洋服を着て、ポーズをとってみたい感じです。

貨物倉庫の中。この建物は、時に催し物などに貸い出されているようで、博物館維持のための大切な資金を獲得するのにも活躍しているようです。

展示用の列車を修理、管理するための修理倉庫。

学校が休みの期間は、子供のために、「機関車トマスの日」などの催しが行われ、顔のついた機関車を走らせたりしていますが、修理倉庫内部を覗くと、そんな顔のある汽車のひとつが目に入りました。

チャペル・ノース・シグナル・ボックス
こちらの、「チャペル・ノース」と書かれた信号扱所は、博物館になっている1番プラットフォームのものとは違い、今も稼働可能で、それこそ機関車トマスを走らせる催しのある日などに、実際に使用されるそうです。信号扱所自体は、かつては、ミストリー(Mistley)という別の駅にあったものを移動させて、この場に設置。

チャペル・サウス・シグナル・ボックス
駅南側にある、もう一つ別の「チャペル・サウス」信号扱所。こちらも、ほとんど使用されることはないものの、稼働可能状態だそうです。これは、はるばる、リンカンシャー州から移動されて来たもの。

チャペル高架橋
さて、前回の記事でも言及した、イースト・アングリア地方で一番長い鉄道高架橋である、チャペル・バイアダクトを見るには、博物館と駅を後にし、南へ約10分ほど歩くことになりますが、行ったからには、ぜひ見てみましょう。

コーン川にかかる橋を渡った後の、村の風情もいいです。お弁当を持って、高架橋を眺めながらのピクニック・ランチも、お天気の日はおつですし、近くのパブでランチをしていってもいいでしょう。

行き方:
ロンドン、リバプールストリート駅よりマークス・テイ駅まで約55分
マークス・テイ駅で、1時間に1本のサドベリー行きゲインズバラ線に乗り換え一つ目で下車、6分。
乗り換えがうまくいけば、ロンドンから計1時間5分ほどで到着。電車は、チャペル駅到着手前で、チャペル高架橋の上を走りますが、電車内からは見れないのが残念。

East Anglian Railway Museum公式サイト

コメント