本当に長いウィンザー城ロング・ウォーク

先月中頃、一人でふらりと、ウィンザー(Windsor)へ一泊旅行に出かけました。本当に久しぶりで、過去ここを訪れたのはおそらく25年ほど前でしょうか。ウィンザー城内も入ったはずなのですが、定かな記憶も、写真も残っていません。

前回、確実にやらなかったことは、ウィンザー城から一直線に伸びるロング・ウォーク(Long Walk)と称されるながーい並木道を歩かなかったこと。ですから今回の訪問では、城を訪れるのはもちろん、このロング・ウォークを最後まで歩いて、スノウ・ヒル(Snow HIll)と呼ばれる丘の上のジョージ3世が馬にまたがる銅像までは必ずたどり着こう、と心に決めていました。

エルトン・ジョンのアルバムのジャケットに登場するロング・ウォーク
ウィンザー城を背景にしたロング・ウォークの風景は、日本にいた時に持っていた、エルトン・ジョンのアルバムのジャケットの写真にも使用されており、あれが、おそらく、私が初めて見たロング・ウォークのイメージでした。

ウィンザー城の南に広がる5000エーカーの広大なウィンザー・グレート・パーク(Windsor Great Park)の歴史は、城同様、征服王ウィリアムの時代に遡り、ウィリアムは、周辺の森を、鹿の狩猟、また、いのしし、家畜、魚など、城の食料補給、薪などの燃料、材木補給を目的に王家のものとします。ジョージ3世の時代に、これが王家の手から、議会(国家)のものへ移行したそうです。

城とウィンザー・グレート・パークを結ぶ、このロング・ウォーク設置は、ヴェルサイユなどのフランスの庭園、建造物がお好みだったチャールズ2世によるもの。まっすぐな約4キロの道は、2重の並木に挟まれ続いていますが、チャールズ2世の時代は、これはエルム(ニレ)の木であったそうですが、第2次世界大戦後に、内側はマロニエ、外側はロンドン・プレイン・ツリーに植えなおされています。

非常に暑い日であったので、歩き始める前に、街中で、ボトルの水と、帽子を買って、おニューの帽子を目深にかぶってからスタート。マロニエと、プレインツリーの木陰以外は、お日様から守ってくれるものは何もないですので。出だしからすぐのところを振り向いた風景は、まさに、エルトン・ジョンのジャケットと同じ。
私の前を、ピンクのTシャツを着、2匹の小型犬を連れてジョギングするおねーさんがいたのですが、走ったり、止まったりしながら、彼女が、ずっと道中、私の前を行き、ほぼすべての、行きの写真には、彼女の後姿が写っています。とにかく、ジョギングしている人の数は多かったです。

じりじり天気の中、中間地点に到着。ピンクTシャツのジョギングねーさんも、果敢に先に進みます。

そろそろ、終点も遠くないと思われるところで、鹿の群れが道を横切るのに遭遇。かなりの数です。現在、ウィンザー・グレート・パーク内には、500頭以上の鹿がいるそうですが、

この鹿ちゃんたちは、なんでも全員、1979年に当庭園に導入された40頭の雌鹿と、2頭の雄鹿の末裔なのだそうです。

最後のひと踏ん張りで、スノー・ヒルを登り切り。

スノー・ヒルの上に立つ、ローマ風衣装に身をまとい、馬にまたがるジョージ3世の銅像は、一般にコパー・ホース(Copper Hourse、銅の馬)と呼ばれ親しまれていますが、実際はブロンズ製。息子のジョージ4世が作らせたもので、ラテン語で「最も素晴らしい父親」などと刻まれているそうです。実際、父王の生存中、この2人は犬猿の仲で、しょっちゅういがみ合い、にらみ合いが絶えなかったのですが。父王が、あの世へ行ってしまい、もう介入されることも、小言を言われることもなく、念願の王座に就いた後は、ちょっと心の余裕を見せて、記念碑でも作ってやるか・・・となったのでしょう。(この二人にについては、過去の記事「太ったジョージと狂ったジョージ」まで。)

ここからの眺めは、ひたすら歩いた甲斐がありました。銅像の影が落ちる、涼しい場所に陣取って、小1時間、景色を満喫。ウィンザー城内とは違い、ツアーの団体さんなどもいませんし、がんばった人だけが味わえる景色。最初は、数人景色を眺めていたのも、最後の30分くらいは、私一人で、お山の大将。

更に、エネルギーがあったら、ウィンザー・グレート・パーク内を散策し、庭園南端に位置し、大きな湖があるヴァージニア・ウォーターなどに足を延ばしてもいいのでしょうが、なにせ、馬にでもまたがっていない限り、ウィンザーの街中に戻る交通機関がないので、無理して行っても、ウィンザーに戻るころには、疲れ果て、日が暮れている可能性もあります。

ウィンザーで泊まった宿の、朝食を出してくれたおねーさんに、「今日は、何するの?」と聞かれ、「ロング・ウォークを歩こうと思う」と言うと、「コパー・ホースまで、結構距離あるわよ。あと、途中、おトイレ無いから、歩き始める前に言っておいた方がいい。藪に飛び込むことになるから。」とアドバイスをくれました。おかげで、しっかり用は足してきたので、藪に飛び込む必要もなく。そのあと、私が「そこから、ついでに、ヴァージニア・ウォーターにも行けたら歩いていきたい。」と言うと、おねえさんは、ぷるんぷるんと頭を振って「You don't walk to Virginia Water!」(ヴァージニア・ウォーターへは歩くなんて無理。)と断言されてしまいました。たしかに、あそこは車で行く人が大半なのでしょう。鉄道の駅自体も、ウィンザーよりも、その名もヴァージニア・ウォーター駅の方が近くなりますし。これは、また別の機会にでも行ってみることにします。

という事で、この日は、そのまま、ロング・ウォークを引き返しました。帰りは、「いま来たこの道、かえりゃんせー」というやつで、ひたすら、また、同じ景色の中を戻るだけ。ちょっとバラエティーに欠けるというのもありますが、長年、やりたいと思っていた事を、やっと達成できて大満足。スノー・ヒルからの眺めも、しっかり心の映像に焼き付けました。

ウィンザー・グレート・パークの公式サイトは、こちら。また、この前日に観光したウィンザー城については、こちらまで。

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