日本人は菜の花がお好き?

去年、「黄色い地平線」という投稿で、4月から5月あたりにかけて、イギリスの田舎のあちらこちらで、菜の花が一面に咲いている・・・という事を書きましたが、先日、このまっ黄色の風景が、日本人観光客にうけており、菜の花畑の農場を訪れるという日本人向けツアーまでできた・・・という内容のニュースを読みました。

事の起こりは、日本人観光客を乗せたバスツアーで、観光目的地へむかう途中、こうした菜の花畑の風景の中を走る際、観光客が、窓から、さかんに、この黄色い光景を写真に撮っていたのを、ツアー会社が着目。ただ通過するだけでなく、グロスターシャー州の菜の花畑の農場への訪問を、ツアーの中に組み込んだという話です。

農場は、約49人を乗せたバス一台につき49ポンドを取っているということで、日本人観光客は、バスから降りて、菜の花畑を鑑賞した後、食用油を作るため、菜種から油を搾り出し、ボトルに入れる様子を見学するというもの。一人につき1ポンドくらいですので、農場が受けとる金額は、あまり大きくはないですが、おそらく、この後、観光客が、おみやげに、この農場で作ったイギリスのレープシード・オイルを買ってくれる事に期待をかけているのでしょう。このセイヨウアブラナの種から抽出するレープシード・オイル(Rapeseed Oil)は、直訳すると菜種油ですが、特に日本ではキャノーラ油と称されるものに相当すると思います。

最近では、オリーブ油よりも健康的という話で評判も高まっているレープシード・オイル(キャノーラ油)。

オリーブ油も、良質のオリーブを使って、化学手法を用いず抽出しているバージン・オリーブ・オイル、特に酸度が少ないエクストラ・バージン・オリーブ・オイルが良いと言われるよう、レープシード・オイルも、値段は少々高めでも、コールド・プレス(Cold Pressed)やエクストラ・バージンと明記してあるものが良質のようです。某スーパーで販売しているコールド・プレスド・レープシード・オイルを見てみると、「(コレステロールの上昇につながる)飽和脂肪酸の含有量が、オリーブ・オイルの半分、オメガ3およびオメガ6脂肪酸をバランス良く含み、ビタミンE豊富な油」との唄い文句がついていました。健康マニアの人達の中には、今までオリーブ・オイルを使っていたのを、こちらに切り替えたりする人もいるようです。

この菜の花畑の農場は、最終目的地ではなく、バスから降りて、しばし足を伸ばし、ついでに油も購入した観光客は、その後、オックスフォードやストラトフォードなどのメインの観光地へむかうという事ですので、ちょっとした寄り道企画ですね。また、菜の花が咲いている時期だけの期間限定なので、今年は、計20ほど、菜の花畑訪問を組み入れたツアーが行われ、人気のため、来年は70に増やす予定とのこと。

また、菜の花シーズンが終わって、しばらく経ち、7月あたりには、今度はうす紫っぽい青色の亜麻(英名はFlax またはLinseed、ラテン名はLinum usitatissimum)の花の季節となるので、どうやら、この期間にも、日本人観光客の農場訪問が行われるようです。

亜麻の種から取るアマニ油(リンシード・オイル Linseed Oil)は、私も、油絵を習っているときにお世話になった油。食用というよりは、それこそ油絵用等の実用方面に使われる方が多いのではないかと思うのです。また、亜麻の植物繊維ははリンネル(リネン)の原料。今も、イギリス産亜麻を使用して、イギリスでリンネルを生産しているかは定かではありませんが。この植物のラテン名の後ろの部分、usitatissimumは、私のガーデナー用ラテン語辞典によると、「most useful 非常に有用な」の意味。種からはオイルが取れ、繊維は布に使え、「なんてお役立ち!」というところからついた名前でしょう。農場が、どんな亜麻グッズをそろえて日本人を待っているのか、少々興味あります。それとも、こちらは、花の見学だけかな。

亜麻の花畑は、菜の花畑ほど頻繁には出くわしません。その分、希少価値もあって、私はこの風景の方が好きです。

テレグラフ紙のサイトに載ったこのニュースの原文は、こちらまで。上に載せた日本人観光客の写真も、このサイトより拝借しました。ところで、日本人観光客は、菜の花もさることながら、帽子が好きですね・・・と、この写真を見て、改めて思ったのであります。

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